火曜日、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日。
《採点編》に入っております。さて、今回は?
【遊戯王シングルカード】 《エキスパート・エディション4》 憑依装着−ヒータ ノーマル ee04-jp088 新品価格 |
−3−
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
・・・広場は沈黙に包まれていた。
これ以上ないほどの沈黙であった。
切ないほどの沈黙であった。
「な、何だよ!?みんなして。何黙りこくってんだよ?」
沈黙の中心に置かれた少女、火霊使いのヒータは訳もわからず、そう叫んだ。
ウィンの後、ドリアードの指名を受けたのはヒータだった。
彼女は待ってましたとばかり、数日前にしもべにしたばかりの"それ"を意気揚々と召喚したのであったが・・・。
「あー、これって・・・」
あ〜あ、という顔をするウィン。
「・・・やっちゃったな・・・」
気の毒そうに言うダルク。
「期待を裏切らないねぇ。ヒータ女史。」
楽しそうに、クスクス笑うアウス。
「あっちゃー、ですねぇ・・・。」
駄目だこりゃー、と言った態のライナ。
「な、何!?何だよ!!」
皆の想定外の反応に、焦りまくるヒータ。
彼女の隣りには、十数mに及ぶ長大な体を持ったモンスターが一体、鎌首をもたげていた。
巨大な蛇を思わせるその身体の表面は、真っ赤に灼熱した岩の様な鱗に覆われ、獰猛そうなその顔からは、炎をまとった吐息が噴き出されている。
その身体からはジリジリと焼け付く様な熱気が放たれ、地面に生える草を焼き焦がしていた。
「・・・あまり自然環境には優しくないモンスターですねぇ・・・。」
ドリアードはそう言って溜息をつく。
その様子に、ヒータの焦りはますます深まる。
「え、何?何なの?オレ、何かまずった?」
オロオロするヒータの肩を、トントンと叩く者がいる。
振り返ると、困った様な顔をしたウィンが立っていた。
「な、何だよ?」
「ヒーちゃん、この子、『プロミネンス・ドラゴン』・・・。」
「お、おう!そうだぞ!!炎属性のドラゴンの・・・」
「ヒーちゃん、違う・・・。」
ウィンが、酷く言い辛そうに首を振る。
「な、何が・・・?」
「この子、"ドラゴン族"じゃない。」
「・・・へ?」
「この子、"炎族"・・・。」
ヒータ、硬直。
ドリアードがまた溜息をつく。
「以前、生物分類学で教えましたよ?また、居眠りしてましたね?」
「え、えぇー!?だ、だってプロミネンス・"ドラゴン"って・・・、ドラゴンって・・・ドラゴンだから、ドラゴンだろ!?」
見てる方が気の毒になるほど、テンパるヒータ。アウスがクスクス笑いながら言う。
「君は実に馬鹿だなぁ。その理屈じゃあ、キンメダイも鯛になるし、サンショウウオも魚になっちゃうだろ?」
「え・・・違うのか?」
ポカンとするヒータ。
アウス、ただ苦笑。
と、傍らで様子を見ていたきつね火がポンと前足を打った。
『そうか・・・!!どうりであの時何か引っかかって・・・』
「な・・・お前、知ってたのかよ!?」
『いや、あの時はいっぱいいっぱいで頭回らなかった・・・。』
食ってかかるヒータに、きつね火は慌てて弁解する。
「てめぇ!!お陰であんな苦労したのに・・・!!」
『な、何だよ!?大体主の方こそ、失念どころか知りもしなかったくせに!!』
「何だとー!?」
『何だよー!!』
「お止めなさい!!」
「『はひゅいひひぃいい!!』」
今にも取っ組み合いになりそうな一人と一匹を、ドリアードの声が一括する。
思わず竦み上がる一人と一匹。
「これはヒータ(貴女)に出した課題です。責任転嫁するんじゃありません!!」
「は・・・はい!!」
ドリアードの叱責に、慌てて気をつけするヒータ。
そんなヒータを前に、ドリアードは溜息をつく。三度目。
「全く、しょうがないですね。とにかく、これでは採点対象にはならない訳ですが・・・」
「え、ちょ、ちょっと待ってよ!?先生!!」
その言葉に、ヒータは慌てる。
「大変だったんだよ!!いや、ホントに!!死ぬ思いだったんだって!!」
「それは、他の皆さんも同じ筈ですよ?」
「・・・う・・・」
それに関しては、ぐうの音も出ない。
「条件は皆同じです。そこで選択の間違いを犯すのは、あなたの不知、不勉強が原因。違いますか?」
「・・・はい・・・。」
返す言葉もなく、しょんぼりするヒータ。
つられて、プロミネンス・ドラゴンときつね火も申し訳なさそうに頭を垂れる。
・・・と、うつむいていたヒータの頭を、ふわりとした感触が包む。
見れば、ヒータの頭をドリアードの手が優しく撫でていた。
ドリアードは微笑みながら言う。
「でも、これで一つ勉強になりましたね。間違いを経て得た知識は忘れないものです。今回の間違いをどうか次の機会に生かしてください。」
「先生・・・。」
「それと、私は何も貴女の頑張りを全部否定するつもりはありませんよ?」
その言葉に、うつむいていたヒータが「えっ!?」と顔を上げる。
「種族はともかく、その他の点においては文句はありません。その努力は認めます。」
それを聞いたヒータの顔が、パッと明るくなる。
「それじゃあ・・・」
ドリアードは何やらサラサラと採点表に書き込むと、それをヒータに手渡した。
ヒータはきつね火やプロミネンス・ドラゴンといっしょに、いそいそとそれを覗き込む。
しかしー
「さ・・・30点・・・?」
ヘニョリと萎れこむヒータ。ついでに、プロミネンス・ドラゴンも脱力した様にヘタリと地面に伸びる。きつね火もガックリ。尻尾の炎も、弱火。
「 課題の主眼を外している事に、違いはありませんからね。その30点が努力点です。」
「そ、そんな〜。」
「他の皆さんがちゃんとドラゴンを捕まえている以上、あなたにそれ以上の点数をあげる訳にはいきません。」
「う〜・・・。」
不満そうなヒータ。そんな彼女の頭を撫でながら、ドリアードはウフフ、と笑いかける。
「そんな顔をしないでください。この次、もっと頑張りましょう。それと―」
ヒータの頭を撫でる手に、力がこもる。
ミシリという、不気味な音。
「次は、ありませんよ・・・。」
そんな言葉と共に、笑顔のドリアードから立ち昇る"何か"。
彼女の背後の風景が、陽炎の様に揺らぐ。
それを見た皆が、一様に顔を青ざめさせて(一部のぞく)、一斉にざっと下がる。
どっと瀧の様に汗を吹き出すヒータ。
恐怖に全身の毛を逆立てるきつね火。
プロミネンス・ドラゴンは、怯えて小さくとぐろを巻く。
「分・か・り・ま・し・た・か・?」
「・・・・・・はひ・・・・・・。」
油取りの蝦蟇よろしく、脂汗塗れで答えるしかないヒータ。
「よろしい。」
あくまで笑顔のまま、そう言うドリアードなのであった。
続く
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