アフィリエイト広告を利用しています

2012年07月10日

霊使い達の宿題《採点編》・B

 







 火曜日、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日。
 《採点編》に入っております。さて、今回は?



【遊戯王シングルカード】 《エキスパート・エディション4》 憑依装着−ヒータ ノーマル ee04-jp088

新品価格
¥1から
(2012/7/10 20:12時点)


                           −3−

 
 「・・・・・・。」
 「・・・・・・。」
 「・・・・・・。」
 「・・・・・・。」
 「・・・・・・。」
 「・・・・・・。」

 ・・・広場は沈黙に包まれていた。
 これ以上ないほどの沈黙であった。
 切ないほどの沈黙であった。
 「な、何だよ!?みんなして。何黙りこくってんだよ?」
 沈黙の中心に置かれた少女、火霊使いのヒータは訳もわからず、そう叫んだ。

 ウィンの後、ドリアードの指名を受けたのはヒータだった。
 彼女は待ってましたとばかり、数日前にしもべにしたばかりの"それ"を意気揚々と召喚したのであったが・・・。
 「あー、これって・・・」
 あ〜あ、という顔をするウィン。 
 「・・・やっちゃったな・・・」
 気の毒そうに言うダルク。
 「期待を裏切らないねぇ。ヒータ女史。」
 楽しそうに、クスクス笑うアウス。
 「あっちゃー、ですねぇ・・・。」
 駄目だこりゃー、と言った態のライナ。
 「な、何!?何だよ!!」
 皆の想定外の反応に、焦りまくるヒータ。
 彼女の隣りには、十数mに及ぶ長大な体を持ったモンスターが一体、鎌首をもたげていた。
 巨大な蛇を思わせるその身体の表面は、真っ赤に灼熱した岩の様な鱗に覆われ、獰猛そうなその顔からは、炎をまとった吐息が噴き出されている。
 その身体からはジリジリと焼け付く様な熱気が放たれ、地面に生える草を焼き焦がしていた。
 「・・・あまり自然環境には優しくないモンスターですねぇ・・・。」
 ドリアードはそう言って溜息をつく。
 その様子に、ヒータの焦りはますます深まる。
 「え、何?何なの?オレ、何かまずった?」
 オロオロするヒータの肩を、トントンと叩く者がいる。
 振り返ると、困った様な顔をしたウィンが立っていた。
 「な、何だよ?」
 「ヒーちゃん、この子、『プロミネンス・ドラゴン』・・・。」
 「お、おう!そうだぞ!!炎属性のドラゴンの・・・」
 「ヒーちゃん、違う・・・。」
 ウィンが、酷く言い辛そうに首を振る。
 「な、何が・・・?」
 「この子、"ドラゴン族"じゃない。」
 「・・・へ?」
 「この子、"炎族"・・・。」
 ヒータ、硬直。
 ドリアードがまた溜息をつく。
 「以前、生物分類学で教えましたよ?また、居眠りしてましたね?」
 「え、えぇー!?だ、だってプロミネンス・"ドラゴン"って・・・、ドラゴンって・・・ドラゴンだから、ドラゴンだろ!?」
 見てる方が気の毒になるほど、テンパるヒータ。アウスがクスクス笑いながら言う。
 「君は実に馬鹿だなぁ。その理屈じゃあ、キンメダイも鯛になるし、サンショウウオも魚になっちゃうだろ?」
 「え・・・違うのか?」
 ポカンとするヒータ。
 アウス、ただ苦笑。
 と、傍らで様子を見ていたきつね火がポンと前足を打った。
 『そうか・・・!!どうりであの時何か引っかかって・・・』
 「な・・・お前、知ってたのかよ!?」
 『いや、あの時はいっぱいいっぱいで頭回らなかった・・・。』
 食ってかかるヒータに、きつね火は慌てて弁解する。
 「てめぇ!!お陰であんな苦労したのに・・・!!」
 『な、何だよ!?大体主の方こそ、失念どころか知りもしなかったくせに!!』
 「何だとー!?」
 『何だよー!!』


 「お止めなさい!!」

 「『はひゅいひひぃいい!!』」
 今にも取っ組み合いになりそうな一人と一匹を、ドリアードの声が一括する。
 思わず竦み上がる一人と一匹。
 「これはヒータ(貴女)に出した課題です。責任転嫁するんじゃありません!!」
 「は・・・はい!!」
 ドリアードの叱責に、慌てて気をつけするヒータ。
 そんなヒータを前に、ドリアードは溜息をつく。三度目。
 「全く、しょうがないですね。とにかく、これでは採点対象にはならない訳ですが・・・」
 「え、ちょ、ちょっと待ってよ!?先生!!」
 その言葉に、ヒータは慌てる。
 「大変だったんだよ!!いや、ホントに!!死ぬ思いだったんだって!!」
 「それは、他の皆さんも同じ筈ですよ?」
 「・・・う・・・」
 それに関しては、ぐうの音も出ない。
 「条件は皆同じです。そこで選択の間違いを犯すのは、あなたの不知、不勉強が原因。違いますか?」
 「・・・はい・・・。」
 返す言葉もなく、しょんぼりするヒータ。
 つられて、プロミネンス・ドラゴンときつね火も申し訳なさそうに頭を垂れる。
 ・・・と、うつむいていたヒータの頭を、ふわりとした感触が包む。
 見れば、ヒータの頭をドリアードの手が優しく撫でていた。
 ドリアードは微笑みながら言う。
 「でも、これで一つ勉強になりましたね。間違いを経て得た知識は忘れないものです。今回の間違いをどうか次の機会に生かしてください。」
 「先生・・・。」
 「それと、私は何も貴女の頑張りを全部否定するつもりはありませんよ?」
 その言葉に、うつむいていたヒータが「えっ!?」と顔を上げる。
 「種族はともかく、その他の点においては文句はありません。その努力は認めます。」
 それを聞いたヒータの顔が、パッと明るくなる。
 「それじゃあ・・・」
 ドリアードは何やらサラサラと採点表に書き込むと、それをヒータに手渡した。
 ヒータはきつね火やプロミネンス・ドラゴンといっしょに、いそいそとそれを覗き込む。
 しかしー
 「さ・・・30点・・・?」
 ヘニョリと萎れこむヒータ。ついでに、プロミネンス・ドラゴンも脱力した様にヘタリと地面に伸びる。きつね火もガックリ。尻尾の炎も、弱火。
 「 課題の主眼を外している事に、違いはありませんからね。その30点が努力点です。」
 「そ、そんな〜。」
 「他の皆さんがちゃんとドラゴンを捕まえている以上、あなたにそれ以上の点数をあげる訳にはいきません。」
 「う〜・・・。」
 不満そうなヒータ。そんな彼女の頭を撫でながら、ドリアードはウフフ、と笑いかける。
 「そんな顔をしないでください。この次、もっと頑張りましょう。それと―」
 ヒータの頭を撫でる手に、力がこもる。
 ミシリという、不気味な音。
 「次は、ありませんよ・・・。
 そんな言葉と共に、笑顔のドリアードから立ち昇る"何か"。
 彼女の背後の風景が、陽炎の様に揺らぐ。
 それを見た皆が、一様に顔を青ざめさせて(一部のぞく)、一斉にざっと下がる。
 どっと瀧の様に汗を吹き出すヒータ。
 恐怖に全身の毛を逆立てるきつね火。
 プロミネンス・ドラゴンは、怯えて小さくとぐろを巻く。
 「分・か・り・ま・し・た・か・?
 「・・・・・・はひ・・・・・・。」
 油取りの蝦蟇よろしく、脂汗塗れで答えるしかないヒータ。
 「よろしい。」
 あくまで笑顔のまま、そう言うドリアードなのであった。


                                                         続く
プロフィール
土斑猫(まだらねこ)さんの画像
土斑猫(まだらねこ)
プロフィール
<< 2024年10月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
カテゴリーアーカイブ
狙いはハジメ 古より響く闇の嘶き(学校の怪談・完結(作・ナオシーさん)(11)
説明(2)
ペット(401)
雑談(254)
テーマ(8)
番外記事(105)
連絡(50)
水仙月(半分の月がのぼる空・完結)(9)
輪舞(半分の月がのぼる空・完結)(5)
不如帰(半分の月がのぼる空・完結)(2)
郭公(半分の月がのぼる空・完結)(3)
ハッピー・バースディ(半分の月がのぼる空・完結)(3)
ハッピー・クッキング(半分の月がのぼる空・完結)(3)
子守唄(半分の月がのぼる空・完結)(4)
蛍煌(半分の月がのぼる空・完結)(9)
真夏の夜の悪夢(半分の月がのぼる空・完結)(3)
想占(半分の月がのぼる空・完結)(13)
霊使い達の宿題シリーズ(霊使い・完結)(48)
皐月雨(半分の月がのぼる空・その他・連載中)(17)
霊使い達の黄昏(霊使い・完結)(41)
霊使い・外伝シリーズ(霊使い・連載中)(14)
十三月の翼(天使のしっぽ・完結)(60)
霊使い達の旅路(霊使い・連載中)(9)
十三月の翼・外伝(天使のしっぽ・完結)(10)
虫歯奇譚・歯痛殿下(学校の怪談・完結)(3)
十二の天使と十二の悪魔 (天使のしっぽ・連載中)(1)
死を招く遊戯・黄昏のカードマスター(学校の怪談・完結)(5)
絆を紡ぐ想い・澎侯の霊樹とマヨイガの森(学校の怪談・完結)(13)
無限憎歌(学校の怪談・完結)(12)
レオ受難!!・鎮守の社のおとろし(学校の怪談・完結)(11)
漫画(13)
想い歌(半分の月がのぼる空・完結)(20)
コメントレス(7)
電子書籍(2)
R-18ss(3)
トニカク……!(1)
残暑(半分の月がのぼる空・連載中)(5)
Skeb依頼品(3)
最新記事
最新コメント
検索
ファン
リンク集
EI_vI91XS2skldb1437988459_1437989639.png
バナーなぞ作ってみました。ご自由にお使いください。
月別アーカイブ