火曜日、「霊使い達の宿題《採点編》」も折り返し地点です。
さぁ、今回の犠牲者は!?
・・・にしても、台詞がオールひらカタだと書き辛くてしょうがない・・・。
遊戯王カード 【 光霊使いライナ 】 TSHD-JP024-N 《ザ・シャイニング・ダークネス》 新品価格 |
―6―
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
沈黙である。
広場はこの日、二度目の沈黙に覆われていた。
沈黙の中心にいるのは、艶やかな銀髪の少女。光霊使いのライナである。
ドリアードと向かい合っている彼女の横には、朱色の身体に亜麻色のたてがみの竜、「エレメント・ドラゴン」が座している。
ちなみに、エレメント・ドラゴンのレベルは4。攻撃力は1500とされている。
内容だけで見れば、アウス同様問題はないはずであったが・・・。
「あのー、ライナさん・・・?」
ドリアードが困った様に訊ねる。
「なんですか?」
「何か、この方、ご機嫌が宜しくない様なんですが・・・。」
そう言ってドリアードは、エレメント・ドラゴンを見る。
もともと赤いエレメント・ドラゴンだが、その顔が心なしかより赤みがかっている。亜麻色のたてがみはザワザワとざわめき、憤る様に噴き出す鼻息には、チロチロと小さな火の粉が混じっている。
・・・どう贔屓目に見ても、心穏やかそうには見えない。
「 ・・・というか、貴女この方の事、召喚してないですよね?どう見ても携帯かけてあの方に連れてきていただいた様に見えたのですが・・・?」
言いながら上を見る。そこにはヒポポポ、などと電子音を響かせながら浮いているモイスチャー星人の姿。
「ああ、それはしかたないのです。ラヴくん。」
『あいよ。』
ライナが手を出すと、ハッピー・ラヴァーが預かっていたらしい携帯を渡す。
手の中の携帯をチャカチャカといじると、ライナはそのアドレス帳をドリアードに見せる。
「エドくんはけいたいもってないのです。だから、もっくんにでんわして、テレポーテーションでつれてきてもらったです。」
見れば、確かにモイスチャー星人の周りを光線銃やら箒やらと一緒に携帯電話(しかも最新機種)が舞っている。
「エドくん、ちょうどおひるねのさいちゅうだったみたいですね。それで、ちょっとごきげんななめなのです。」
「はぁ・・・確かに携帯を所持しているドラゴン族は稀有でしょうからねぇ・・・。」
携帯のアドレス帳を確認しながら、ドリアードは納得したように言う。
「でも、しもべにしたのでしょう?なら、ちゃんと召喚権限を行使して"召喚"したほうがいいんじゃないですか?通話料金も浮きますし。」
「ていがくサービスに入ってるからへいきなのです。それと・・・」
ライナはチッチッと指を振る。
「エドくんはしもべじゃありません。おともだちなのです。」
「お友達、とは?」
小首をかしげるドリアードに、ライナは胸を張って答える。
「おともだちはおともだちなのです。だいたい、いきなりしもべになってくれなんてしつれいなのです。ぶれいなのです。なにさまなのかというやつなのです。さいしょは、まずおともだちから。すべてはそれからはじまるのです。ぜったいのしゅじゅーかんけいも、あま〜いれんあいかんけいも、しゅくめいのライバルかんけいも、ちでちをあらうてきたいかんけいも、すべてはおともだちからはじまるのです!!」
言いながら、ズズィッと迫ってくるライナ。しかしドリアードは微塵も動じず、ただただ、困った様な顔で言う。
「困りましたね。いくらそう言われても、一応宿題は"しもべ"にしてくる事ですからねぇ・・・。友達では評価対象になりませんよ。」
「な、なんですとー!?」
ドリアードの言葉に、仰け反るライナ。
「するとせんせいは、おともだちをしもべのかいごかんといちづけるですか!?おともだちはガイアナイトさんやサイバー・ジムナティクスさんとおなじあつかいですかー!?」
「聞いた本人達が怒る様な言動は、控えてください。ヒータさんの時にも言いましたが、課題の本筋を外してしまっては、意味がないんですよ?」
その言葉に、ライナはますますいきり立つ。
「いくらせんせいでもききずてなりませんー!!ともだちはこのよにおけるしこうのそんざいがいねんなのですよー!!」
溜息をつくドリアードには委細構わず、ライナは目をグルグル回しながら、機銃掃射の様に喚きまくる。
「せかいはともだちからはじまったのです!!ともだちはせかいのこんげんなのです!!ことわりです!!このよのすべてのふこうはみんながともだちでないがゆえにしょうじるのです!!よのそんざいばんぶつすべてはともだちになることによってきゅうさいされるのです!!じんるいほかんけいかくもえんかんのことわりもばんぶつともだちかけいかくのまえにはエレキンギョのふんほどのかちもないのです。ともだちはきゅうきょくにしてしこうのたいげんなのですー!!」
「―地割れ(アース・クラック)。」
バカンッ
「ア〜レ〜!?」
唐突に開いた地面の亀裂に飲み込まれるライナ。
『ライナァアアアアッ!?』
ハッピー・ラヴァー、絶叫。
一同、唖然。
ドラゴンも唖然。
モイスチャー星人、反応不明。
「全く、話が進まないじゃないですか。」
平然とそう言いながら、ドリアードはライナを飲み込んだ亀裂をまたいでスタスタと歩いていく。
歩いていく先にいるのは、エレメント・ドラゴンである。
さっきまで不機嫌気に紅潮しているように見えたその顔色は、今は何故か紫色に染まっている。どうやら青ざめているらしい。
その後ろの方では、10歩ほど後ずさった一同が同じように顔を青ざめさせながらヒソヒソと言い合っている。
(・・・おい、地割れ(アース・クラック)無詠唱で発動したぞ・・・。)
(相変わらず、おっかねぇ・・・。)
(ライちゃん、死んじゃったかな・・・。)
(手加減されてるから、”多分”大丈夫だよ。地割れ(あれ)は本来相手を落とした後に、亀裂を閉じて押し潰す術だからね。)
ヒソヒソと囁き合う一同をよそに、ドリアードは笑顔でエレメント・ドラゴンに向かう。
『すいません。いくつかお聞きしたいのですが・・・?(竜語)』
『は、はひゅわいぃいい!!(竜語・以下略)』
あからさまにビビっているエレメント・ドラゴン。
・・・無理もないかもしれない。
『あなたがあの子と友達になったという経緯を、教えてくださいませんか?』
『は・・・はい・・・!!』
ビシッと姿勢を正してお座りをすると、エレメント・ドラゴンは事の次第を話し始めた。
そして、十数分後―
『なるほど・・・。あの娘はあの娘なりに、苦労はしたようですね。』
『は・・・はい、それはもうそれなりに・・・。』
コクコクと水飲み鳥の様にうなづくエレメント・ドラゴン。
『それで、貴方自身はどう思っているのですか?振り回されて、随分憤慨なさっていた様ですが?』
『そ・・・それは・・・』
答えに困る様に口ごもる、エレメント・ドラゴン。
その目を、何かを探る様に見つめるドリアード。
しばしの間。
やがてニッコリと微笑むと、エレメント・ドラゴンの頭に手を伸ばす。
一瞬すくみ上がるエレメント・ドラゴン。
しかし、伸ばされたドリアードの手は、その頭を優しく撫でていた。
『分かりました。今日はご苦労様でしたね。もう、御帰りいただいて結構ですよ。』
その言葉に、一瞬ポカンとするエレメント・ドラゴンだったが、やがて何かを察した様に頷くと、その翼を広げて飛び立った。去り際、ライナの落ちた地面の亀裂をチラリと見るが、ドリアードが大丈夫とでも言う様に頷くと、安心したように踵を返して大空の果てへと消えて行った。
その姿を見送ると、ドリアードは足元の亀裂を覗き込む。
その奥には、目を回して伸びているライナの姿。
「うにゃあ〜。エドくんはともだちなのです〜。」
うわ言でも、そんな事を言っている。
それを微笑みを浮かべながら見つめると、ドリアードは取り出した採点表にさらさらと数字を書き込む。
書き込まれた点数は、0.5点。
「・・・あなたとは、まだ色々と話し合わねばならないようですね。そりゃもう色々と。」
楽しそうにそう言いながら、ドリアードは上を見上げる。
そこには、フヨフヨと浮いているモイスチャー星人の姿。
『貴方も、大変でしょうけどこの娘の事、これからもよしなに頼みますね。(宇宙語)』
『君ノ宇宙語ハ、解カリ難イ。(宇宙語)』
照れたように明滅しながらそう言うモイスチャー星人を見て、ドリアードはただ楽しそうに微笑むばかりだった。
続く
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