2012年01月24日
霊使い達の宿題その3・火霊使いの場合(中編)(遊戯王OCG・二次創作作品)
火曜日。遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日です。
例によって、貴方の思う霊使い達とは性格が違かったりするかもしれませんから、どうしてもあかん、という方は無理をせずリターン推奨。
詳しく知りたい方はお約束通り、リンクのWikiへ。
それでは、昨日忘れた(汗)ので日曜のコメント返しを
よしっ!リメイクよしっ!
もう少しまってくださいませませ。
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―2―
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
黒い噴煙が立ち込めた空に、呻き苦しむ様な低い地響きが響き渡る。
暗い空の下で、大きく開いた火口から、真っ赤な血を流し続けるのは呻きの主、鮮血の巨峰、バーニング・ブラッド。
今、その麓でその呻き声とは別の音が、激しく響き渡っていた。
キィアアアアアッ
暗天の下、巨大な翼を広げ飛び回るのは、巨禽の如き姿をした銀色の竜。その竜、「ホルスの黒炎竜」は鋭い叫びを上げると共に、その名に相応しき黒炎の塊を、幾つも己の眼下に向かって吐き出した。
その先にいるのは、淡く光る羽衣をなびかせる朱髪の少女と、尾の先に真紅の火炎を滾らせる巨狼の如き炎狐。
ウォオオオオオンッ
炎狐―稲荷火が一声咆哮すると、その尾に燈る炎が大きく燃え上がり巨大な炎帯と化す。稲荷火はそれを振るい、天から降り落ちてくる黒い炎塊を尽く凪ぎ払った。
朱髪の少女―ヒータはその炎帯を盾にして黒炎の雨を凌ぎながら、素早く呪文を詠唱する。
「火蜥蜴の囁き 神竜の羽風 世に滾りし創生の炎よ 灼熱の御霊となりて敵を撃て!!」
言葉の結びと共に、ヒータの杖に緑色の魔方陣が浮かび、そこに火球が燈る。
「炎の飛礫(ファイヤー・ボール)!!」
通常魔法(ノーマル・スペル)(※1)、「炎の飛礫(ファイヤー・ボール)」。
叫びと共に杖から放たれた火球が、黒炎の隙間をくぐる様に黒炎竜に向かう。しかし黒炎竜はそれを、固い銀色の装甲に覆われた足で簡単に蹴り潰してしまった。
「アチッ!アチチッ!!」
舞い落ちてきた火の粉に肌を焦がし、慌てて自分の尾の影に隠れるヒータを庇いながら稲荷火が唸る。
『「竜足撃(スタンピング・クラッシュ)」(※2)ですか。伊達にホルス(神)の名は冠していませんな。』
「相手を褒めてんじゃねーよ!!」
怒鳴る主を横目で見ながら、稲荷火は冷ややかに言う。
『「竜足撃(あれ)は一度に一つの術(スペル)しか潰せませぬ。だから術の平行起動の鍛錬をしておくべきだと常々進言していた筈ですが。』
「だから、オレはウィンみてーに器用じゃねーの!!」
『言い訳ですな。』
喚く主(ヒータ)をあくまで冷静に諭しながら、振りそそぐ黒炎を払い続ける。
『それにしてもまずいですな。このままではジリ貧ですぞ。』
「わーってるって!!今どうすっか考えてんだ!!邪魔すんな!!」
『やれやれ。』
稲荷火は溜息をつきながら尾を振るう。帯状に伸びていた尾の火炎が、今度は槍状になって黒炎竜に向かう。
キィアッ
黒炎竜は嘲る様に鳴くと、鋭く旋回してそれをかわしながら黒炎を乱れ撃つ。
無数の火炎弾が周囲に着弾し、立て続けに爆発を起こす。
「っの野郎、調子ンのりやがって!!」
爆発をかいくぐりながら、ヒータが毒づく。
『完全に地の利が向うにありますな。いかがいたします?主。』
「・・・。」
相棒の言葉にしばらく無言で考え込んだ後、ヒータは囁く様な念話を稲荷火におくった。
「吉(きち)、しばらく時間稼ぎ、頼めるか?」
『・・・。』
その言葉だけで、稲荷火は全てを悟る。
『如何ほど?』
「3・・・5分だ。」
『御意。』
そう頷くと、稲荷火は尾の炎で地を叩いた。
バウンッ
叩きつけられた炎が地で爆ぜ、その勢いで稲荷火の身体が宙を舞う。
キィッ!?
不意の事態に驚く黒炎竜に、稲荷火は唸りをあげて踊りかかった。
―3―
キィアアアアッ!!
ゴァアアアアッ!!
灼熱の黒天の下で、竜と獣の叫びが交差する。
稲荷火の牙が黒炎竜の喉元を狙うが、銀の装甲に弾かれる。
代わりに鋭く閃いた黒炎竜の爪が、稲荷火の腹をかすめる。
亜麻色の毛が抉られ、火の粉の様にパッと舞う。
『・・・これはなかなか、難儀ですな。』
地へと落ちながらそう考え、それでも主の願いを叶うため、稲荷火は再度尾の炎で地を打って、宙の竜へと立ち向かった。
「すまねぇ。吉(きち)。」
そんな相棒の奮闘を見上げながら、ヒータは杖を地面に打ち立て、叫ぶ。
「来い!!ガイヤ・ソウル!!」
その呼びかけに応じる様に地面から蒸気が沸き立つと、その中から真っ赤な球体が現れた。
―「爆炎集合体ガイヤ・ソウル」―
ボコボコと沸騰する灼熱の体を持つそれは、グツグツと沸き立つ蒸気の隙間からその単眼で己の主をギョロリとねめつけた。
火山の熱に焼け付く周囲より尚熱いそれを眼前に配し、ヒータは手にした杖を構え直して目を閉じる。
肌を焼く様な熱感を受けながら、それでもその身は微塵たりとも揺るがない。
やがて、その口が高らかに呪文を詠唱する。
「テス・タル・ラー・テル・テスタロス!!来たれ炎精、焦熱の使徒!!来たれ火霊、灼熱の使徒!!我が沿うは神竜の御心、我が願うは炎帝の怒り!!回れ輪転、始原の理!!在りし御霊を朱に染め、其が鼓動を破壊と変えよ!!」
詠唱とともにヒータの足元に紅い光が走り、地面に複雑な文様を描き始める。描き出されるのは巨大な魔方陣。完成したそれは朱い燐光を散らしながら浮かび上がり、ヒータとガイヤ・ソウルをその内に納めた。と、同時にガイヤ・ソウルが真っ赤な光に包まれる。
そこでヒータは目を開き、宙で戦う相棒に向かって呼びかける。
「吉(きち)!!来い!!」
その声を聞いた稲荷火は踵を返し、主の元へと宙を走る。それに異常を察した黒炎竜は、大きく羽ばたくと、戦線離脱を試みる。
しかし―
「遅ぇよ!!」
ヒータはそう叫ぶと杖を大きく振りかぶり、野球のスイングの様に赤球と化したガイヤ・ソウルに叩きつける。
「火霊術!!『紅』!!」(※3)
瞬間、赤球は朱い閃光となり、逃げる竜を打ち抜く。
―黒い空に、高らかに爆音が響いた―
続く
(※1)通常魔法(ノーマル・スペル)は能動的に使える代わりに呪文の詠唱が必要。罠(トラップ・スペル)は脳内で構築式を組むだけで使えるが、相手の攻撃等のトリガーが必要という使用にしています。速攻魔法はまた後で。
(※2)え?使えるタイミングが違うって?細かい事気にすると禿げますよ。
(※3)本来は罠(トラップ・スペル)で呪文の詠唱はいらない筈ですが、独断と偏見に基づいて各霊術は別物にしています。(詳しくは来週)
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posted by 土斑猫(まだらねこ) at 18:37| 霊使い達の宿題シリーズ(霊使い・完結)