さて、水曜日、学校の怪談の日です。前回もいいましたが、今回の作品は遊戯王OCGがらみのものとなっているので、知らない方にはちょっと分かりずらい描写があるので注意。
では、本編の前にコメント返し。
・・・・・・
ウィン強えぇええええ!?シールドウィングの召喚とシフトチェンジの発動をほぼ同時に行い、さらにすかさず六芒星の呪縛をかけたというのかっ!しかも邪竜とのしもべ契約を並行しながらぁ!!!(六芒星は相手の不意を突かないと成功しないようです)
あー、確かに強くしすぎたかも(汗)。物凄い筆乗ってて、アドレナリン全開で書いたからなぁ・・・。個人的には、実際にゲームやっててコンボが決まり、畳み込む時の爽快感を演出したかったんですが・・・。
物資調達員がすごくカッコイイ件について。そのシブいキャラ選定もさることながら、冒頭部分でうまく読者(私)を引き込んでくれた功労は大きい。ラストでの登場も相まって、ストーリーに厚みを与えてくれたように思う。彼がいなければ駄作だったかもしれない。
駄作だったかもしれない
( ゚д゚)°・°。ゲボフゥアッ
・・・こ、こいつはいけねぇ・・・。思った以上に手厳しいようだぜ。うちの読者さんは・・・(脂汗)こいつぁふんどしを締め直してかからねば・・・(冷汗)物資調達員、ありがとう・・・。
え?主人公の行動がコメントに影響された件につ(ry
あ、くそ。かわされた(笑)
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―3―
夜の九時を回った頃、ハジメは自宅でカードの整理をしていた。
「あれ?これって敬一郎のカードだ・・・。さては、さっき学校でやった時に混じっちまったんだな。しょうがない。返しに行ってやっか・・・。」
そう言いながら、そのカードを胸ポケットに入れて立ち上がった時、玄関の方で来客を知らせるアラームが鳴った。
「ハジメ、ちょっと出て。」
「はいはい・・・っと。」
母に頼まれ、ハジメが玄関に向う。
「はい。どちら様?」
出て見ると、そこにはさつきの父、礼一郎と不安に目を潤ませた敬一郎が立っていた。
「あれ・・・?おじさんに敬一郎・・・。どうしたんですか?」
「ハジメ兄ちゃん・・・」
敬一郎が涙ぐみながらハジメに抱きついてくる。
「お・・おい、どうしたんだよ!?」
ハジメに抱きつき、泣きじゃくる敬一郎に代わり礼一郎が切り出す。
「ハジメ君・・夜分急にすまない・・・。実は・・さつきがまだ帰ってこないんだ・・・。」
「え・・・!?」
「すまないが・・・ハジメ君、何か・・・心当たりはないかな・・・。」
勤めて冷静さを保とうとする礼一郎だが、その顔色は青ざめている。
「さつきが・・・!?」
ハジメの心に、不吉な予感が黒雲の様に満ち始めていた。
数刻後、ハジメから連絡を受けた桃子達も集まり、四人は大人達とは別のルートでさつきの捜索にあたっていた。
しかし、いくら探してもさつきの姿を見つける事は出来ず、今は夕方にさつきと別れた通学路で小休止を取ることになっていた。
「敬一郎君・・泣かないで・・・。さつきちゃんはきっと無事ですわ・・・。」
不安に耐え切れず、泣きじゃくる敬一郎を桃子が優しくなだめる。
「・・・でも、一体どこに・・・?」
疲れきった顔でレオがつぶやく。
「学校にも・・旧校舎にもいない・・・。まさか・・・本当になにか事件に巻き込まれて・・・!?」
ガスッ!!
突然、何か硬いものを打ち付ける様な音が響き、皆を驚かせる。
見ると、ハジメがその拳を目の前の電柱を強く打ち付けていた。拳の皮が破れ、赤い血が一筋、コンクリートの柱を伝って流れ落ちる。
「ハジメさん!?」
「な、何やってんですか!?ハジメ!?」
レオが慌てて近寄るが、ハジメの様子に思わず息を呑む。
ハジメは苦しげに顔を歪ませ、噛み切らんばかりに唇を噛み締めていた。
「俺が・・・」
その口から苦しげな声が漏れる。
「俺があの時・・あいつについて行ってやってれば・・・。ちくしょう・・・ちくしょう!!」
後悔の念と、ぶつけようのない憤りにその身を震わせる。
「ハジメ・・・。」
「ハジメさん・・・。」
そんなハジメにかける言葉すら見つからず、レオと桃子はただ立ち尽くす。
と、その時ー
「やれやれ、見ちゃいられねーな。」
飄々とした声が重苦しい沈黙を切り裂いた。
「天邪鬼!?」
「カーヤ!?」
皆の視線を浴びながら、天邪鬼はやれやれといった顔で言葉を続ける。
「お前ら、もう何回こんな事繰り返してやがる?いいかげん、気配の一つも読める様になったらどうだ?」
「気配を・・・って、まさか!?」
レオの言葉に天邪鬼はニヤリとうなずく。
「その通りさ・・・。さつきはお化けにとっつかまったんだ・・・。」
その言葉に、皆の間に緊張が走る。
「天邪鬼・・知ってるのか・・・?さつきが何処にいるのか・・・」
ハジメが天邪鬼に詰め寄る。
「二ヒヒ・・・。気になるか?しかし、今から行ったとして、果たして間に合うかな?もしかしたらもう・・・」
「天邪鬼!!!」
からかう様な天邪鬼の口調に、ハジメが声を荒げる。
「おっと、怖ぇ、怖ぇ。」
天邪鬼はちょっと首をすくめると、不敵な笑みを浮かべながらハジメを見返す。
「ま、あいつがいないとメシを作る奴もいねぇし、俺の獲物をどこの馬の骨かも分からん奴に、横からかっさらわれるのも面白くねぇしな・・・」
そう言うと、トコトコとハジメの傍らの電信柱の元へ歩いていく。
「こいつだ。」
「え?」
天邪鬼が指し示す先にあるのは、道端に打ち捨てられたカードの空きパック。
「こいつの中から、妙な妖気とさつきの気配の残気が感じられる。この中が奴の縄張り、結界に通じてるってわけさ・・・。」
「この中に・・・」
ハジメは小さな袋の奥に広がる闇を見つめる。
「だがな・・・」
そこで天邪鬼は真顔になり、皆を見回す。
「俺にも分かるのはここまでだ・・・。ここから感じる妖気は俺の知る連中のものじゃねぇ・・・。大方、最近になって生まれた新顔のヤツだろうよ。」
天邪鬼の言葉を聞いたレオがはっとする。
「カードの袋・・最近生まれたお化け・・まさか・・・「黄昏のカードマスター」!!」
「あん、何だ?そいつは・・・。」
「は、はい、「黄昏のカードマスター」というのはですね・・・」
怪訝そうな顔をする天邪鬼に、レオは昼間さつき達に話した内容を伝える。
「ふん・・、なるほど。どうやらそいつは「目比べ」の類らしいな・・。」
レオの話を聞いた天邪鬼は、耳慣れない名前を口にする。
「めくらべ・・・って、昔、平清盛の夢の中に出てきて目比べ(にらめっこ)をしかけてきたっていう、あれですか?」
レオの言葉に天邪鬼が頷く。
「ああ、妖怪の系統としては割とありふれた奴らでな、狙った人間を自分の縄張りに引き込んで勝負を仕掛ける。勝負の中身は目比べの他にも謎かけだったり、力比べだったりとそれぞれに専門分野がある様だがな・・・。」
「霊眠の方法はあるんですか・・・?」
レオが訊ねる。
「それはな・・・」
天邪鬼に皆が期待の目を向ける。
「知らん。」
ガクッ
「てめぇっ!!ふざけてるとぶっ飛ばすぞ!!??」
ハジメが半分キレかかりながら、天邪鬼に詰め寄る。
「まぁ、落ち着けよ。」
そんなハジメを軽くいなしながら、天邪鬼は言葉を続ける。
「確実な霊眠方法は知らねぇが、この手の奴らをその勝負で負かして退散させたって話ならいくらでもある。案外、そこんとこに付け入る隙はあるかもな・・・。」
「つまりそいつとのゲームに勝てばいいって事ですか?」
レオの問いに天邪鬼は首を振る。
「確実にそうだとは言ってないぜ。それに、この手の奴らはその性質(たち)からいっても、狡猾で悪知恵がきく場合が多い・・・。まともにやっても勝ち目は薄いだろうよ。」
「そんな・・・。」
がっくりと肩を落とす一同。
と、その時ー
「おいっ!!「黄昏のカードマスター」!!」
沈黙を切り裂いて、ハジメの怒鳴り声が響く。
「な、何だぁ!?」
「ハ、ハジメ!?」
驚く皆をよそに、ハジメはカードの空きパックの中の闇に向って叫び続ける。
「聞こえてんだろ!?そんなにゲームがしたいなら、俺が勝負してやる!!だから・・・さつきを返せ!!」
ザワ・・・
その声に答える様に、空きパックの中で闇が蠢く。
それに気づいた桃子やレオが慌てて止めに入る。
「ハジメさん!!いけません!!向こうは乗り気です!!」
「そ、そうですよ、ハジメ!!もっとちゃんと作戦を練ってからの方が・・・。」
「んな事してたら、本当に手遅れになっちまう!!」
「!!、ハジメ・・・。」
「ハジメさん・・・。」
ハジメの剣幕に、皆は思わず押し黙る。
「おい!!聞いてんのか!?相手してやるって言ってんだろ!!さっさと出て来やがれ!!」
ブワァッ!!
突然パックの口から闇が溢れ出し、ハジメの体を飲み込み始めた。
「!!、ハジメ兄ちゃん!!」
叫ぶ敬一郎に、ハジメが優しい眼差しを向ける。
「敬一郎、必ず、さつきは助けるからな・・・。」
そう言ったハジメの姿が、完全に闇の中に消える。
それを見た敬一郎の瞳に、強い決意の色が浮かぶ。
「ぼくも行く!!」
桃子とレオも、強くうなづき合う。
「行きましょう。」
「ええ。」
そう言って、三人は次々と闇の中へ飛び込んでいく。
そしてー
「やれやれ、まったくもって、どいつもこいつもお人好しだぜ・・・。」
ブツブツ言いながら、天邪鬼の姿もまた、闇の中へと消えていった。
続く