2018年06月07日
アトピー性皮膚炎の新薬開発へ かゆみの根本的な治療に希望の光!
2017年3月2日(木)アトピー性皮膚炎の治療薬の開発を目指す京都大学などの国際研究グループが、治療薬の候補を開発し、研究、治験によってかゆみを抑える効果が確認できたことを発表し、早ければ、2年後の実用化を目指したいとしています。(参考)
アトピー性皮膚炎は根本的な治療法がありませんでしたが、今回の研究によってどのような展望が期待できるでしょうか。
今回は国際研究グループが行った研究から、アトピー性皮膚炎の概要、症状、治療や予防対策を医師に解説していただきました。
国際研究グループが行った研究
研究内容
開発したネモリズマブという抗体製剤をアトピー性皮膚炎患者264人に4週間ごとに皮下注射し、その投与量を変えたり、プラセボ(ネモリズマブを含まない偽薬)を注射した患者との比較を行いました。
研究結果
ネモリズマブ皮下注射を開始してから12週間後のかゆみスコアを検討すると、十分な量を投与したグループでは、かゆみの強さを示す指標がおよそ60%軽減され、重い副作用はなかったということです。
ネモリズマブは、ヒスタミンと同様にかゆみを引き起こす微量物質であるインターロイキン31が、かゆみ受容体に取り付くのを妨げ、かゆみを減らすことができるとのことです。
今後期待できること
アトピー性皮膚炎に対する新しい治療の一つとして、ネモリズマブが使用できる可能性があります。
アトピー性皮膚炎とは
アトピー素因を持つ患者で、主に小児期(通常2歳未満)に発症する、慢性でかゆみを伴う湿疹であるとされています。
アトピー性皮膚炎の原因・症状・なりやすい人の特徴
原因
多様な原因と増悪因子がありますが、3歳まででは食物アレルギー、それ以降ではダニなどの吸入性アレルギーが関連していることが多いとされています。
症状
かゆみを伴う慢性の湿疹が現れますが、皮膚病変の分布は以下のように年齢によって異なります。
■ 乳児期
頬や胴体手足の関節以外に多い
■ 小児期
・首
・耳の後ろ
・手足の関節の内側
■ 思春期から大人
・顔
・首
・上半身
・手足の関節の内側
なりやすい人の特徴
1歳までに発症することが多く、90%以上の患者が5歳までに発症すると言われています。
アトピー素因は、環境中の吸入性の抗原(花粉、ハウスダストなど)や食物アレルゲンに対してIgEという種類の抗体を作りやすい遺伝的傾向で、ぜんそくやアレルギー性鼻炎、結膜炎を合併しやすく、家族歴があることが多いです。
病院でのアトピー性皮膚炎の治療内容
代表的なものは薬物療法で、塗り薬を使って治療を行い、かゆみを抑えるために抗ヒスタミン薬やアレルギーに対する薬を使うこともあります。
ステロイド剤の注意点
皮膚の炎症を抑えるためステロイド剤もアトピー性皮膚炎に用いられるものですが、ステロイドは薬の種類によって強さのランクが異なります。
自分のアトピーの段階がわからない状態で使ってしまうと、かえって悪化を招く恐れがあるので、自己判断をせず、医師の判断を仰いで処方をしてもらってください。
アトピー性皮膚炎の遺伝
アトピー素因は遺伝する傾向があります。
両親がアトピー性皮膚炎の場合、子どもの80%がアトピー性皮膚炎を発症すると言われています。
アトピー性皮膚炎の予防対策
患部をかくことでますます悪化するため、かかないようにすることが重要ですが、特にお子さんではかゆいのにかかないことは難しいです。
今回の研究によりかゆみを抑えることができれば、アトピー性皮膚炎の悪化予防につながり、患者さんの生活の質の改善につながると考えられます。
また、できるだけアレルゲンとなる物質を除去する、以下のような努力や工夫をすることが予防、改善には大切です。
掃除・お手入れ
かゆみから強くかくことで皮膚のかけらが落ち、ダニのえさになりやすいですし、ほこりの中はダニが生息しやすい環境であることから、こまめに掃除をしましょう。
ほこりの溜まりやすいエアコンフィルター、家具の上、電気のかさ等の掃除、ぬいぐるみ類、布団類は天日干し、もしくは布団乾燥機をかけることも効果的です。
換気
部屋は湿度50%以下、室温20〜25℃が理想的です。
こまめな空気の入れ替えによるまめな換気、冬場は結露のふき取りを心がけることで維持しやすくなります。
アトピー性皮膚炎は人口の10%程度がかかっている病気で、多くの方が悩んでおられます。
今回の研究が早く生かされるよう願います。