火曜日、「霊使い達の宿題」は「《逃亡編》」に突入しております。さあ、”あの娘”の運命やいかに!!
【遊戯王シングルカード】 《エキスパート・エディション4》 憑依装着−ヒータ ノーマル ee04-jp088 新品価格 |
前回までのあらすじ
宿題が完遂出来ず、お仕置きから逃れるため逃亡を計るエリアとギゴバイト。
そんな彼女達を捕えるため、ドリアードは他の霊使い達を刺客として送り込む!!
そしてついにその刺客の一人、火霊使いのヒータがエリア達を急襲する。
否応なく、仲間達との戦いに巻き込まれていくエリアとギゴバイト。
ヒータの隙をつき、何とか憑依装着をはたすものの、どさくさのやぶへびで、過去の悪事を吐露してしまった彼女の明日はどっちだ!?
―3―
「ギゴ!!炎狐(あいつ)抑えて!!」
『分かった!!』
そう言うと、ガガギゴは稲荷火の前に立ちふさがる。
『・・・因果な立場ですな。お互い。』
『・・・全くだ。』
ジリジリと対峙しながら、溜息を付き合う二人(?)。
一方、ヒータとエリアは―
「しゃらくせえ!!憑依装着したってデス・メテオ(こいつ)は防げねーぞ!!」
「そんな事、分かってるわよ!!憑依装着(これ)は・・・」
言うと同時に、エリアが杖を地面に突き立てる。
「これを使うためよ!!」(※1)
ガガガッ
突き立てられた杖が、弧を描く様に地面を削る。
途端―
ゴバァッ
杖が描いた軌跡から、大量の水が噴き出した。
「ぬなっ!?」
驚くヒータ。
「詠唱破棄出来る呪文くらい、あたしだって持ってんだからね!!」
噴き出した水は見る見る渦を巻き、大波となってヒータに襲いかかる。
「いっけぇー!!『大波小波(ツイン・ウェーブ)』!!」
「なっ、なななっ!?」
慌てるヒータを、大波が死恒星(デス・メテオ)ごと呑み込む。
ザザァアン・・・
一拍の後、大波は小波となって引いて行った。
後に残ったのは、全身びしょ濡れで倒れ伏すヒータの姿。
「こ・・・こんのやろー・・・」
杖を支えに、ヨロヨロと起き上がるヒータ。
「舐めんじゃねーぞ・・・!?こんくらいでオレは・・・」
「倒せるなんて思ってないわよ。」
「へ?」
ポカンとするヒータ。
「あたしの方見て、何か気づかない?」
言われて、ヒータはエリアをマジマジと見る。
「あれ・・・?」
言われてみれば、さっきまでエリアに付き従っていた筈の泉の妖精の姿がない。
何処にいったのだろう?
訳が分からないヒータの前で、エリアが胸を張る。
「通常魔法(ノーマル・スペル)、『大波小波(ツイン・ウェーブ)』。その効果は・・・」
ザワリ
急に、異様な悪寒がヒータを襲った。
「な、何だ!?って、う、うぇ!?」
ヒータが見たものは、自分の下半身を覆う半透明のゲル状の物質。
いや、グニグニウネウネネトネト動いてる所を見ると、どうやら生き物らしい。よく見れば、その表面に顔の様なものも確認出来る。
「リバちゃんこと、『リバイバルスライム(原作仕様)』」よ。どーお?可愛いでしょう?」
「こ、こんなもん、いつの間に・・・って、ひゃっ!?ちょ、おま、どこ触って、う、うひゃひゃ、ちょ、やめ・・・!?」
これが先程エリアが放った、「大波小波(ツイン・ウェーブ)」の効果である。「大波小波(ツイン・ウェーブ)」は、最初の大波で召喚されていた水属性モンスターの召喚をキャンセルし、入れ替わりに引いていく小波で別の水属性モンスターを再召喚していくのである。
「死恒星(デス・メテオ)の消火と、あんたの目くらましもかねてやったんだけど、ンフフ。上手くいっちゃったー♪」
嬉しそうにはしゃぐエリアを忌々しそうに歯噛みして見ると、ヒータは自分の下半身を覆って色々しているリバイバルスライム(原作仕様)を睨んだ。
「何でぇ!!こんなヤツ!!」
吐き捨てる言葉と一緒に、杖が一閃。
グチャアッ
その一撃で、リバイバルスライム(原作仕様)はバラバラに弾け飛ぶ。
「はぁ・・・はぁ・・・、どうだ!?ざまぁみろ!!」
(色々な意味で)紅潮した顔で、荒い息をつくヒータ。しかし、
「無駄よ!!」
ギュルルルッ
エリアの声と共に、飛び散ったリバイバルスライム(原作仕様)の破片が集まる。
「な、何だよ!?こいつ!!」
驚くヒータ。
バラバラになったはずのリバイバルスライム(原作仕様)が、元通りになって再びヒータに絡みついていた。
エリアがエヘンと胸を張る。
「どーお!?驚いたでしょう。リバちゃん(原作仕様)は破壊されても、すぐに元通り自己再生するのよん!!ちなみに、戦闘破壊でも効果破壊でもOKだから♪」(※2)
「な、何ぃ!?なんだそのインチキ能力・・・って、ひゃん!?ちょ、やめ、あひゃひゃ、へ、変なとこはいんじゃね・・・ひゃっ!?そ、そこ、だめだって、だ・・・らめぇ!!」
「じゃ、悪いけど、しばらくそいつと遊んでてねー。ギゴ、行くわよー。」
「お、おう!!」
タッタカターと走り出すエリアと、慌てて後を追うガガギゴ。
「あ、てめ・・・ちょ、ま・・・あ、あん!!うひ、うひゃひゃひゃっ!!待って、コイツなんとか・・・ひゃあ!!き、吉、何とかしてぇ!!」
「ぎ、御意!!」
エリア達の後を追おうとした稲荷火だが、主の悲鳴を聞いてそれを断念する。
慌ててとって返し、主に絡み付いているリバイバルスライム(原作仕様)を食いちぎるが、千切るそばから再生してしまう。
「じゃ、せいぜい愉しんでねー。バイビー!!」
そう言って、悠々と走り去るエリア達。
「て、てめー、まてってーっあひっ!!キャハハハハッ!!く、くすぐった・・・だ、だめ、そこはマジで駄目だって・・・やめ、やめて・・・ひぁあっ!!」
「ぬうう、こりゃあ手に終えませんぞ・・・。」
「エリアてめーっ、覚えてろー!?」
青い空の下、ヒータの悲鳴混じりの怒声と炎狐の溜息が虚しく響き渡った。
―4―
「だけど、参ったわねー。まさかヒータが追っ手になるなんて。ホントに友情も義理もあったもんじゃないわ・・・。世知辛いったらありゃしない。」
走りながら溜息をつくエリア。並走するギゴバイトも頷く。
『この調子だと、他の皆も敵に回ってると思った方がいいかも。もしアウスさんあたりが本気できたら、ちょっと厄介だよ?』
その言葉に、エリアはブルル、と身震いする。
「アウスの本気ー?不吉な想像させないでよ。考えるだけでゾクゾクする。先生のお仕置きと究極の選択だわ。それ。」
疲労とは、別の原因で流れる汗を拭うエリア。
『ボクも考えたくないけど、仮定は常に最悪を前提に構えておかないと。ダルク君じゃないけどさ。』
エリアと同じく、嫌な汗を拭いながら言うギゴバイト。
「じゃあどうしろってのよ?具体的に。」
『ええと・・・』
しばし頭を捻るギゴバイト。やがて、ポンと手を打つ。
『そうだ!!取り敢えず、あれを装備してりゃいいんじゃないかな?ほら、『明鏡止水の心(ハート・オブ・クリスタル)』。』
それを聞いたエリア、露骨に嫌そうな顔をする。
「ええ、嫌よ。あれ術式の構築大変なんだもん!!」
『そんな事言ってる場合じゃないでしょ!!ほら、ボクが見張ってるから、早くして!!』
「わ、分かったわよ。そう急かさないでよ!!」
ブツブツ言いながら地面に腰を下ろすと、杖を正眼に構える。
「―我が望むは彼の守り 古の水霊 不変の輝き 其が理 天より落ち来る水珠となりて 我にかりそめの久遠をもたらせ―」
言葉の紡ぎと共に、杖から一条の光が天に昇る。
天に描かれる、緑色の魔法陣。そして―
「『明鏡止水の心(ハート・オブ・クリスタル)!!』
言葉の結びと共に、天に描かれていた魔法陣がギュルルルッと収束する。収束した魔法陣は、一滴の雫となって天から落ちる。
ピチョーン
それが、下に座するエリアの上で弾けた瞬間―
ポウッ
エリアの身体が、青い光に包まれた。
「はぁ、これでいいんでしょ?」
大きく息をつくと、エリアはくたびれたと言わんばかりに背中から地面に寝転がる。
『まあ、これで当面は安心かな。』
ギゴバイトは腰に手を当てて、寝転がるエリアを見下ろす。
―装備魔法(クロス・スペル)・「明鏡止水の心(ハート・オブ・クリスタル)」―
装備した術者を、戦闘による死傷や術者自身を対象とする破壊魔法から守る効果を持つ魔法である。
その効果に見合い、術式の構築はなかなか難しい。
『ほら、エリア。いつまでも寝っ転がっていないで、早く逃げないと!!』
しかし、エリアはグダグダとくだを巻く。
「もう〜。だから急かさないでってば〜!!大丈夫よ〜。“明鏡止水の心(これ)”装備したんだから〜。」
エリアがそう言った途端―
「ところがギッチョン!!」
ゴオッ
「ワァッ!?」
「キャアッ!?」
突如、エリア達を襲う緑の旋風。
「な、何よ!?これぇ!!」
「コ、コレってまさか!?」
ヒュオオオオオ・・・
やがて風が収まると、
「え!?ちょ、何!?」
驚くエリア。
たった今まで身に纏っていた明鏡止水の心(ハート・オブ・クリスタル)の光が掻き消えていた。
『『破術の旋風(サイクロン)』!!って事はやっぱり!!』
旋風が襲ってきた方向を仰ぎ見るギゴバイト。
そこにいたのは―
緑色のポニーテールが、しなやかに風になびく。
「見つけたよ!!エーちゃん!!」
憑依装着したウィンが、ビシリと杖を突きつけてそう言った。
続く
(※1) 憑依装着すると術者としてのランクが上がるので、より高位の魔法も使える、という脳内設定。
(※2)原作遊戯王読んでた方ならご存じでしょう。戦闘破壊されようが効果破壊されようが、ノーリスクで即時再生する、鳳凰神様もロード殿もガエル君も真っ青の超絶インチキ効果でしたwww
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