水曜日、学校の怪談の日です。今回の作品は遊戯王OCGがらみのものとなっているので、知らない方にはちょっと分かりずらい描写があるので注意。
では、本編の前にコメント返し。
ヒータよく頑張った!100点だ!!!!!
もっと誉めたげて!!・・・評価があれだから・・・
お触れホルスが猛威を奮ってた時期がありましたが・・・、改めてホルスの恐ろしさを思い知った気がします。そりゃ、ホルスLv4に火霊使いの効果は効かんわな。
小生は使われる方ではなく、使う方でしたがとりあえずLv6以上が出ると弟は嫌な顔してました。
後編が1番よかったかな。ここ3週の火霊使回では、ちょっと設定に走りすぎた感じがじた。きつね火さん、説明乙www
アウチッ!!そうでしたか・・・(汗)小生の悪い癖なんですけど、なかなか直んないなぁ・・・。精進します。
まあ、全部個人的な意見ですけど。Lv6が吐いた炎が岩肌を溶かす描写を入れたところなんかは好き。恐怖した。ヒータ、逃げて
いえいえ。どんなものでもご意見はありがたいです。これからもよろしくお願いします。
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―6―
「ハジメ!!」
「ハジメさん!!」
レオと桃子の悲痛な叫びが響く。
そしてー
「ハジメ兄ちゃん、負けないで!!!」
それは、敬一郎が送った、精一杯の声援。
「ああ!!分かってるさ、敬一郎!!トラップカード発動だ!!」
その声に答え、ハジメが自分の場に伏せてあったカードを表に返す。
『無駄だ!!君のデッキには、今の状況に対応出来るカードは入っていな・・・なにぃっ!?』
カードマスターの顔が、驚愕に歪む。
返されたカードは、今この状況においてまさに起死回生の手を生み出すカードだった。
カウンターが炸裂し、カードマスターのライフポイントが0になる。
「やった!!」
「ハジメさん!!」
皆の歓声の中で、カードマスターの身体がよろめく。
『ば、馬鹿な。そんなカード、貴様のデッキには入っていなかった筈・・・!!』
信じられないといった態のカードマスターに向って、ハジメが不敵な笑みを向ける。
「そりゃそうさ。こいつはお前に用意されたカードじゃないからな!!」
『な・・・!!』
絶体絶命のハジメを救ったカード。それは昼間、学校でハジメのデッキに紛れ込んだ敬一郎のカードだった。
「お前みたいな奴がよこしたカードを信用するほど、お人好しじゃねぇよ!!」
そう言い放つと、ハジメは敬一郎の方を振り向き、カードを振って見せる。
「サンキュ、敬一郎。おかげで助かったぜ!!」
「うん!!」
ハジメの言葉に、敬一郎は嬉しそうにうなづいた。
『お、おのれぇ!!人間風情がよくも・・・』
それまでとは打って変わった憎々しげな声を上げながら、カードマスターはテーブルの上のカードをかき寄せる。
『まだだ!!まだ勝負はついていない・・・。今度こそその魂、喰らってくれる!!』
「いや、てめぇの負けだ!!」
突然黒い影が空を裂き、テーブルの上に降り立った。
『貴様、何のつもりだ!?』
「何のつもりだと?はんっ、同胞のよしみだ。教えてやるよ・・・。こういうつもりさ!!!」
そう言うと、次の瞬間天邪鬼はハジメのデッキに飛びつき、一枚のカードをくわえ出すとともに、その爪を振るってさらに四枚のカードを弾き出した。
飛ばされた四枚のカードは宙を舞い、ハジメと桃子達の前に落ちる。
『!!』
それを見たカードマスターの顔が強張る。
「お前ら、そのカードを掴め!!この五枚のカードがこいつの本体だ!!」
「!!」
その言葉を聞いたハジメ達は、咄嗟に目の前に落ちたカードを掴み取る。
『き・・・貴様ぁ・・・』
憎々しげにうめくカードマスターに、天邪鬼は不敵な笑みを向ける。
「随分と動揺した様だな?ほんの一瞬だったが、本当の妖気の出所が丸見えになってたぜ!!」
『卑怯な・・・。』
その言葉に、天邪鬼は冷ややかな視線で返す。
「卑怯?ほう、それじゃあ、相手に自分の分身を渡すのは卑怯じゃねぇってか・・・?」
『・・・ぬ・・・』
天邪鬼の言葉に、カードマスターが声を失う。
「てめぇがハジメに渡したカード・・・ありゃあ、全部てめぇの分身だろうが!!しかも、ご丁寧にその中に本体まで紛れ込ませて、カードの並びを操作していやがった。事がてめぇの思い通りに進むわけだ。ま、あいつは、はなから怪しいとふんでた様だが・・・。」
『ぐ・・・ぐ・・・!!』
「教えといてやるよ。一流の勝負師はイカサマなんざに頼らねぇで勝つ。一流のイカサマ師はばれる様なイカサマは仕組まねぇ。その点から見りゃあ、てめぇはどっちも半端な三流野郎だぜ!!」
そう言い放つと、天邪鬼はあざける様に二ヒヒと笑う。
『うおおおお・・・お、おノレェエエエエ・・・!!』
憎々しげにうめいたカードマスターの体に異変が起こる。
全身を覆う黒装束がボコボコと蠢いたかと思った次の瞬間ー
『キィカァアアアアアアアアッ!!』
コートと包帯がべりべりと引き裂かれ、その中から無数の髑髏が溢れ出した。
その内の一つが大顎をあけると、テーブルの上の天邪鬼めがけて齧りつく。
グワシャッ!!
「おっと。」
しかし、その一撃は天邪鬼の軽い身のこなしにあっさりとかわされ、鈍い音を立ててテーブルを抉るに終わっていた。
「けっ、本性を現しやがったか。」
ヒラリとハジメの肩に飛び移った天邪鬼がその姿を一瞥し、そう呟く。
『コウナレバ、貴様ラ全員、コノ場デ喰ラッテクレルゥウウッ!!』
ゾロゾロと蠢く髑髏の群れは枯れ木が軋む様な声でそう叫ぶと、今度はハジメに向って襲いかかる。
しかし、天邪鬼は余裕の笑みを浮かべながら宣告する。
「やっぱりてめぇは三流だな・・・。てめぇの本体はこっちが握ってるって事を忘れたか!?」
バリィッ!!
突然、何かを引き裂く様な音が響く。
天邪鬼が、咥えていたカードを鋭い牙で噛み裂いていた。
同時に、ハジメに向かっていた髑髏が塵となって消滅する。
『グェエエエエエエッ!?』
悲鳴を上げて苦しむ怪物の目に、自分を取り囲むハジメ達の姿が映る。
その手には一枚づつ、残りのカードが握られている。
『グ・・・キ、貴様ラ・・・。』
四人の刺す様な視線に、髑髏の群れは怯む様に後ずさる。
「覚悟した方がいいですよ・・・。」
「あなただけは・・・絶対に許せない・・・。」
四人の手が、ゆっくりとカードにかけられる。
『ヨ、ヨセ・・・』
「よくも、お姉ちゃんとママを・・・。」
皆のカードを握る手に、力が込もる。
『止メテクレ・・・・・』
「あの世で、さつきの母さんに土下座してきやがれっ!!」
『止メロォオオオオオッ!!』
ビリィイッッ!!
『グギィヤァアアアアッ!!』
四枚のカードが一斉に引き裂かれ、怪物の断末魔が黄昏の路地に響き渡った。
―7―
本体であるカードを失ったカードマスターは、見る見るうちに塵と化していく。
それは霊眠ではなく、この世ならざる者に訪れる真の滅びの姿。
『・・・おのれ・・・』
己の姿が薄れ行く中、カードマスターの声が憎々しげな声が響く。
『もとはと、言えば・・貴様らが・・・』
その最期の言葉も闇に溶け、後にはただ静寂だけが残った。
ハジメ達はその光景を、放心した様に見つめていた。と、その時ー
ポウ・・・
かつてカードマスターだった塵の中に、不思議な光が浮かび上がる。
「え・・・?」
「何ですか・・・?あれ・・・。」
ポウ・・・ポウ・・・ポウ・・・
不信がるハジメ達の前で、その光は次々と数を増していく。そしてー
パシュッ!! パシュッ!! パシュッ!!
「わ、わぁっ!?」
「きゃあっ!?」
無数の光は、何かの束縛を解かれたかの様に舞い上がり、空の彼方へと消えていく。
「行っちゃった・・・。」
「何だったんだ?今の・・・。」
「魂さ。」
訳が分からないといった皆に、天邪鬼が説明する。
「魂・・・?」
「ああ。奴が、あちこちのガキどもから奪って食い溜めた魂だよ。奴が消滅したから、開放されて宿主の元に帰っていったんだろうさ・・・。」
天邪鬼の言葉に、ハジメがハッとする。
「それじゃ、さつきも!?」
天邪鬼はニッと笑うと後ろを見てみろとでも言う様に、首をしゃくる。
それにうながされ、皆が後ろを振り返る。
ベンチの上に横たえられたさつきの体。その上に白く清浄な光が一つ、
ゆらゆらと浮かんでいた。やがてそれは、ゆっくりとさつきの胸の上に降りると、まるで染み込むかの様にさつきの内へと消えていった。
そしてー
「ん・・・」
さつきの胸が静かに上下し、その口から声が漏れる。
「さつき!!」
ハジメが真っ先に駆け寄り、さつきを抱き起こす。
「・・・ハジメ・・・?」
まだ少し虚ろだが、はっきりとした光を宿す瞳がしっかりとハジメを捕らえる。
「よかった。元に、戻ったんだな・・・。」
ハジメの顔に、心からの安堵が広がる。
「お姉ちゃん!!」
敬一郎がさつきに抱きつき、泣き始める。
「敬一郎・・・ごめんね・・・。」
さつきは泣きじゃくる敬一郎の首に手を回し、その頭を優しく撫でる。
「良かった・・・本当に・・・。」
「ええ・・・。」
その光景を眺めながら、桃子とレオも涙を浮かべて微笑んでいた。
(エピローグ)
主を失った黄昏の路地ほどなく消滅し、さつき達はもとの通学路へと帰って来る事が出来た。やがて、そんなさつき達を礼一郎達父兄が発見し、事件は終りを迎えた。
それから数刻後、さつきとハジメは宮ノ下家のリビングで休んでいた。
礼一郎が、さつきの捜索に協力してくれた人達へのお礼と報告のために出払う事になったため、ハジメはその間、まだショックの抜けきらないさつきに付き添う事にしたのである。
敬一郎は疲れて眠り込んでおり、さつきとハジメは二人だけでお茶を飲んでいた。
「ハジメ・・・ごめんね・・・。」
隣でお茶をすするハジメに向って、不意にさつきがそんな言葉を口にする。
「何がだよ?」
「わたしのせいで・・・皆に・・・危ないまねさせちゃった・・・。」
「バーカ、何そんな事気にして・・・」
そこまで言いかけたハジメが、思わず息を呑む。
さつきの目から、涙が溢れ出していた。
「わたし・・・馬鹿だよね・・・。分かってた筈なのに・・・もうどんな事があったって・・・ママは戻って来ないんだって・・・分かってた筈なのに・・・!!」
さつきの肩が、小さく震えている。
「さつき・・・」
ハジメはしばしの間、そんなさつきの様子を見つめていたが、やがて恐る恐る手を伸ばすとさつきの頬を伝う涙をそっとぬぐう。
「・・・ハジメ・・・」
さつきは一瞬、驚いた様にハジメの顔を見つめるが、次の瞬間いきなりハジメに抱きついた。
「お、おい!?さつき!!??」
驚いたハジメが、顔を真っ赤にしてさつきの体を押し戻そうとするが、ふとその動きを止める。
さつきはハジメの胸に顔をうずめ、小さく声を出して泣いていた。
それに気付いたハジメは押し戻そうとした腕を引き、代わりにさつきの髪を優しく撫で始める。
その後しばしの間、リビングには少女が漏らす小さな嗚咽と、髪をなでる優しげな音だけが静かに響き続けていた。
その頃、人気のなくなった通学路で、天邪鬼は外灯の下に散らばる五枚の破れたカードを見つめていた。
それはノーマルカードと呼ばれる、世間で最も多くの数が出回る種類のカードだった。
それを見つめ、天邪鬼は独り言の様に呟く。
「なるほど。つまらんカードと言われて、使われる事もなく捨てられたか。それで、自分を捨てたガキどもに復讐しようとしたって訳だな。ま、お前さんの生い立ちには同情せんでもないが、少々やり方がまずかったな・・・。お前は一番触れちゃいけないもんに手をだしちまったんだよ・・・。今度生まれて来る時は、もう少し、人間の怖さってもんを覚えてくるこった・・・。」
そう言うと、天邪鬼はくるりときびすを返し、トコトコと闇の中へと消えていく。
そして、後に残されたカードも夜風に飛ばされ、どこへともなく消えていった。
終