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2012年08月01日

無限憎歌(5)(アニメ学校の怪談・二次創作作品)







 水曜日、隔週連載学校の怪談SSの日です。
 今回の話は、時系列上は前作の後の話になります。
 学怪の事を知ってる前提で書いている仕様上、知らない方には分かりにくい事多々だと思いますの、そこの所でご承知ください。
 よく知りたいと思う方は例の如くリンクの方へ。


 それではコメントレス

 『召喚すると通話料金が浮くのか、覚えておこう(宇宙語)』

 『そう。覚えておいて損はない。(宇宙語)』

 『そういえば忍た○ま乱太郎で視力検査みたいなテストの点数っていうネタがあったなあ(日本語)』

 『忍〇ま見てないから元ネタがわからねぇ!!「視力検査みたいなテストの点数」って何だ!!
気になるじゃないの教えてプリーズ!!(日本語)』



壁紙提供=M/Y/D/S 壁紙館。転載不可。

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                  ―それぞれの戦いA―

 『悲シム 事ハナイ ヨ・・・。オ前 モ、 コノ 国ノ人間 ドモモ、スグ 二同ジ 様二ナル ノダ カラ・・・。』
 暗い校舎に響く、軋む様な声。それが奏でる、不吉な言葉。魔獣の殺意はこの町のみならず、この国の人々全てに向けられていた。それはあまりにも理不尽な狂気。
 その言葉に、さつきの心に炎が灯る。
 「・・・なんで・・・?」
 口が怒りに震えながら言葉を紡ぐ。
 「なんでこんな事するの!?わたし達が一体何をしたっていうの!!?」
 さつきの血を吐く様な叫びが、暗い廊下に響く。
 「許さない・・・絶対に許さない!!あんたになんか・・・あんたになんか、絶対に負けない!!餌になんか、なってたまるもんか!!」
 燃える様な目で、魔獣を見据える。
 『・・・何 モ・・シテ イナ イ・・・?』 
 その叫びに、魔獣の眼光が揺らぐ。
 『ソウ・・・何モ シテイナ イ・・・。私 達モ ソウ ダッタ・・・。』
 「・・・・・・?」
 それまでとどこかが違う、呟くような声。先ほどまでの禍々しさが消え、代りに悲し
げな響きが伴う。
 その変化に、さつきも戸惑いを覚える。   
 『何モ シナ カッタ・・・タ ダ、アノ森 デ・・野デ・・皆ト 一緒二 暮ラシテイタ ダケ・・・。』
 『静カ 二・・・タダ 静カニ暮ラシテ イタダケ・・・。』 
 悲しい、どこまでも悲しい声。
 『ナノ ニ・・・ソレナノニ!!』
 キシャアァァアアッ―――――――――――!!!!
 突然、魔獣が吼えた。
 その咆哮は大気を震わし、校舎全体を鳴動させる。
 「ひっ!?」
 その凄まじさに、さつきは思わずすくみ上がる。  
 耳を覆いたくなる様な、凄惨な叫び。
 悲しみ、怒り、絶望、憎悪、狂気、殺意、怨嗟・・・。
 ありとあらゆる負の感情が、血を吐く絶叫となってさつきの精神を責め苛む。
 「う・・あぁ・・・」
 今にも弾け飛びそうな己の正気を繋ぎ止めようと、さつきは腕の中のハジメをさらに強く抱き締める。
 その確かな温もりに必死にすがりながら、さつきは霞む視界を凝らす。
 ―と、
 「!?」
 その目が、驚きに見開かれる。
 ―周囲の光景が、変わっていた。

 
 「じゃあ、今回の騒ぎはこの刀のせいだって言うんですか!?」
 天邪鬼の話を聞いたレオが驚きの声を上げる。
 「そうじゃねぇ、張本人はこのボロ刀の中に霊眠させられてた奴だ。見な、刀身の切っ先が折れてやがる。このせいで霊眠がとけやがったんだ・・・。」
 天邪鬼の言葉に、桃子がはっとする。
 「!!じゃあ、この刀を使えば、そのお化けをもう一度霊眠させることが出来るのでは!?」
 その言葉にレオががぜん色めき立つ。
 「そ、そうか!!そうですよ!!なんてたって伝説の霊刀、「膝切丸」!!妖怪の一匹や二匹・・・」
 「駄目だな。」
 しかし、天邪鬼はあっさりと否定する。
 「霊刀だかなんだか知らねぇが、今のこいつからは何の力も感じねぇ・・・。長い間あの馬鹿でかい妖気を封じてる間に、力をあらかた使い切っちまったんだろうよ。昔はともかく、今はただのガラクタだ・・・。」
 「そ、そんなぁ・・・。」
 レオががっくりと肩を落とす。
 その時ー
 キシャアァァアアッ―――――――――――!!!!
 凄まじい咆哮が校舎から放たれ、夜の大気を震わせた。
 「きゃあっ!?」
 「うわぁっ!?」
 「わぁっ!?」
 その凄まじさにレオ達は思わず耳を押さえる。 
 天邪鬼が舌打ちをし、校舎を睨み付ける。
 「くそっ!!妖気が一段と強くなりやがった!!この調子じゃあ、完全に覚醒して外に出てくるのも時間の問題だぞ!!」
 「そ、そうなったら一体、どうなるんですか!?」
 天邪鬼の言葉に、レオが慌てて問いかける。
 「こいつを動かしてやがるのは、異常な憎念と殺意だけだ・・・。もし学校の外に出てくれば・・・この町の人間一人残さず、皆殺しだ・・・!!」
 その言葉に、レオの顔が引きつる。
 「そんな・・・!!」
 敬一郎が目に涙を浮かべ、天邪鬼を見つめる。
 「みんな・・・死んじゃうの・・・?ぼくも・・パパも・・お姉ちゃんも・・・?」
 「・・・。」
 天邪鬼は答えない。  
 絶望の空気が、皆の間に流れ始めたその時ー
 『・・・連れて・・いって・・・。』
 その沈黙を切り裂く、幽かな声。
 「「「「!?」」」」
 皆の目がその声の主へと集まる。
 そこにあったのは、地面に力なく横たわる朽刀。膝切丸の姿だった。
 「・・・聞こえましたか・・・?」
 「・・・・・・。」
 レオの言葉に、皆が頷く。
 「連れていってって・・・言ったよ・・・。」
 「校舎の中に・・いえ、校舎の中に居るお化けの元へ連れていけ・・・という事でしょうね・・・。」
 「「「・・・・・・。」」」
 三人はしばしの間、無言で目の前に横たわる膝切丸を見つめる。
 やがて、何かを決意したかの様に頷き合うと、敬一郎が膝切丸をその手に取る。
 「・・・おい、お前等・・何を考えてやがる・・・?」
 三人の動向を、傍らでじっと見つめていた天邪鬼が、険しい顔で問い掛ける。
 「この刀を・・・校舎の中へ・・・行きたがっている場所へ連れて行きます。」
 桃子の言葉に、天邪鬼が柄にもなく、いきり立つ。
 「馬鹿か、てめぇらは!!?その刀にはもう何の力もねぇっつってんだろうがっ!!!」
 「・・・でも、この刀は今、確かに私達に語りかけました。」
 「む・・・。」
 桃子の指摘に、天邪鬼は思わず声を詰まらせる。
 苦々しげな表情で歯をきしませる天邪鬼を、なぜか桃子は嬉しげな表情で見下ろすと、ゆっくりとした、それでいて強い意思を感じさせる口調で話し出す。
 「・・・ほんの少し・・・。ほんの少しの可能性で良いんです。例えそれが一%でも、それを信じれば、そこに道は開けるかもしれません・・・。」
 「一%の可能性だと?。世の中、そんなにうまく事が運ぶとでも思ってやがるのか・・・?そんなもの、残り99%の現実に潰されるのが関の山だ・・・。」
 「構いません・・・。」
 迷いのないレオの声が、天邪鬼の言葉を遮る。
 「どうせこのままじゃ、みんな死んでしまうんでしょう?それなら、ぼくはその可能性にかけてみます。たとえそれで失敗したって、ここで何もしないよりはずっとましです!!」
 その言葉に敬一郎も大きくうなずく。
 「学校の中で、お姉ちゃんとハジメ兄ちゃんががんばってるんだもん。ぼくだって、がんばるよ!!」
 「・・・これだから人間て奴は・・・」
 苦虫を噛み潰した様な、天邪鬼の顔。
 桃子はそんな皆を、優しい瞳で見つめていた。
 「・・・くそっ!!もう面倒見きれるか!!さっさと行っちまえ!!!そして化け物に食われちまえ!!!」
 とうとう天邪鬼は激昂し、そっぽを向いてしまう。その憤りを表すかの様に、ビッと立った尻尾が、苦しげに震えていた。
 それを見た桃子が、嬉しそうに語りかける。
 「ありがとう、天邪鬼さん・・・。私達の事、心配してくださるんですね・・・。」
 「・・・ちっ・・・!!」
 そっぽを向いたままの天邪鬼に優しい微笑みを投げかけると、桃子は今だ暗闇と妖気に包まれる校舎に向き直る。その表情が、頑な決意のそれへと変わる。
 「・・・行きましょう・・・。」
 桃子のその言葉に、レオと敬一郎も無言で頷くと、足を踏み出した。
 そして、皆が校門を潜ろうとしたその時ー
 バチィッッ
 「きゃっ!」
 「うわぁっ!!」
 凄まじい衝撃が三人を弾き飛ばした。
 「こ・・これは!?」
 三人を弾き飛ばしたもの・・・。それは校舎と外界をさえぎる様に張り巡らされた、無数の蜘蛛の糸だった。
 「結界・・・?いつの間に・・・。」
 桃子が呆然とつぶやく。
 「これじゃ・・・通れません・・・!!」
 「いったい、どうすれば・・・!!」 
 手が見つからないまま、時間だけが過ぎてゆく。
 「お姉ちゃん・・・。」
 たまらず、敬一郎が泣き出そうとしたその時、
 「・・・ったく、えらそうな事ぬかしてた割にゃ、どいつもこいつもふがいねぇ・・・。」
 いつの間にか、天邪鬼が結界の前に立っていた。そして、真剣な表情で桃子を見つめる。
 「?・・天邪鬼さん・・・?」
 「へ・・・おめぇの勝ちだ・・・。どうやらあの野郎、確かにそのボロ刀を嫌がってるようだぜ・・・。」 
 そう言って、さらに一歩踏み出す。
 「・・・?」
 「いいか・・・?この俺がここまでやってやるんだ。絶対、失敗なんざするんじゃねぇぞ・・・!!」
 そう言うと、突然大きく口を開け、そのまま結界を構成する蜘蛛糸の一本へと噛り付いた。
 バチッバチバチバチッバチバチバチバチバチッッ
 凄まじい衝撃が天邪鬼の体を貫き、小さな体ががくがくと痙攣する。
 「!!!天邪鬼っ!?」
 「天邪鬼さんっ!?」
 「カーヤァッ!!!??」
 「うるせえっ!!黙って見てろっ!!!」 
 驚き、止めようとする皆を制し、なおも強く、糸に牙を立てる。
 ヒゲが焦げ、黒い体毛が弾け散る。口からは血が流れ出すが気にもとめず、ただひたすらに牙に力をこめ、まるで目の前にそれがいるかの様に低い声で呟く。
 「・・・どんな事情があって、どんだけの力があるか知らねぇがな・・・こいつらは俺の獲物なんだよ・・・。そいつに手ぇだすなんざ・・・」
 ビシッ
 小さく響く亀裂音。
 そしてー 
 「五千年早いんだよっ!!」
 バキィィィンッッ
 激しい破壊音を立てて、天邪鬼の牙がその蜘蛛糸を噛み砕いた。
 その瞬間―
 ピシィッ
 ガラスがひび割れる様な音と共に、結界を構成していた空間に細い亀裂が入る。
 「ぐ・・・!!」
 思わず崩れ落ちそうになる四肢に無理に力を込め、天邪鬼は次の糸に噛り付く。
 衝撃。
 苦悶。
 出血。
 そして破砕。
 それを繰り返しながら、天邪鬼は結界の亀裂を広げてゆく。
 その度に天邪鬼の身体は結界の反力に苛まれ、ズタズタになってゆく。
 自慢の夜色の毛皮は全身から滲む血でぐっしょりと濡れそぼり、染み込みきれずに滴った血が、その足元に大きな血溜まりを作っていた。
 それでも、天邪鬼の動きは止まらない。ふらつく身体を気力で支え、己の命を削る様に、魔性の結界に挑みかかる。
 「止めてよ・・・もう止めてよぉ・・・!!!」
 耐え兼ねた敬一郎が、泣きながら天邪鬼の身体を結界から引き離そうと手を伸ばす。
 しかし、その動きが不意に止まる。
 敬一郎が振り向くと、桃子が手を伸ばし、敬一郎の肩を掴んでいた。
 「放してよ!!桃姉ちゃん!!このままじゃカーヤが・・・」
 しかし、敬一郎の抗議の声はそこで途切れた。
 桃子の目は敬一郎ではなく、目の前で必死に結界に立ち向かう天邪鬼に向けられていた。
 顔は青ざめ、涙を流し、血が滲む程に唇を噛み締めながら。それでもその目は反らされることなく、 天邪鬼を見つめ続ける。
 見れば、傍らのレオも桃子と同じ顔をしていた。
 皆、分かっていた。今はもう天邪鬼に託すしかないことを。たった一%の可能性。この町を、大切な人達を守るための可能性。今ここで自分達が阻まれてしまえば、そのたった一%さえもが潰えてしまうことを。そして、自分達に眼前の結界に攻する術がない以上、今は全てを天邪鬼に託すしかないことを。だから、彼らは見つめ続けている。ただ、天邪鬼を信じて。
 だから、敬一郎は伸ばしかけた手をもとに収めた。涙を拭い、歯を食いしばり、皆と同じ様に天邪鬼を見つめる。
 ―でも、せめて―
 「がんばれ・・・」
 敬一郎の口が動く。
 初めは小さく、そして次は大きく。
 「がんばれ!!カーヤ!!!」
 ―その瞬間、ボロキレの様になった天邪鬼の身体に、確かに力がみなぎった―


                                                         続く
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