火曜日、「霊使い達の宿題」は「《逃亡編》」に突入しております。今回はついに最後にして最凶の相手とのバトル!!さぁ、エリアの明日はどっちだ!!
遊戯王カード 【 憑依装着−アウス 】 EE4-JP086-N 《エキスパートエディションVol.4》 新品価格 |
前回までのあらすじ
宿題を完遂出来ず(ry
第3の刺客、ライナとダルクはてんやわんやの騒ぎのあげく、あっさりひっそり激流の露と散った。
その巻き添えを喰らい、やっぱり激流の露と散ったデミス!!
凄い鳴り物入りで登場したにも関わらず、たったの数行で退場となった彼と、同じ召喚条件なのにお呼びをかけてもらえなかったルインの心中やいかに!!
そして、ついに最後にして最悪の敵を迎える事となるエリアとギゴバイト!!
迫る決戦の時!!
その果てに、彼女達を待つものは果たして何か!?
今、君は時の涙を見る!!
―7―
ザッザッザッ
晴れた空の下、二つの足音が重く響いていた。
ザッザッザッ
足音の主は、憑依装着したエリアとガガギゴ。
二人は酷く緊張した面持ちで、注意深く辺りをうかがいながら、ゆっくり、しかししっかりと大地を踏み締めて歩いていた。
『足元、気をつけろよ。』
「うん。」
『『落とし穴(フォール・ホール)』とか、仕掛けてあるかも知れないからな。』
「分かってる。」
『いきなりかまして来るかもしれないからな。『地砕き(アース・クラッシュ)とか『地割れ(アース・クラック)とか。』』
「分かってるってば。」
ピリピリとした緊張感の中、ガガギゴの忠告に苛立たしげに応えるエリア。
かなり気が立っているらしい。
無理もないかもしれない。
霊使いはエリア自身を入れて6人。
これまで追ってきた面子は、ヒータ、ウィン、ライナ、ダルクの4人。
これにエリアを入れても、1人足りない。
そう。残りの1人。
“アウス”である。
6人の中で最も多くの知識を持ち、尚且つ知恵が回る。
手持ちの魔法も『地砕き(アース・クラッシュ)』や『地割れ(アース・クラック)、各落とし穴シリーズ等、強力なものが揃っている。
しかし、一番警戒すべきはその性格。
大胆にして狡猾、そして何より、“黒い”。
敵に回したが最後、その多彩極まる手札をいかに相手をおちょくり、陥れるかに集約して使ってくる。
過去に彼女に“玩具”にされ、再起不能(主に精神的な意味で)となってしまった者は数知れない。
エリアがその存在を、ドリアードと双璧と認する所以である。
そのアウスが、今確実に敵に回っている。
どんな罠が張り巡らされているか、分かったものではない。
緊張するなと言う方が、無理というものだ。
「・・・・・・。」
『・・・・・・。』
踏み出す、その一歩一歩が恐ろしい。
いつその足元が崩れ、奈落に呑み込まれるか分からないのだから。
「・・・・・・。」
『・・・・・・。』
「・・・・・・。」
『・・・・・・。』
息の詰まる様な時間が続く。
まるで、戦場の地雷地帯を歩いている様である。
「・・・・・・。」
『・・・・・・。』
「・・・・・・。」
『・・・・・・。』
そうやって歩く事、数時間。
ピタリ。
エリアの足が止まった。
『エリア?』
怪訝そうに声をかけるガガギゴ。
その声が聞こえているのかいないのか、エリアはうつむき、プルプルと震えている。
「ふ・・・ふふ、ふふふふふ・・・」
低く響き始める笑い声。
『エ、エリア?』
気味悪そうに問いかけるガガギゴ。
そして―
「やってられるかー!!」
ドカーン!!
はい。キレました。
キレますよね。
「アウス!!いるの!?聞いてるの!?」
周囲に向かって猛然と喚き始めるエリア。
唖然と立ち尽くす、ガガギゴ。
「いいえ!!あなたはいるわ!!“ここ”にいる!!絶対に!!そしてアタシ達の様を見てせせら笑っているのよ!!」
『エ、エリア、落ち着いて!?』
制止するガガギゴにも構わず、エリアは喚き続ける。
「もういい!!もうたくさんよ!!出てらっしゃい!!真正面から勝負してやるわ!!そしてアンタを殺してアタシも死ぬー!!」
『エリアー、何言ってんのー!?』
半狂乱で喚きまくるエリア。
何とか落ち着かせようとするガガギゴ。
―と、
「アハ、アハハ、アハハハハハハッ!!」
何処からともなく聞こえてくる笑い声。
見れば、いつからいたのか道端の木の枝に座ったアウスが、腹を抱えて笑っている。
「アハハ、あんまり笑わせないでおくれよ。エリア女史。」
眼鏡を外して眦の涙を拭きながら、アウスはそんな事を言う。
『ホントにいたし・・・』
呆れた様に呟くガガギゴ。
「出たわね、この眼鏡小悪魔!!降りてらっしゃい!!正々堂々勝負よ!!」
「そういきり立たないで。言われなくても、今降りるよ。」
そう言いながら、アウスは座っていた木の枝から飛び降りる。
そのアウスに向かって、エリアはブンブンと杖を振り回す。
「さあ、来なさい!!後はアンタさえ倒せば、アタシ達は逃げ切れるのよ!!いいえ、逃げ切ってみせる!!」
しかし、そんな叫びをアウスは笑って聞き流す。
「アハハ、嫌だなあ、エリア女史。友である君との争いなんか、ボクが望む筈ないじゃないか?」
「・・・へ?」
その言葉に、一瞬ポカンとするエリア。しかし、すぐにブンブンと首を振る。
「い、いいや!!騙されない!!騙されないわよ!!この世に信じられる事なんてありはしないのよ!!アンタだって、そんな事言っといて後ろ向いたらガブッと・・・」
「しないって・・・。いやはや、随分と酷い目にあったらしいね。」
『ええ・・・まぁ、それ相応に・・・』
アウスに言われ、応えるガガギゴ。その目には、諦観の色が濃く浮かんでいる。
「でもねぇ、ボクが何もしないってのはホントだよ。その証拠に、ほら。」
そして、アウスは持っていた杖をポトンと地面に落とした。
「え?」
『ありゃ?』
呆気にとられるエリアとギゴバイトの前で、アウスは落とした杖をエリア達に向かって蹴ってよこす。 こちらに向かって、転がってくる杖。
「さ、これでボクは丸腰だ。」
言いながら、両手を広げてみせるアウス。
「憑依装着もしてないし、術も使えない。さて、信用してくれるかな?」
「そ・・・そうね。それなら・・・」
そう言って、エリアは構えていた杖を下ろす・・・と思いきや、
「なーんて言う訳、ないでしょが!!」
そんな叫びとともに、杖を振りかざしてアウスに踊りかかる。
「アンタの言う事信じるくらいなら、スカゴブリンの言う事信じる方がまだましよ!!」
その勢いのまま、アウスの脳天に振り下ろされる杖。
しかし―
パキィイイイイイイン
杖が叩きつけられたのは、アウスの脳天ではなく、角と蝙蝠の羽を持ったモルモットの様なモンスター。
アウスの使い魔の、デヴィことデーモン・ビーバーである。
「んなっ!!使い魔を身代わりにするなんて・・・!?」
思わず嫌悪の表情を浮かべるエリア。しかし―
「そうでもないよ。」
アウスがニコリと“例”の笑みを浮かべる。
そう。振り下ろされた杖は、デーモン・ビーバーの身すれすれで止まっていた。
そして、その間にあるのは―
「ト、罠魔法(トラップスペル)!!いつの間に!?」
自分の目の前に展開する朱い魔法陣に、驚愕するエリア。
一方、アウスはニコニコと笑みを浮かべながら語る。
「なるほど。正しく、ボクは隠し事をしていたよ。一つはボクが杖なしでも使える魔法を持ってるってこと。そして・・・」
魔法陣の向こうで、デーモン・ビーバーが申し訳なさそうに頭をかく。
『すんませんなぁ・・・。これも渡世の義理。堪忍したってや・・・。』
「“この術”、実はボクも使えるんだよ。」
瞬間、デーモン・ビーバーの身体が光に包まれたかと思うと、
バヒュン!!
その姿がエリアの目の前から消える。
「えっ!?こ、これって・・・!!」
その言葉が終わらぬうちに、入れ替わる様に落ちてきた光が弾けた。
ドーンッ!!
「ウッキャー!!」
巻き起こる爆風に転がるエリア。
コロコロ転がってきた“それ”を受け止めながら、ガガギゴが叫ぶ。
『『位相転移(シフトチェンジ)』!!で、でもこの術は・・・』
「何も、ウィン女史の専売特許って訳じゃないだろう?」
クスクス笑いながら、アウスが言う。眼鏡に光が反射して、その表情がよく見えないのが不気味さを誘う。
「い、一体何を呼んだの・・・!?」
頭に出来たコブを押さえながら、エリアが光の中に目を凝らす。
光の中に見えたのは、一つの人影。
「―――っ!!?」
『―――っ!!?』
そのシルエットを見とめたエリアとガガギゴの顔から、一気に血の気が引いていく。
ジャリッ
光の中から踏み出した足が、地面を踏み締める。
「言ったろ。“ボク”は何もしないって。するのは・・・」
アウスが笑う。酷く、楽しそうに。
「『あ・・・あわ、あわわわわ・・・』」
お互いに腰を抜かし、抱き締めあって震えるエリアとガガギゴ。
そんなエリア達を見下ろしながら、“彼女”は微笑む。酷く、朗らかに。
「万事、上手くいったようですね。ご苦労様です。アウスさん。」
「はい。“先生”。」
震えるエリアの頭を、白い指がクシャリと撫でる。
「もう、駄目じゃないですか。集合時間に遅れちゃあ・・・。」
光を後光の様に背に負いながら、精霊術師・ドリアードは優しく言った。
「知りませんでしたか?精霊術師からは逃げられない・・・。」
そして―
「――――っ!!!」
『――――っ!!!』
辺りに響き渡る、声にならない悲鳴。
「いやぁ、ホントに期待を裏切らないなぁ。皆♪」
目の前で繰り広げられる惨劇を楽しそうに眺めながら、アウスは満足気にそう言うのだった。
終り
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