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2012年01月10日

霊使い達の宿題その2・風霊使いの場合(後編)(遊戯王OCG・二次創作作品)









 はい、今日は遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日です。
 例によって、貴方の思う霊使い達とは性格が違かったりするかもしれませんから、どうしてもあかん、という方は無理をせずリターン推奨。
 詳しく知りたい方はお約束通り、リンクのWikiへ。
 それでは、どうぞ。



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                         −3−

 様々なモンスターや異種人達が暮らすデュエルモンスターズ界。そして、ここはその一角にある、とある砂漠地帯。
 住み着く生物も少なく、時折吹く風音と砂のすれる音以外、滅多に物音もしない筈のその場所で、今日に限って盛大な騒音が響き渡っていた。

 「ウシャアァアアアアアツ!!」
 「きゃー、ぷっちん、そっち、行ったよー!!」

 ドォンッ

 『ひ、ひぇええー!!』

 ドゴォオオオオオオンッ

 「シュゥアァアアアア!!」
 「ぷっちーん、今度はそっちー!!」

 シュヴァアアアッ

 『ひ、ひゃあぁあああー!!』

 ザキュキュキュキュキュッ

 「ウシュウウウウウウッ!!」
 「ぷっちん、今度は――」
 

 『ちょっと待たんかーい(怒)!!!』

 「シュ!?」
 「ひゃん!?」


 『ええ加減にせんかい!!さっきっから黙っとりゃオレばっかり矢面に立たせおってからに!!何か!?お前らはグルか!?ツルんどるんか!?』

 「あ、あはは・・・そ、そんな怒んないでよ・・・ぷっちん。」
 『そもそもお前な、前回あんな余裕綽々でサンドイッチ食っといてからに、いざ事に面したらなんじゃその体たらくは!?あの肝の太さは何だったんじゃい!?」
 「あはは、ほら、あの後コメントで「好戦的」って言われちゃったじゃない?ちょっと心外だったから、ここらで路線修正しとこうかなぁ、なんて・・・」


『誰じゃコラ、余計な事言ったやつぁ!!ちょっと面かせやごるぁあああ!!!』

 「ま、まぁまぁぷっちん。落ち着いて落ち着いて。」
 『やかましいわ!!そもそもと言えばお前が・・・」

 シュウウウウウ・・・

 「『ハッ』」

 ゴシャァアアアアッ

 殺気に気付き、左右に避けた二人?の間を「見えない塊」が猛スピードで通り抜け、その先にあった岩が粉々に砕け散る。
 「あっぶな〜。」
 『ちょっとウィン。これマジでヤバイよ!!何か作戦とかないの!?』
 向うの岩陰から飛んでくるプチリュウの念話に、ウィンは頭をかきながら応える。
 「いや〜、おびき寄せるまでは考えてたんだけど、その後はまぁ相手のレベルも低いしなんとかなるかな〜なんて・・・(笑)」
 『だ・・駄目だこりゃ・・・。』
 岩の向うで、プチリュウが脱力する気配がした。
 ウィンは岩の陰からそっと顔を覗かせ、低い唸り声を上げている邪竜の様子を見る。全身の鱗が逆立ち、明らかに苛立っている。相当空腹らしい。
 「う〜ん。下の頭が出すのは簡単に避けられるんだけど、上の頭が出すヤツがなぁ・・・。」
 魔頭を持つ邪竜が持つ攻撃は二つ。上の竜の頭が放つ「斬裂疾風(レザーブレス)」と下の身体に開いた口から発射される「烈風弾(バレットブレス)」である。
 「烈風弾(バレットブレス)」は邪竜が体内で圧縮した空気を弾丸の様に打ち出すもので、破壊力が高く、直撃すれば先の様に岩さえも粉砕する。しかし、身体の正面真っ直ぐの起動にしか発射出来ず、連射も出来ないため、察するのもかわすのも容易い。
 一方、上の頭が出す「斬裂疾風(レザーブレス)」は薄皮を裂く程度の真空刃を無数に飛ばす攻撃で、威力こそ低いが連射がきき、長く稼動のきく首に乗った頭から発射されるため、四方八方満遍なく飛ばす事が出来る。これで獲物の動きを封じ、「烈風弾(バレットブレス)」で止めを刺すのが魔頭を持つ邪竜の攻撃パターンだった。
 実際、ウィンやプチリュウも先刻から「斬裂疾風(レザーブレス)」の洗礼を受け続け、体中傷だらけになっていた。威力が低いとはいえ、これだけ食らえば流石にダメージも堪ってくる。特に、下級とはいえ硬い鱗に守られた身体を持つドラゴン族であるプチリュウはともかく、ウィンの方のダメージは深刻だった。重なる失血で時折足元がふらつき始めており、このままでは「烈風弾(バレットブレス)」を食らってしまうのも時間の問題だろう。そうなったら、一巻の終わりである。
 『こうなったら・・・』
 突然、プチリュウが隠れていた岩陰から飛び出した。
 「ぷっちん!?」
 驚くウィンにプチリュウが念話を飛ばす。
 『ボクがアイツの首の動き止めるから!!ウィンはその間に契約の印章を!!』
 そう言って、プチリュウは魔頭を持つ邪竜の頭に向かって真っ直ぐに突っ込んで行く。
 「シャッ!?」
 それに気が付いた邪竜は頭を素早く廻らすと、その口から無数の真空刃を吐き出した。
 『う・・・く・・・』
 
 ガキンッキンッ 

 鋭い真空の刃が硬いドラゴンの鱗に当たり、鈍い音を立てる。
 プチリュウの小さな身体はその衝撃だけで弾き飛ばされそうになるが、それに耐えて尚も突き進む。
 『こんの!!』
 そしてついに邪竜の頭部に飛びつくと、そのエラに齧り付き、自分の細長い身体を邪竜の首に絡み付けた。
 『ウィン!!動き、押さえたよー!!』
 「え?あ、うわ!?あー、ちょっと、待って。チャージ完了まであと3分。」
 ウィンは慌てて杖の先へと精神を集中し始める。
 「シャアァアアアッ!!」
 怒り狂った邪竜が、ブンブンと頭を振り回す。
 『は、早くしてー!!』
 プチリュウは全身の力を込め、必死に頭に齧りつく。
 と、振り回されていた頭がピタッと止まった。
 『へ?』

 ヴァサァッ
 
 途端、邪竜がその翼を大きく広げた。
 『!?』

 バサァッ

 砂煙が舞い、5mを超える巨体がふわりと宙に浮く。
 『―!!まずい!!』
 押し潰す気だ―プチリュウがそう気付くのと、邪竜の身体がウィンの上に踊りかかるのとは同時だった。
 『ウィンー!!』

 ズズゥウウンン

 プチリュウの叫びも空しく、邪竜の巨体が鈍い地響きとともに地に落ちた。もうもうと立ち込める砂煙。
 自身の主の無残な姿を想像し、プチリュウは思わず目を閉じる。
 ―と、

 「ちょっと、ぷっちん。絶望するのはまだ早いんじゃないかなぁ?」

 聞き慣れた声が思わぬ方向から聞こえ、プチリュウは思わず頭上を見上げた。
 見れば、そこには赤い魔法光を散らしながら軽々と宙を舞うウィンの姿。
 『え?じゃこっちは!?』
 慌てて目を戻すと、邪竜の下にいたのは、これまた巨大な翼を交差させてその巨体を受け止める巨鳥の姿。
 『「シールド・ウィング」!!って事は、「シフト・チェンジ」!?いつの間に!?』
 ―罠魔法(トラップ・スペル)・「シフト・チェンジ」―
 術者自身とそのしもべの位置を、一瞬にして取り替える罠魔法(トラップ・スペル)である。
 邪竜の挙動を見て取ったウィンは、もう一匹のしもべであるシールド・ウィングを空中に召喚し、さらに自分の真下にシフト・チェンジ(これ)を展開していたのである。
 「ぷっち〜ん。君はちょっと、自分の主(マスター)を侮りすぎじゃないかな?」
 得意げにブイサインをするウィン。
 一方、慌てたのは邪竜である。必殺の一撃を突然出てきた新手に易々と受け止められた上(シールド・ウィングの翼は文字通り鋼鉄の強度を誇る)、狙っていた筈の娘が自分の上にいるのである。訳が分からない。
 ―と、狼狽する邪竜の真下で、再び赤い光が走る。
 その光は猛スピードで地を走り、瞬く間に巨大な六亡星を描き出す。
 『「六亡星の呪縛」!!』
 驚いたプチリュウが離れるのと入れ替わる様に、地から浮かび上がった真紅の輝きを放つ六亡星が邪竜の身体を拘束する。
 ―罠魔法(トラップ・スペル)・「六亡星の呪縛」―
 対象とした相手を、その力の強さに関わりなく拘束する術である。
 「ジュルァアアアアアアアアッ!!」
 苦悶の叫びを上げる邪竜。
 「しもべ(ぷっちん)がこんなに頑張ってくれたんだもん。あたしがへたれてる訳にはいかないよね!?」
 そう言うウィンの手の中で、杖が新緑の輝きを放つ。
 「チャージ完了!!これで・・・」
 そして邪竜に向かって落ちながら、杖を思いっきり振りかぶる。

 「終わりだぁああああああっ!!!」

 パッチィイイイイイインッ

 新緑の輝きが叩きつけられ、邪竜の身体に契約の証印をしかと刻み付けた。

                    ―4―

 ―それから数日後。
 件の砂漠の近くを、空の荷台を引きながらあるく物資調達員の姿があった。
 「やれやれ。今回も何とか生き残れたか。」
 そう言いながら、カラカラと荷台をひく男の姿は包帯だらけである。
 「ま、命あってのものだねってもんさね。」
 などと言いながら岩場を通り過ぎようとしたその時

 「おーじちゃん♪」

 聞き覚えのある声に、男は足を止めて振り返る。
 そこにいたのは小さな竜を肩に乗せ、こっちに向かって手を振る、若葉色の髪の少女。
 見ればその姿も、男に負けず劣らず、ボロボロだ。
 その少女がニカッと笑って言う。
 「ちょっとそこまで、乗っけてってくれないかな?」
 男もニヤリと笑うと、「おうよ。」と言って空の荷台を指差した。
                                                        
                                             終わり
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