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2012年01月17日

霊使い達の宿題その3・火霊使いの場合(前編)(遊戯王OCG・二次創作作品)









 はい、今日は遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日です。
 今回からの主役は火霊使い。
 例によって、貴方の思う霊使い達とは性格が違かったりするかもしれませんから、どうしてもあかん、という方は無理をせずリターン推奨。
 詳しく知りたい方はお約束通り、リンクのWikiへ。
 それでは、どうぞ。




遊戯王カード 【 火霊使いヒータ 】 EE3-JP208-N 《エキスパートエディションVol.3》

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         霊使い達の宿題その3・ 火霊使いの場合(前編)
                       
                           ―1―   

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 黒い噴煙が立ち込めた空に、低い地響きが響き渡っていた。
 暗い空のその下では、大きくそそり立つ巨山がその天辺に開いた火口から、真っ黒い噴煙と真っ赤な溶岩を流し続けていた。
 件の山は、真っ赤な血を流し続ける様なその様から、巷ではバーニング・ブラッドと呼ばれていた。
 その麓は燃え盛る樹海、炎樹海に覆われ、さらには好戦的で知られるラヴァルと呼ばれる種族が住んでおり、炎の属性を持つモンスター以外は近づく事すら困難な地域となっていた。
 そんな不毛の地に、一人歩く人影があった。炎の様な朱色の髪に、肩に小さな獣を乗せた少女。この荒々しい世界にはそぐわない様な容姿にも関わらず、焼け付く様な瓦礫の道を軽々と渡っていく。
 と、その肩に乗っていた獣が少女に声をかける。
 『主(あるじ)、気を抜くなよ。ラヴァルの連中に見つかると面倒だぞ。』
 「分かってるよ。何回ここに来てると思ってんだ。あいつらのやばさは身に沁みてるさ。」
 朱髪の少女―火霊使いヒータは肩の使い魔、狐火にそう応えると、辺りを見回せそうな小高い丘に上がった。見渡す限り、赤い溶岩と炎、黒い噴煙と焼けた岩の二色だけの世界である。
 「・・・ったく。相変わらず無粋な所だよなぁ。もう少し目麗しい場所はないもんかねぇ?」
 『あはは、そう言うなよ。これでも某の故郷だぞ。』
 「ああ、そうだっけな。わりぃわりぃ。」
 炎の属性を持つモンスターには、その身に常に火が燃える器官を持つものが多く、それ故生息場所が限られてしまうものが多い。普通の森や草原では周囲を火事にしてしまうし、湖や川、或いは雨の多い場所だとその身の炎が消えてしまい、命に係わる事になりかねない。
 それ故、バーニングブラッドの噴炎が雨雲を払い、炎樹海の炎が地の水分を干上がらせるこの地域は、必然的に炎属性のモンスターが多く生息する場所となっているのだった。
 火霊使いであるヒータはその特質上、当然炎属性のモンスターをしもべにしなければならないため、この地域にはちょくちょく通い詰めており、ここら一帯は彼女の庭の様なものであった。
 「とはいえ、どーしたもんかねぇ。」
 ヒータは丘にどっかと腰を下ろすと、水筒の水を一口飲んでそう言った。
 「炎属性のドラゴンって、どんな奴等がいたっけか?」
 その問いに、きつね火が考える様な素振りをみせる。
 『そうだなぁ・・・聞く所では「ブラック・ローズ・ドラゴン」や「タイラント・ドラゴン」、「八俣大蛇」辺りが著名な所かなぁ・・・。』
 「おいおい、冗談言えよ。」
 きつね火の答えにヒータは苦笑いを浮かべる。
 「そんな連中、オレの手におえる訳ねーだろ?」
 『気弱だな。』
 「自分を知ってんだよ。」
 そう言って、ゴロンとその場に寝転がる。
 「オレはウィンみたいに器用でもねーし、アウスみてーに知恵が回る訳でもねーからなぁ。だから・・・」
 手を上にかざし、ギュッと握る。
 「やるときゃ真正面からのガチンコ。これしかねぇ。」
 それを聞いたきつね火はふむ、と前足を顎に添える。
 『それじゃ、相手は慎重に選ばないと。こちらの地力で御せるドラゴンとなると・・・。』
 と、突然ヒータが跳ねる様に飛び起きる。
 『主?』
 「吉(きち)、危ねぇ!!」
 そう叫ぶと、相棒を掴み寄せ、丘を転がり落ちる。
 次の瞬間―

 ゴワシャア!!

 轟音と共に、それまでヒータ達がいた丘が鋭い爪に掴み砕かれた。
 きつね火を胸に抱き、転げ落ちるヒータを追う様に無数の瓦礫が崩れ落ちてくる。
 『あ、主、放して!!このままじゃ・・・』
 「うっせ!!黙って捕まってろ!!」
 ヒータは転げながら斜面に足をかけ、ブレーキをかける。

 ガガガガガッ

地肌を削る音とともに、ヒータの身体がガクガクと揺れる。
 斜面の途中でやっと止まった時、ヒータの身体は傷だらけだった。
 『あ、主、無事!?』
 「気にすんな!!それより上だ!!」
 『え!?』
 
 キィルルルルル・・・

 見上げた先にいたもの。それは獲物を爪にかけ損ねた怒りに身をいからせる、銀色に光る巨大な猛禽の如き姿。
 『あいつは・・・。』
 「―「ホルスの黒炎竜」、だっけか!?」
 『うん!!』
 「へっ、ちょうどいいじゃねぇか!!ターゲットは、アイツにすっか!?」
 ヒータは口元の血を親指で拭うと、杖を構えてニヤリと笑う。
 『けど、あいつは・・・!!』
 「向うはやる気みたいだぜ!!」
 その言葉の通り、一度逃がした贄を再びその爪にかけるため、神(ホルス)の名を冠するその竜は、その翼を大きく広げ、滑空の姿勢を取り始めていた。
 「はっ、戦(や)るなら真正面からってか!?望む所じゃねーか!!」
 
 キィアアアアアアアッ

 その言葉が終わるや否や、ホルスの黒炎竜は一度大きく羽ばたいて舞い上がると、そのままヒータに向かって急降下してきた。構えられた爪は、真っ直ぐにヒータの心臓(きゅうしょ)を狙っている。
 「させっかよ!!」
 ヒータが突き出した杖の先に赤い光が閃き、その光が急速に渦を巻き始める。
 罠魔法(トラップ・スペル)、「攻撃の無力化」。
 黒炎竜の爪がその光の渦に阻まれ、弾かれる。

 キィアッ

 バランスを崩した黒炎竜は、一端宙に戻り、再び攻撃の態勢を整える。
 それを見たヒータが叫ぶ。
 「吉(きち)!!憑依装着だ!!」
 『で・・・でも・・・』
 黒炎竜が再び降下を始める。
 「急げ!!」
 『ぎ・・・御意!!』
 きつね火はそう言うと、再びヒータの胸の中へと飛び込んでいく。ヒータがその身を抱き締めた途端、二人の姿を朱色の炎柱(ほばしら)が包み込んだ。
 驚いた黒炎竜が、慌てて急旋回をして空へと戻る。その目の端で、踊る様にうねった炎柱は無数の燐火となって宙に散り、その中から淡い燐光を放つ羽衣を身につけたヒータと、巨大な犬狼の如き姿になったきつね火―稲荷火が現れた。
 
 「さあて、ここからが本番だぜ!!」

 そう言って杖を構えるヒータ。その横で付き従う稲荷火が、地を震わせんばかりの咆哮を上げた。
 
                                      

                                                続く
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