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2012年08月14日

霊使い達の宿題《逃亡編》A









 火曜日、前回より「霊使い達の宿題《逃亡編》」となっております。さあ、”あの娘”の運命やいかに!!


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                     前回までのあらすじ

 破壊龍・トリシューラを前に、宿題の遂行を断念せざるをえなかった水霊使い・エリア。
 お仕置きを逃れるため、逃走を図る彼女と使い魔のギゴバイト。
 しかし、馬鹿正直に置き手紙などしてきたため逃走計画はあえなく発覚。
 これに怒ったドリアードは、他の霊使い達を刺客として送り込むのだった・・・。


                          ―2―

 「はぁ・・・はぁ・・・こ、ここまでくれば・・・」
 息を切らしながらそう言うと、エリアは手近な木陰にへなへなと座り込んだ。
 『大丈夫?エリア。』
 主を気遣うギゴバイトが、担いで来た荷物の中からブルー・ポーションを引っ張り出してエリアに渡す。
 「あ、ありがと・・・」
 息も絶え絶えになりながら受け取ると、栓を抜くのももどかしくゴキュゴキュと一気に飲み干す。
 「ぷはーっ!!うめーっ!!」
 ドンッと地面に空になった瓶を置くエリア。
 『ちょっとエリア、はしたないよ。女の子が。』
 眉を潜めて注意するギゴバイト。
 「別に良いじゃない。アンタしかいないんだし。誰も見てないわよ。」
 『そういう問題じゃないでしょ。そんなんだから彼氏も出来ないんだよ!?』
 その言葉に、エリアの動きがピタリと止まる。
 「・・・彼氏なんていらないわよ。っていうか、もういるし。」
 『ええ!?初耳だよ!!い、一体何処の誰さ!?』
 ギゴバイトがそう言った途端、
 ヒュンッ
 バコッ
 『アベシッ!?』
 突然飛んできたブルー・ポーションの空瓶が、ギゴバイトの顔面を強打する。
 『な、何すんのさ!?急に!!』
 「・・・うっさい、馬鹿!!」
 抗議するギゴバイトに向かって、エリアは苛ついた調子で言い捨てる。
 『馬鹿ってなんだよ!?訳わかんないし!!」
 「うっさいったらうっさい!!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿っ!!朴念仁!!」
 機関銃の様にまくしたてるエリア。
 その頬が薄く染まっているのは、怒りのためかそれとも別の理由か。
 とかく、今も昔も複雑怪奇なのは乙女心なのであった。
 とにかく、何か言い返そうとギゴバイトが口を開いたその時ー
 「炎の飛礫(ファイヤー・ボール)!!」
 そんな声とともに、無数の火球がエリア達を襲う。
 チュドーン
 「ウッキャーッ!!」
 『ワキャーッ!!』
 派手な爆音とともに、盛大に吹っ飛ばされるエリアとギゴバイト。
 「アチ、アチチ!!な、何よ何何!?」
 『エリア、落ち着いて!!』
 エリアのローブの端についた火を、ギゴバイトがチャーッと水を吐いて消し止める。
 「誰よ!?こんな面白くもない冗談かますのはっ!?」
 その声に応える様に、飛火が上げる煙の向こうから現れる一人の少女。
 「見つけたぜ。エリア。」
 緋色の髪が、炎の起こす上昇気流に揺れる。
 「ヒ、ヒータ!!あんた、どういうつもり!?」
 「どうもこうもねえよ。先生がお前を連れて来いってさ!!」
 そう言いながら、ヒータは紅蓮の炎が灯る杖を構える。
 傍らには、燃えさかる尾を揺らす稲荷火の姿。
 すでに憑依装着済み。
 戦闘準備完了状態である。
 「そういう事だから、覚悟しな!!」
 いうや否や、ヒータは杖を振りかざして踊り掛かる。
 ガキィイイッ!!
 硬いもの同士がぶつかり合う、硬質な音が響き渡る。
 振り下ろされてきた杖を、エリアは間一髪、自分の杖で受け止めていた。
 ギリギリギリ・・・
 二人の力は拮抗し、鍔迫り合いになる。
 「いいから、観念しな。エリア。お上にもお慈悲はあるぜ・・・。」
 ギリギリギリ・・・
 「あ・・・あんた、あたしを売るつもり・・・?」
 ギリギリギリ・・・
 「心外だねぇ・・・。なるべく軽いお仕置きで済む様にしてやろうっていう友情じゃねぇか・・・。」
 「よっけいなお世話よ!!」
 ガッキィイイイイインッ
 甲高い音と共に、二人の身体が弾かれる。
 ズザザッと体制を立て直しながら、ヒータが呪文を唱える。
 「愚者の嘆き 炎帝の裁き 天下(てんげ)に律する不変の理 神が名下に紅蓮となりて  不従の罪に灼熱の報いを!!」
 呪文の詠唱に合わせる様に、ヒータの杖に灯る炎が渦を巻く。
 「火あぶりの刑(ジャッジメント・ブレイズ)!!」
 ヒータの杖からあふれた炎が、紅蓮の巨蛇となってエリアに襲いかかる。
 「きゃー!!アチッ、アチチチチッ!!」
 炎の巨蛇に舐められ、悲鳴をあげるエリア。
 「ちょっ、ヘルプヘルプ!!ギゴ、何とかしてー!!」
 『火力強くて僕じゃ無理!!イズミル呼んで!!』
 その言葉に、エリアは慌てて杖を地面に打ち立てる。
 「イズミル、来なさい!!」
 杖の先から水がしぶき、その中から水瓶を持った緑色の肌の女性が現れる。
 イズミルこと、「泉の妖精」である。
 「イズミル、早く早く!!」
 泉の妖精はコクリと頷くと、手にした水瓶を逆さに返す。
 途端ー
 ドバァアアアアッ
 大量の水が瓶から溢れ出し、炎の蛇を消し去った。
 「ちっ!!」
 舌打ちするヒータ。一方、エリアはゼエゼエと息を切らしながら怒鳴り立てる。
 「ちょっと、あんた、”ふり”じゃないでしょう!!本気で殺る気だったわね!?」
 「何言ってんだ。んなわけねーだろ?まぁ・・・」
 ヒータがニヤリと凶悪な笑みを浮かべる。
 「先生は五体の無事は問わねーとは言ってたけどな!!」
 「にゃ、にゃにおう!?」
 「良い機会だと思わねぇか!?全くよう!!」
 再び飛んでくる「炎の飛礫(ファイヤー・ボール)」。
 『エリア、危ない!!』
 ギゴバイトと泉の妖精が、それを慌てて消して回る。
 「あ、あんた、あたしに何か恨みでもある訳!?」
 「テメーの胸に訊いてみな!!」
 逃げ回りながらがなりたてるエリアに、ヒータもがなり返す。
 チョロチョロと逃げ回りながら、考えるエリア。
 やがて、ポンと手を打つ。
 「分かった!!あれね!?あんたがとってたマドルチェ堂のナチュル・パンプキン・パイ勝手に食べた事でしょう!?」
 「何・・・?」
 「意地汚いわね!!たかがお菓子の一つや二つでいつまでもネチネチと!!そんなに大事なら名前でも書いときなさいよ!!」
 吐き捨てる様に言い放つエリア。しかし、ヒータの様子がおかしい。
 「あれ・・・お前の仕業だったのか・・・」
 「へ・・・?」
 ポカンとするエリアの前で、ヒータは拳を握り締め、ブルブルと震え出す。
 「お前なぁ・・・ありゃあ、一日百個限定なのを、開店五時間前から並んでやっと買ったんだぞ・・・。それをよくも・・・」
 「あ、あれ?ひょっとして違った?じゃ、じゃああれかしら?あんたの秘蔵の香水を勝手に使った事?それとも、あんたが大事にしてたティーカップ落として割っちゃった事?あ、そうだ、あんたのよそ行きの服にご隠居の猛毒薬こぼしちゃった事とか・・・?」
 「・・・ああ、そうかい・・・。どれもこれも、全部お前の仕業だったって訳かい・・・!?」
 ヒータの髪がざわざわとざわめき、その身から比喩ではなくめらめらと炎が立ち昇る。
 「え、えぇー!?どれも違うの!?じゃあ他には・・・ああん、もう、色々ありすぎて分かんないじゃない!!馬鹿!!」
 「・・・コ・ロ・ス・!!」
 低くドスのこもった声で、ヒータが呟いた。
 途端ー
 ゴウッ
 ヒータの頭上に、炎の飛礫(ファイヤー・ボール)の何倍もある巨大な火球が現れた。
 それを見たエリア達は、一様に仰天する。
 『ちょ、あれって!?』
 「死恒星(デス・メテオ)じゃない!!それも詠唱破棄!?」
 ―通常魔法(ノーマル・スペル)、死恒星(デス・メテオ)―
 焦点温度が千度に達する火の玉をぶつける、単純だが強力な魔法。普通の人間が食らえば、まあ大抵は、死ぬ。
 「な、何よ!!ヒータ(あんた)、詠唱破棄みたいな器用な真似、苦手なんじゃなかったの!?」
 『火事場の馬鹿力ってやつじゃないのかなぁ・・・。』
 どこか遠い目で語るギゴバイト。
 「吉・・・ちょいとアイツ抑えてろ。確実に、当てる。」
 『ぎょ・・・御意・・・』
 どこか怯えた様な調子で、稲荷火がエリアに飛びかかってくる。
 『ちょ、まず・・・』
 慌てるギゴバイト。と、その手がグイッと引かれる。
 『へ・・・んぐっ!?』
 突然、口が塞がれた。
 瞬間、広がる眩い光。
 そしてー
 バキィッ
 『ぬぁっ!?』
 弾き飛ばされる稲荷火。
 「吉!?」
 驚くヒータの前で、光が弾ける。
 「憑依装着、完了!!」
 光の中から飛び出したのは、憑依装着モードになったエリアと、ランクアップし、「ガガギゴ」となったギゴバイト(ちょっと顔赤い)の姿だった。


                                                         続く
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