2019年05月14日
ビールは社会の潤滑油!飲酒がヒトに与える影響とは
お酒を飲む人が減っている。成人1人当たりの年間酒類消費量は平成3年の101.5Lから平成26年には80.3Lと、23年で20%の減少である。最近ではお酒を全く飲まない人も多く、食事会などでお酒を勧めると「アルハラ」などと呼ばれることもある。また、飲酒運転や飲酒によるさまざまなトラブルや暴力など、アルコールに対する悪いイメージも強いのではないだろうか。今回はそんなアルコールの良い面に関する記事を紹介しよう。
□スイスで行われたビールとノンアルコールビールの比較実験
スイスのバーゼル大学のリヒティ教授とその研究チームが、18〜50歳の健康な男女各30人を対象に、飲酒がヒトに与える影響に関する調査を行った。被験者のうち、半数の30人には約500mlのビールを、残りの半数には500mlのノンアルコールビールを飲んでもらった(スイスの法律では16歳以上であればビールを飲むことは許可されている)。
□ビールは笑顔を作り、社交性・性への開放性を高める
そして彼らの行動を観察するとともに、いくつかの実験を行い、以下のような発見をした。
一つ目は人々の表情。ビールを飲んだグループでは、ノンアルコールのグループよりも早く幸せな表情に変わることがわかった。
二つ目は社交性。アルコールを飲んだグループは、幸せな社会性を築いて、他人と一緒にいたいという気持ちになる傾向があった。
三つ目は性的な開放性。特に女性では性的な画像を見たいと思う欲求が顕著に増した。ただし、それが性的刺激を増加させる要因とはならなかった。
□アルコールそのものに社交性を高める作用?
アルコールがオープンな気分にさせるということは、新しい発見ではない。しかし、リヒティ教授のチームは、研究に参加した人たちのオキシトシンというホルモン濃度を測ってみた。このオキシトシンは、人々の社交性を高める働きがあるホルモンである。結果として、アルコール、ノンアルコール群で血中濃度の違いはなかった。この結果から、オキシトシンの分泌は関係なく、アルコールそれ自体が体の中で社交性を高めるような働きを持っていると推測される。
□ヨーロッパの権威は「アルコールは社会の潤滑油」と語る
欧州神経精神薬理学会(ECNP)のトップであるブリンク教授は、「この発見はアルコールが『社会の潤滑油』として働くことを示している。適量のアルコール摂取は人々を幸せにし、社会的な交流を活発にし、性への恐怖心をなくす作用がある」と語る。ただし、これらの作用は血中アルコール濃度によっても変わってくるので飲みすぎには注意が必要だと、彼は付け加えている(※2)。
お酒を飲むことはマイナス面ばかりではないということである。アルコールには社会性を高めて、コミュニケーションを助ける働きもある。「不寛容社会」などと言われる現代日本。他人のちょっとしたミスを許せず、1回の軽い失敗を強く非難するような風潮も強い。他人のことを理解せず、こうだと決めつけてしまうことが「不寛容社会」ができてしまう理由の一つである。
たまにはお酒の力を借りて周りの人とのコミュニケーションを深めてみるのもいいと思う。ヒトの立場や考え方の理解が深まれば少しは「寛容」になれるかもしれない。