このツールは自由な言論を促し、民主主義が発展していくとの予測があった。
だが実際に起きた現象は全く違う。
極端な主張が増幅され、現実の世論を歪める空間が形成されている。
落とし穴を理解しないと、民主主義は退化しかねない。
ネット空間は、極端な意見を持つ人ほど発信し易い。
非対面のネットそのものが極端な人を生み出す側面もある。
主張は攻撃的になり、極端な声程拡散される。
例えば、ネット右翼と呼ばれる人たちは掲示板やブログ、交流サイト( SNS )などで保守的・国粋主義的な意見を発信する。
排外主義的態度で保守的志向が強く、政治の話題に積極的だ。
自分の考えに合わない意見に度を過ぎた批判や誹謗中傷をする例も少なくない。
逆のネット左翼も同様だ。
他方、中立的な意見を持つ人は、さほど強い「使命感」や「正義感」を持っていないので、敢えて発信する人は少数。
「非常に憲法改正に賛成」「絶対に憲法改正に反対」と言う人は社会には7% ずつ。
然し、この両極の人が SNS に書き込んだ回数は、夫々29% 、17% で計46% と半分近くを占めた。
この様に、両極の主張がネット空間では増幅され、それに影響される人が出てくると言うスパイラルに陥る。
偽・誤情報問題も深刻だ。
巧妙な偽情報は世界中で日々、頻発している。
要諦は、ネット空間の罠をしっかり理解する事だ。
その為には、批判的な思考や謙虚な気持ちが欠かせない。
国際大グローバル・コミュニケーション・センター准教授 山口 真一氏 1986年、東京都生まれ。
慶応大大学院修了。 博士(経済学)。 研究分野は社会情報学。
著書に「ソーシャルメディア解体全書」「正義を振り翳す『極端な人』の正体」など。
愛媛新聞 彷徨う民主主義から
寧ろ、騙されるかも知れないと意識しながら情報に接していく姿勢が求められるらしい。
ネット空間の功罪を教育課程に取り入れる事も急務らしい。