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2012年10月24日

無限憎歌(11)(アニメ学校の怪談・二次創作作品)







 水曜日、隔週連載学校の怪談SSの日です。
 今回の話は、時系列上は前作の後の話になります。
 学怪の事を知ってる前提で書いている仕様上、知らない方には分かりにくい事多々だと思いますので、そこの所ご承知ください。
 よく知りたいと思う方は例の如くリンクの方へ。


 それではコメントレス

 怨霊の湿地帯:里の人も滅多な事では近づかない危険な場所。でもカムイ君は行きます。カムイ君だから仕方ない。カムイ君ほどの実力があれば何の心配もいりませんよっ!!

 マジレスしますと、そん時カムイ君は「ダイガスタ・ファルコス」の練習中で、空飛んでました。
練習で四苦八苦してる時に、件の娘が術を使っているのを見かけた訳です。
 森の梢ギリギリの低空でしたが、とりあえず空中だったので、泥濘も暗がりも、沼地の魔獣王も関係なかった訳です。まあ、次回で描写するつもりでしたが・・・。あ、後付けって訳じゃないんだからね!!


 死霊の湿地帯:カムイくんの言い間違いです。決してカムイ君が別の場所に行っていたわけでは
ない(と思う)。


 はい。素で間違えました。・・・すんません・・・。直しときました。ご指摘サンクス。

 いや、そんなことよりも今回の話で一番重要なのは、「今はそんな事言ってる場合じゃ」ない、て事だ。

 うん。実際、内輪もめなんてしてる場合じゃないです(笑)でも、霊使い(こっち)のガスタさん達は、設定上リチュアの存在知りませんからね。怒りの矛先も見当違いの方向に行くってもんです。お願い、大目に見てあげて(←自己弁護)

 追伸
 明日、プロバイダーの交換作業が入ります。滞りなく済めば良いですが、如何せん不慣れなのでてこずる可能性もあります。
 もししばしの間音信不通になどなりましたら、「ああ、なんかトラブってやがんな」くらいに思っていてください。



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                            ―光― 

 朦朧と移ろう意識の中で、さつきはその声を聞いていた。
 『・・・何故・・・!?何故わたしの邪魔をする・・・!?』
 一つは、女性。
 『姉さん・・・。もう、止めよう・・・?もう、こんなことは止めて・・・わたしと・・皆と一緒に眠ろう・・・。』
 一つは、少女。
 『何故だ・・・!!お前は憎くはないのか・・・!?父を、母を、あの人を、あの子を殺した者たちが・・・!!』
 荒び、猛り狂う様な女性の声。
 『憎いよ・・・。姉さんを・・・義兄さんを・・・父さんや母さん・・・そして村の皆を殺した人達・・・。憎くて、憎くて・・・狂いそう・・・。』
 『なら・・・!!』
 『違う・・・!!違うよ、姉さん・・・!!』
 猛る女性の声をなだめ、諭す様に響く少女の声。
 『何・・・!?』
 『この人達は違う・・・!!違うんだよ・・・!!』
 『何を・・・!?』
 『わたし達が憎むべき人達はもういない・・・!!今この地にいるのは、皆、関係のない人達だけ・・・!!』
 『馬鹿な・・・!!』
 戸惑う、女性の声。
 『本当だよ・・・。本当なんだ・・・。』
 『馬鹿な・・・!!馬鹿な・・・!!馬鹿な・・・!!それではわたしは・・・!!』
 『いいよ・・・。もういいんだよ・・・。眠ろう・・・。眠ろう・・・。わたし達と一緒に・・・。』
 『嫌だ・・・嫌だ・・・信じない・・・。信じない・・・。わたしは、信じない・・・。』
 『姉さん・・・。』
 駄々をこねる様に同じ言葉を繰り返す女性の声を、少女の声が包み込んでいく。
 『止めろ!!“ヒミカ”!!』
 (ヒミカ・・・?)
 そして、声は消えた。 

 さつきが我に帰った時、魔獣の姿は跡形もなく光の中へと溶け込んでいた。
 そして、魔獣の体を溶かし込んだ光は、まるでビデオを巻き戻すかの様に、さつきの掲げる刀へと凝縮し、刀身の中に吸い込まれる様に消えていく。
 やがて、最後の輝きも消え、後には静寂だけが残った。
 「どうなったん・・ですか・・?」
 事の成り行きに呆然としたレオのつぶやきに、いつの間にか近寄って来ていた桃子が答える。
 「終わったわ・・。霊眠、完了よ・・。」
 「うわ!?お、おい、さつき!?」
 不意にさつきの体がぐらりと傾いたかと思うと、そのまま脱力した様に傍らにいたハジメに向って倒れこんできた。
 ハジメが、慌ててその体を抱き支える。
 「うまく・・いったの・・・?」
 とろんとした目でハジメを見上げ、さつきがたずねる。
 「ああ・・。なんか、今日のお前、すげぇカッコ良かったぜ・・。」
 「へへ・・・。」
 ハジメの言葉に、さつきは安堵の笑みを浮かべる。
 「何か・・・すごく・・眠い・・・。このまま・・少し、寝てもいい・・?この格好・・なんか・・すごく気持ちいい・・・。」  
 「え・・!?あ、ああ・・・。」
 さつきの言葉にハジメは一瞬顔を赤くするが、すぐに慌ててうなずく。
 「ありがと・・・。」
 それを見たさつきは、そう言って満足そうに微笑むと、ゆっくりと目を閉じる。
 「こいつ・・大丈夫か?」
 ハジメが心配そうに、自分の腕の中で寝息を立てるさつきの顔を覗き込む。
 「大丈夫よ・・。」
 その声にハジメが顔を上げると、いつの間にか桃子が目の前に立っていた。
 「急に大量の霊力を消費して、疲れただけ・・・。少し休めば、すぐに良くなるわ・・・。」
 そう言いながら膝をつくとそっと手を伸ばし、さつきの髪を愛しげになでる。
 「よく、がんばったわね・・。ゆっくり、休みなさい。」
 優しくそう言うと、その視線を目の前のハジメに移す。
 「ありがとう・・ハジメ君・・。この娘を守ってくれて・・・。」
 「え・・?あ、は、はいっ!!」
 いつもと違う桃子の雰囲気と口調に、ハジメは思わずかしこまる。(後日、この様子を見ていたレオが言うには、この時の二人のやりとりはまるで暗い夜道、女の子を家まで送ってきたボーイフレンドと、それを出迎える女の子の母親との会話そのものであったということである。)
 
 「妖気が消えた・・。うまくやったようだな・・・。」
 芝生の上で寝そべりながら、天邪鬼はそう言って満足そうな笑みを浮かべた。

 その頃、深い眠りの中で、さつきは不思議な夢を見ていた。
 さつきはそれまで見たこともない風景の中に立っていた。
 広い草原、深い森、澄んだ川、延々と連なる山々、そして、さつきが知るよりももっと青く、広く、遠い空・・・。
 そんな何もかもが澄み切った世界に、さつきは立っていた。
 そして、彼女の目の前には小さな村落が一つ。草や丸太で作った家の周りを、見慣れない服を着た子供達が、楽しげな声を上げて走り回っている。それを少し離れた所から、母親らしき女性達が獣の皮をなめしながら見つめている。
 (あ・・・!?)
 さつきの目が、その中に見覚えのある顔を見つける。
 母親達の中で、ひときわ幼い赤ん坊を抱いて仕事をする女性。
それはまぎれもなく、さつきとハジメの目の前で魔獣へと変貌した女性だった。しかし、穏やかな表情で赤ん坊をあやす彼女に、あの恐ろしい魔獣の面影はない。
 そこにあるのは、憎悪でも狂気でもなく、ただ淡々と流れていく安らかな時間。
 『静かでしょう・・・?』
 不意に声をかけられ、さつきが横を見るといつの間にか一人の少女がそこに立っていた。
 『本当に・・ここは静かで・・優しい場所・・・。』
 さつきとさして変わらない年頃らしいその少女は、他の人達とは異なった雰囲気の衣装を着ている。 それが現在の巫女の様に、神に仕える者の衣装だということが、不思議とさつきにも理解出来た。
 (何だろう・・。この娘の声、前にも聞いた事がある様な気がする・・・。)
 ぼんやりとそんな事を考えるさつきをよそに、少女は話を続ける。
 『私達・・ここが本当に好きだったんです・・。決して豊かで安全な生活とは言えなかったけど・・・。それでも、この地で生まれて、育って、子を産んで・・、それがずっと続けば、それでいいと皆そう思っていたんです・・・。 でも・・・』
 少女が瞳を悲しげに曇らせる。
 『あの日・・ずっと遠くの西の方から・・見たことのない人達が来て、そして・・・』
 少女はそこから先を、口にはしなかった。けれど、少女が言わんとした事をさつきは容易に理解する事が出来た。胸の奥が、ずきりと痛む。
 『あの女(ひと)は・・私達の中でも一番この地を、一族の皆を愛していました・・・。だから・・・だからこそ、あの女(ひと)の魂は憎しみに強く捕われてしまったのかもしれません・・・。人の姿も・・・本当の憎しみのぶつけ先すらも見失ってしまうほどに・・・。』
 そこまで言うと、少女はさつきの方に向き直る。
 『ありがとう・・・。』
 ニコリと微笑む少女。
 『あなたが力を貸してくれたから、もう一度、あの女(ひと)を眠らせてあげる事が出来ました・・・。』
 その言葉に、さつきは少女の声を聞いた時を思い出す。
 (ああ、そうか・・。この娘の声・・・、あの刀の中の・・・。)
 『本当に・・・ありがとう・・・。』
 もう一度そう言って、ペコリと礼をすると少女は村に向って歩き出す。
 「待って。」
 呼び止めるさつきの声に、少女が立ち止まり、振り返る。
 「あなたは・・ヒミカさん・・はこれからどうするの・・?」
 さつきの問いに、少女は少し不思議そうな顔をするが、すぐに微笑を浮かべて答える。
 『あの女(ひと)の憎しみが癒えるまで、私も一緒にこの夢の中で眠ります。あの女(ひと)・・姉さんは、とても寂しがり屋だから・・・。』
 「・・・そうなんだ・・・。」
 『ええ・・・。』
 さつきと少女はしばしの間、見つめ合う。
 やがて、少女はもう一度礼をすると、再び村に向って歩き出す。
 さつきも、今度は黙ってそれを見送る。
 村では、子供達が歓声を上げて走って行く。見れば、数人の男達が森の中から大きな鹿をぶら下げて出てきた所だった。その中の一人が、駆け寄ってきた子供を抱き上げる。女達も、仕事の手を休めて男達を出迎えに行く。
 それと行き違う様に村に入った少女が、残って仕事を続けていた女性から赤ん坊を抱き受ける。
 女性は愛しげな眼差しで、我が子とそれをあやす妹を見つめる。
 幸せな光景。
 二度と戻らない、悲しい安らぎ。
 不意にさつきの背後から風が吹く。
 その風に乗る様に、視界からその光景が遠ざかって行く。 
 見る見る小さくなるその光景を、さつきはいつまでも見つめていた。
               
 
                                                         続く
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