2013年02月18日
泣かなかった母
父が亡くなってから、しばらくなる。
肝硬変から肝臓ガンになり、しばらく闘病生活を送っていたが、
看病の甲斐も無く、亡くなってしまった。
母が喪主を務め、最後のあいさつを私が泣きながらした。
普段だったら、からかってくる上司も、
何も言わず、黙って私の顔を見ていた。
葬儀が終わり、遺骨を持って家に帰った時、
「それにしても、よく泣いたね」
と、お茶を入れながら母は私に行った。
それは当然だろう、父親が死んだんだ。
「やっぱり、あんたにとっては父親だからね」
と呟いた。
祖母が亡くなった時、兄弟が亡くなった時、
確かに母は泣いていたが、
父が亡くなった時は、母は泣かなかった。
肉親が亡くなるのと、亭主が亡くなるのとは違うのだろう。
私は独り者なので、その感覚は分からない。
数十年もの間、他人と連れ添ったからこそ、
泣く事も無く、見送れたのかもしれない。
日曜の夜、久しぶりに母から電話があった。
「電話の一本もないから、また風邪でも引いたのかと思った」
と電話口から母の声が聞こえた。
「風邪は引いていないよ、元気だよ」と答えると、
「この前、救急車に乗ったよ、もう疲れた〜」
何事かと思い、聞いてみると、
町内で寄り合いがあって、年寄り連中が集まっていたら、
その中の一人が、突然気分が悪くなったみたいで倒れたらしい。
ちゃんと言葉も話せるし、脳梗塞ではないだろうと思ったらしいが、
誰かが救急車を呼んだらしく、
周りの目も、早く連れて行ってくれと、目で訴えていたとのことで、
仕方なく、母が付き添いで救急車に乗ったらしい。
そこでも色々あったみたいだが、
面倒くさいので、聞くのを止めた。
母に捧げるバラード