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2012年01月03日

霊使い達の宿題その2・風霊使いの場合(前編)(遊戯王OCG・二次創作作品)

 






 
 今回より、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」本格始動です。
 尚、貴方の思う霊使い達とは性格が違かったりするかもしれませんが、しょうがありません。これで出てくるのは貴方の嫁ではなく小生の嫁なのですから(笑)
 どうしてもあかん、という方は無理をせずリターン推奨。
 詳しく知りたい方はお約束通り、リンクのWikiへ。
 それでは、どうぞ。



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         霊使い達の宿題 その2・ 風霊使いの場合

                         ―1―


 ヒュウゥウウーーー

 遥か高空を強い気流が通り過ぎていく。デザートストームと呼ばれる、この地域特有の風だ。
 周辺は乾燥していて植物が少なく、荒涼とした岩場が続く。空は良く晴れ、太陽がカンカンと照っている。それでも砂漠の様な熱感を感じないのは、このデザートストームが運ぶ程よい湿気を含んだ空気のせいだ。遥か遠くの海から運ばれる湿気を糧に、この地域は貧相ながらも、それなりの生態系を育んでいた。
 そんな岩の多い砂地を、一台の荷台が進んでいた。荷台を引いているのは鎧を着込んだ中年の男。戦場へ必要な物資を運ぶ(※1)物資調達員だ。
 男は一際岩の多い場所に着くと、途端に大声を上げた。
 「おぅい、嬢ちゃん!!ついたぞう!!」
 その声に反応した様に、荷台の後ろから小さな生き物がピョコンと頭を出した。
 黄緑色の長い身体に蝙蝠の様な翼。「プチリュウ」と呼ばれる下級ドラゴンの一種だ。
 「おぅ、お前さん、ご主人様んとこ、起こしてくれや。こっちもあんまりゆっくりできねぇんでなぁ。」
 男の言葉に頷くと、プチリュウは「わかった」とでも言う様に頷くと荷台の後ろへ戻る。
 荷台の後ろには、ロープを身に着けた少女が一人横たわり、心地よさそうに寝息を立てていた。
 『ねぇ、ウィン。ウィンってば!!』
 「ふぅえ?」
 プチリュウの呼びかけ(※2)に、ウィンと呼ばれた少女が薄っすらと目を開ける。
 「なぁにぃ?ぷっちん。もう、お昼ごはん〜?」
 荷台の上に身を起こしながら、風霊使いウィンは寝ぼけ半分の声でそんな事を言う。ポリポリと頭をかくと、ポニーテールに纏めた若葉色の髪が、風にのってサラサラと流れた。
 『そうじゃないよ!!目的地についたんだよ!!ほら、目ぇしっかり開けて。よだれふいて。おじさんにお礼しなさい!!』
 ウィンはしばしボ〜とした後、やっと相方の言葉が脳に滲みたのか、「ああ。」と手を打って荷台から飛び降りると、そのままトテテと荷台の前に行く。
 「ありがとぉ、おじさん。おかげで助かったよ。」
 そういって、荷台の主に頭を下げる。
 「なぁに。いいって事よ。だがよ、嬢ちゃん。本当に大丈夫なのかい?多分、“アイツ”嬢ちゃんの手には余るぜ。下手うつと・・・」
 死ぬぜ、と凄んでみせる。しかし、ウィンはカラカラと笑うとこう切り替えした。
 「大丈夫、やってみりゃあ、何とかなるもんだよ。それに、行き先で死ぬかもしれないのは、おじちゃんも同じでしょ。」
 それを聞いた男はゲラゲラと笑い、「違いねぇ」とそう言った。
 「それじゃ。」
 そう言ってウィンが拳を出す。
 「おぅ。」それに応える様に、男も拳を出す。
 「「御武運を。」」
 そう言って、二人は拳を打ち合わせた。

                     ―2―
 
 『さて、ウィン。これからどうするの?』
 物資調達員を見送った後、プチリュウがそうウィンに問いかける。 
 「う〜ん、そうだね。取り合えずは・・・」
 『取り合えずは・・・?』
 「お昼にしよう!!」
 そう言うとウィンは適当な岩に腰掛けると、どこから出したのか大きなバスケットを膝の上に乗せ、その中からこれまた大きなサンドイッチを取り出して齧り付いた(ちなみに、プチリュウはずっこけてそこらの砂場に突っ込んでいる)。
 『ちょっと、ウィン!!少しは真面目にムゴマゴムゴ・・・・・・』
 「大丈夫だって。ぷっちん。」
 プチリュウの口にたまごサンドを押し込みながら、ウィンは笑う。
 「ここはね、植物が少ないから必然的に動物も少ないの。だから・・・」
 ―その時― 

 ドウンッ

 何処か遠くで、砂が爆ぜる音がした。

 『今の音・・・ウィムグガゴ!!?』

 目を白黒させてたまごサンドを飲み込んだプチリュウの口に、今度はハムサンドを詰め込むと、自分はピーナツバターサンドなど齧りながら、あくまでのんびりした口調で続ける。
 「ここに住む肉食のモンスターは、何時でも何処でも、獲物を見つけられる様に五感が物凄く鋭く出来てるんだって。」

 ドウンッ

 また、音。
 今度は、少し近い。

 「だからね・・・」
 ウィンがサンドイッチの最後の一片を口に放り込んだその瞬間―

 ドォンッ

 ウィンの背後で砂が大きく弾ける。
 巻き上がる砂ぼこりの中から現れたのは、ウィンの身体を丸々収めそうな程に巨大な「顎(あぎと)」。それが猛スピードで閉まり、ウィンの座っていた岩とバスケットを粉々に粉砕する。
 しかし、そこにはもう、ウィンの姿はない。彼女の身体は木の葉の様に風に舞い、砕けた岩から十数メートル離れた場所にフワリと着地した。 
 「こっちから行かなくても、待ってれば向こうから来てくれるんだよ。」
 胸に抱いたプチリュウにそう語りかけるが、彼の意識はもうそこにはない。

 シュウルルルル

 彼が凝視する先の砂ぼこりの中から響くのは、低く響く唸り声。
 そして、声の主がズシリと重い足音を響かせて、その姿を現す。
 ―それは、巨大な羽と長い首を持ち、体長5メートルほどの身体を砂色の鱗に包んだドラゴンだった。
しかし、奇異なのはその胴体部。そこにはもう一対の眼球が並び、己が身体を二分するかの様な巨大な口がギリギリと鋭い歯牙を軋ませていた。
  『で・・・出た・・・。』
  「狙いはバッチリ。初めまして。「魔頭を持つ邪竜」くん♪」
 そう言って、口をパクパクさせているプチリュウを宙に放つと、ウィンは小さく呟く様に呪文を唱える。すると虚空から一本の杖が現れ、ウィンの手に収まった。 
 「さーて、折角とったカロリー。あんまり無駄遣いしたくないんだよね。手早く終わらせてもらうよ。」
 そんな彼女の言葉を聴いているのかいないのか、魔頭を持つ邪竜はゆっくりとその身体の大顎(おおあぎと)を開く。
 濁った緑色の唾液が滴り、ジュッと焼け付く様な音を立てて地面に落ちる。
 そして―

 「ヴシャアァアアアアアアッ!!!」

 軽い口調とは裏腹に、緊張で強張った顔で杖を構えるウィンに向かって、死の顎(あぎと)が雄叫びを上げて襲いかかった。

                                              続く

(※1)この世界はお世辞にも平安な世界とは言えない。小規模にしろ大規模にしろ必ずどこかで争いが起こっている。
(※2)基本的にドラゴンや動物型のモンスターとの会話は出来ない。しかし、霊使いは契約したモンスターとなら、その種類に関係なく、念話によって会話が出来る。
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