火曜日、「霊使い達の宿題《逃亡編》」始動です。え?何の事かって?決まってるじゃないですか。”あの娘”ですwww
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霊使い達の宿題・《逃走編》@
―1―
ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・
彼女は逃げていた。
必死に。
懸命に。
ただ地の果てを目指して。
ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・
呼吸が苦しい。
心臓が早鐘の様に鳴っている。
細い足の筋肉が、ギシギシと悲鳴を上げている。
しかし、ここで止まる事は出来ない。
それは全ての終りを意味する。
ああ、何故こんな事になっているのだろう?
走りながら思考を巡らす。
全ての原因は、あの氷の地での出来事。
あそこにおける、さもない誤算のせいだ。
自業自得?いや、自分に落ち度はなかった。
全ては、あの龍がいけないのだ。
自分に誘われて応じないなんて、朴念仁もいいとこだ。
大体にして、氷結界の連中も大概だ。
異星の蜥蜴連中だの異界の魔神連中だの、訳のわからない連中と揉めてる暇があったら、自分とこの飼い犬のしつけくらいしっかりしとくのが常識というものだろう。
おかげで、こっちはいい迷惑だ。
そもそもにして・・・
『エリア、何してんの!?早く足動かして!!』
「はひゅわぁっ!?」
相棒のギゴバイトの声に、物思いにふけっていたエリアは飛び上がる程に驚いた。
「な、何よ!?急に大きな声出さないで!!心臓飛び出るかと思ったじゃない!?」
『捕まったら、比喩どころかリアルで心臓えぐられるよ!?何考え込んでるのさ!?この非常時に!!」
ゼエゼエと息を切らしながら、それでも走るのを止めずにギゴバイトは怒鳴る。
「こんな事態に陥った理由を考えてたのよ!!いかにあの龍(トリシューラ)が朴念仁だったかとか、いかに氷結界の連中が唐変木だったかとか・・・。うん。やっぱりあたし、悪くない!!」
『責任転嫁なぞしとる場合かい!?ったく、本当に馬鹿なんだから!!』
息を切らしながら溜息をつくギゴバイト。なかなか器用である。
「な・・・馬鹿とは何よ!!大体あんた下僕でしょ!?だったら何か主人(あたし)が怒られずに済む様な方法考えなさいよ!!それとも何!?あんたあたしが先生にお仕置き食らってもいいっていうつもり!?」
息を切らしながら、息もつかずに怒鳴り散らすエリア。こっちも結構器用である。
『良くないからこうやって一緒に逃げてんだろ!?いいから黙って走れ!!」
「何よなになに!?言うに事欠いて命令形!?ムキーッ、いったいあたしを誰だと思ってんのよ!?その無礼、いつかきっかり報いらせてやるんだからね!!」
「そん時まで命があったらね!!」
息を切らしながら言い合う二人。結局どっちも器用な二人なのだった。
―2―
その頃、他の霊使い達が課題の評価を受けていた広場。
大方の評価は終わり、後は最後の一人、水霊使いのエリアを残すのみとなっていた。
「それでは、エリアさん、出てきて下さい。」
ドリアードが呼ぶ。
しかし、返事はない。
「?、エリアさん、どうしました?エリアさーん?」
やっぱり、返事はない。
他の霊使い達もざわめき始める。
「あれぇ?エーちゃん、どこ行ったんだろ。」
「さっきまでここにいただろ?」
「・・・確かに・・・」
「へんですねぇ?」
と、皆がざわつく中、アウスが「おや?」と言って地面にあった何かを拾い上げた。
それを見て、アウスはクスッと笑う。
「皆、これを見てご覧よ。」
言われた一同が、「え?なになに」と集まってくる。そしてー
「・・・あーあ・・・」
「・・・あいつ・・・」
「・・・道理で様子がおかしいと思ったら・・・」
「エリアちゃん・・・ごしゅうしょうさまです・・・。」
「本当に、期待を裏切らない人ばかりで、ボクは嬉しいよ。」
皆がそう言いながら見つめる中心、アウスの手の中には、一枚の紙きれ。
それには―
「探さないでください。byエリア」
―の文字。
そして、当の本人はどこにもいない。
「・・・逃げましたか・・・」
静かに響いたその声に、場にいる全員(一部除く)が震え上がる。
いつのまにか近くに来ていたドリアード。
す、と手を伸ばしてアウスの手から紙きれをとる。
そして、書かれた文字をチョンチョンと触ると小さく頷いた。
「このインクの乾き具合・・・。まだ遠くには行ってませんね・・・。」
そう言って上げた顔には、見た目にも穏やかな、しかしどこか無機質な笑顔。
ドリアードはその能面のような顔で皆を見回すと、厳かに口を開いた。
「皆さん・・・」
「は、はい(です)!!」×4
「どうやら、エリアさんは少し遅れている様ですね。皆さんで迎えに行ってあげてください・・・。」
顔はあくまで笑顔。しかしその背後からは"何か"が陽炎の様に立ち昇り、心なしかドドドドドドという擬音まで見える様な気がする。
「五体の無事は問いません。速やかに、エリアさんをここに連れてきてください。いいですね?」
あくまで崩れない、満面の笑顔。
それが、逆に怖い。
一同、ただブンブン頷くだけ。
「では、お願いします。」
「はい(です)!!」×4
そう答えて、シュバババッと散って行く霊使い達。
かくして、霊使い対霊使いの仁義なき闘いが幕を開けたのだった。
続く
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