水曜日、学校の怪談の日です。今回の作品は遊戯王OCGがらみのものとなっているので、知らない方にはちょっと分かりずらい描写があるので注意。
では、本編の前にコメント返し。
キタ━(゚∀゚)━! 憑依☆装着(キラッ)
はい、きましたよ。ご期待に副えましたかどうか・・・。
さて、私のヒータのイメージは強気で強がり、ちょっと見栄っ張り。弱い自分を見せまいとするがゆえにそう振舞ってしまう。でも、四霊の中では最も普通の女の子っぽい感じ。この小説のヒータは堅実で冷静な部分もあるけど、そこも含めてヒータらしいと思った。きつね火と二人っきりの時なので、このくらいがちょうどいいだろうな。
ヒータってわりとイメージが重なる人って多いと思うんですよね。霊使いの中でも一番個性の出てる顔つき&服装ですし。
うp主がニコニコであげたggrksのヒータも結構イメージ通りだった。
見ていただいてありがとうございます。m(-_-)m
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―4―
「ここは・・・?」
ハジメ達が闇を抜けると、そこには黄昏の日差しの中に見慣れない路地が広
がっていた。
「まるで・・昭和初期の下町みたいですわね・・・。」
桃子が率直な感想を述べたその時ー
『クックックックックッ・・・。』
「!!」
ハジメ達の正面に立つ外灯。その暗い明りの中に、いつの間にか一つの人影が地面から伸び上がる様に立っていた。
『ようこそ・・・。普通なら、私の方から申し込ませていただくのだが・・・相手の方からご足労いただくのは初めてだ・・・。・・・歓迎するよ・・・。』
黒いチューリップ帽と包帯の隙間からのぞく目がニヤリと歪む。
「あなたが・・「黄昏のカードマスター」・・・?」
「その通り・・・。どうぞよしなに・・・。」
桃子の問いに、影はそう言ってうなずく。
「さつきを・・・どうしたんだ・・・?」
ハジメの言葉に、カードマスターはククッと笑う。
『さつき・・・?ああ、先程お相手をしていただいた少女か・・・?彼女ならそこだよ・・・。』
そう言って、指さした先には古びた木製のベンチ。そしてその上に横たわる一つの人影。
「!!、さつき!!!」
皆が駆け寄り、ハジメがさつきの体を抱き起こす。しかしー
「!?、さつき・・・!?」
さつきの体には力がなく、抱き支えるハジメの腕からはみ出した左腕が、人形のそれの様にダラリと下がる。薄く開かれた目にも光はなく、どんよりと濁った瞳はただ虚空を泳ぐ。
「おい!!さつき!!一体どうしたんだよ!!!」
「お姉ちゃん!!返事してよぉ!!」
「さつきちゃん!!」
「さつきさん!!」
皆の必死の呼びかけにも、反応はない。
「ちっ・・・魂を抜かれてやがる・・・!!」
さつきの様子を見た天邪鬼が、忌々しげに歯噛みする。
「!!・・・てめぇ・・・。」
ハジメが燃える様な目でカードマスターをにらみつける。
その視線を軽く受け流しながら、カードマスターは薄ら笑みを浮かべる。
『・・・そんなに怖い顔で睨まれては困る・・・。私と彼女は同意の上で勝負をしたのだからね・・・。』
「同意の上で・・・?」
『そう・・・彼女は私の賭けた賞品に、自分の魂と同等かそれ以上の価値があると判断した・・・。その上で私達は勝負をし、私が勝った・・・。それだけの事だよ・・・。』
「・・・」
『彼女とのゲームは実に楽しかったな・・・。戦略などないに等しい拙いものだったが・・・、私の「賭け賞品」に対する想いから生まれる必死の気迫は実に心地よいものだった・・・。』
「・・・」
『それだけに、自分の敗北が決まった時の絶望と恐怖に満ちた顔も、また格別だったがね・・・。』
「・・・黙れよ・・・」
押し殺した様な声でハジメが言うが、それに構わずカードマスター楽しそうに喋り続ける。
『ククク・・・わざわざそちらからご足労いただかなくとも、彼女の「体」はきちんとお返しさせていただくつもりだったのだよ・・・?もっとも、魂はないから一生その状態のままだがね・・・。クックックッ・・クゥックックック・・・』
「・・・!!」
その笑いに溢れる、あまりにもあからさまな悪意に皆の背に悪寒が走る。
「うるせぇっっ!!」
その哄笑をさえぎる様に、ハジメが叫ぶ。
「てめぇ!!さっきっからごちゃごちゃおしゃべり過ぎなんだよ!!俺達はお前のおしゃべりの相手をしに来たんじゃねぇぞ!!」
『クク・・・それもそうだ・・・。この様な無為なおしゃべりで時間を労費するのは、実に無駄な事だな・・・。君とは実に気が合いそうだ・・・。』
その言葉に、ハジメは不快そうに眉をひそめる。
『クク・・・それではゲームを始めようか・・・?相手をするのは誰かな・・・?』
その言葉を受け、ハジメは真剣な表情で桃子達を振り返る。
「・・・。」
ハジメに向って、皆が無言でうなずく。
「・・・さつきを頼む・・・。」
そう言うと、ハジメは再びカードマスターに向って向き直る。
「俺がやる・・・!!」
それを聞いたカードマスターが、ニヤリと嬉しそうな笑みを浮かべる。
『ククク・・・。それはいい・・・。どうやら君はなかなか腕が立ちそうだからな・・・。面白いゲームが出来そうだ・・・。』
そう言いながら、パチンと指を鳴らす。地面がグニャリと歪み、真っ黒いテーブルが生える様に現れる。そしてその上には無数のカードがズラリと並ぶ。
『それを使って、好きな様にデッキを組みたまえ・・・。なぁに・・・慌てる事はない・・・。時間はたっぷりとあるのだからね・・・。』
ハジメは無数のカードを前にしばし何事かを考えていたが、やがてゆっくりとそれに手を伸ばした。
「もういいぜ・・・。」
十分ほど後、デッキを完成させたハジメがそう告げる。
『そうかね・・・。それでは始めるとしようか・・・。』
そう言うと、自分のデッキをテーブルの上に置いて席につき、その向かい側の席にハジメをうながす。
「俺が勝ったら、さつきの魂・・・返してもらうぜ・・・!!」
席につくとハジメはカードマスターをキッとにらみつけ、そう言い放つ。
対するカードマスターはニヤニヤした笑いを浮かべながら、それに答える。
『いいとも・・・。ただし、私が勝ったその時は・・君の魂も私のものだ・・・。』
「・・・ああ・・・。」
ハジメの答えに満足そうにうなずくと、カードマスターはデッキに手をかける。
『楽しいゲームをしようじゃないか・・・勇敢な騎士(ナイト)君・・・。』
デッキからカードを引きながら、ハジメはもう一度後ろを振り返る。その視線の先には、桃子の腕の中で横たわる人形の様なさつきの姿。それに向って、そっとつぶやく。
「さつき・・・必ず助けるからな・・・。」
そして、ゲームが始まった。
「ハジメさん・・・頑張ってください・・・。」
「ハジメ・・・。」
「ハジメ兄ちゃん・・・。」
皆が心配そうに見守っている中、天邪鬼だけが妙に険しい視線をテーブルの上のカードに送っていた。
続く