火曜日、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日。
地霊使い、アウスの出番となっています。ですが・・・はい、全国のアウススキーの皆様。本作品に登場するアウスは、貴方が妄想するアウスとは確実に、そして壮絶に違うと思われます(一部違和感ない方もいらっしゃいますが)。危険を感じた方はすぐ逃げてください。さらに読んでいる間に悪寒、動悸、発汗、吐き気等の症状が現れた場合も、即座に退避してください。読む方は、以上の事を”ようく”承知した上でお読みください(このくらい言っときゃいいだろ)。
それでは、詳しく知りたい方はお約束通り、リンクのWikiへ。
というわけでコメントレス。
今回も読ませていただきました。
今回は今までと違い生き物が関連しているみたいで少し新鮮です。
毎度ありがとうございますm- -m
少し文体も変わった気がしました。
あれ?そうですか?あんまり意識してないんですが・・・。
配信のことですが、あまり無理をしないでがんばってください。
ありがとうございます。マイペースでやりますので、どうぞ御心配なく。
遊戯王カード 【 ジャイアント・オーク 】 EE1-JP067-N 《エキスパートエディション1》 新品価格 |
―6―
「ぶぅふるるるぅ・・・」
森の奥から姿を現した巨人は、呼気とも唸り声とも知れない音を発しながら一歩、また一歩とアウスの方へと近づいてくる。
その目は獲物を前にした貪欲な光に彩られ、その口からはだらだらと大量の唾液を垂れ流していた。
『じゃ・・・「ジャイアント・オーク」や!!』
目の前に迫る巨人を目にしたデーモン・ビーバーが焦った様にそう呟いた。
―ジャイアント・オーク―
深い森に生息する悪魔族の一種で、知能が低い代わりに巨大な体躯と怪力を誇る、凶暴な肉食種である。
『ま、主(マスター)あかんで!!コイツ、完全にワイらの事昼飯やと思っとる!!』
焦るデーモン・ビーバー。しかし、当のアウスは怯える態もなく、涼しい顔で目の前の怪物を見つめている。
「・・・丁度いいや。」
『は?』
アウスが杖を取り出すのを見て、デーモン・ビーバーは一瞬ぽかんとする。
「デヴィ、彼に用心棒(ガードマン)をしてもらおう。」
『は?何言って・・・って、まさか、“あれ”をする気でっか!?』
「そうだけど?」
『あきまへんって!!“あれ”は身体に悪・・・アヒャアッ!!』
慌てて身を逸らすデーモン・ビーバー。その横を、太い棍棒が唸りを上げて通り過ぎる。
軽くステップを踏んで距離をとったアウスが、全身を総毛立ててビビッている相方に声を投げる。
「ほらほら、早くしないと、ボクと君、まとめて彼のランチだよ?」
『あー、もう!!分かりましたわい!!』
半ばやけっぱちでそう叫ぶと、デーモン・ビーバーは翼を開いてポーンとジャイアント・オークの頭上を飛び越える。
そしてそのままアウスの前へ舞い降りると、ジャイアント・オークに向かって向き直る。
「ぐふぅうううっ!!」
獲物を手にし損ねた怒りに鼻息を荒げながら、ジャイアント・オークは再び一人と一匹に向かって突進する。
『うひゃあぁああ!!主(マスター)、来おったでぇええ!!』
「大丈夫。彼の足なら、5秒余裕があるよ。」
いつもの調子を崩す事もなくそう答えると、アウスは杖を構え、目を閉じた。
「魔性の誘惑、魔王の洗礼。我が御せし魔の御名よ。奈落に誘う蔓(かずら)と生りて、彼なる者の御魂を絡めよ!!」
朗々と、しかし素早く唱えられる呪文。
それと同時にデーモン・ビーバーの身体から黒い陽炎の様なものが湧き上がり、生き物の様に蠢き始める。
アウス達を射程に納めたジャイアント・オークが棍棒を振り上げた瞬間―
「堕落(フォーリン・ダウン)!!」
それが振り下ろされるよりも早く、アウスの口が呪文を結び上げる。
途端、デーモン・ビーバーの身体から立ち昇っていた黒い陽炎が、まるで蛇の様にジャイアント・オークに襲い掛かった。
「ヴフゥアァアアアッ!!」
漆黒の蛇に巻きつかれ、苦悶の声を上げるジャイアント・オーク。
自分の頭を押さえながら、何かに抵抗する様に棍棒を闇雲に振り回す。しかし、その抵抗もほんの数分。振り回す棍棒はだんだんと勢いを失い、やがて脱力した様にがっくりと膝を落としてしまう。
その様は、まるで魂が抜けたかの様だ。
『・・・主(マスター)、嵌りましたで。』
一拍離れた場所で様子を見ていたデーモン・ビーバーが言う。
「みたいだね。」
そんな言葉と共に、アウスはスタスタとジャイアント・オークに近づいていく。
呆けた様に空を仰いでいたジャイアント・オークが、ゆっくりと首を傾げてアウスを見る。
「おいで。」
そう告げられると、ジャイアント・オークはその巨体をゆっくりと屈め―
アウスの靴へと口付けをした。
「良い子だね。」
妖しく微笑みながら、アウスはジャイアント・オークの頭を撫でた。
―7―
―装備魔法(クロス・スペル)・「堕落(フォーリン・ダウン)」―
装備させた相手の自意識を奪い、意のままに操る洗脳系の魔法である。
禁呪とされている「心変わり(マインド・チェンジ)」や「強奪(ロベリー)」、「洗脳(ブレイン・コントロール)」と同等の効果を持つ高位魔法だが、発動に「デーモン」の名を冠する“存在”を媒体にしなければならないという制約がある上、ちょっとしたリスクも存在するため、使用する者は少ない。
もっとも、「デーモン」という邪悪な存在と関係を持つ事自体が忌み事とされる風潮があるのも、この魔法が浸透しない理由でもあるのだが。
『なぁ、主(マスター)。たまに思うんやけど・・・』
自分達の後を守るようについてくるジャイアント・オークを気味悪そうに見ながら、デーモン・ビーバーがアウスに問う。
「何だい?」
『自分、「堕落」(これ)のためだけに契約された訳じゃあらへんよな・・・?』
「あはは、そんな訳ないだろ?愛してるよ。デヴィ。」
『はぁ・・・(ほんまかなぁ・・・?)』
いつもの事とは言え、心根が読めない主である。
デーモン・ビーバーがこの世に生まれて幾度目かも知れない溜息をついた時、目の前で不意にアウスの身体がグラリと傾いだ。
『うわっとと!!』
慌ててそれを支えるデーモン・ビーバー。
「あはは・・・ごめん・・・。」
『言わんこっちゃない!!だから「堕落」(あれ)はあかん言うとるんや!!』
いささか顔色の悪くなったアウスに向かって、デーモン・ビーバーが怒鳴る。
これが、「堕落」が一般の術師達の間で敬遠されるもう一つの理由。
「堕落」はその効果が発動している間、絶える事無く術者の精気を消費し続けるのである。
『ほれ、しっかりしいな。もう!!こんな体たらくでどうやってドラゴンなんぞ相手しよるんでっか!?』
「大丈夫。ちゃんと手は考えてるから。」
体勢を立て直しながら、アウスはそう言って微笑む。
この主がそう言うのなら、実際そうなのだろう。
その点においては、絶対的な信頼を持っている。なら、今はただ、主の身体にだけ配慮していればいい。
デーモン・ビーバーは黙ってふらつく主の横へと寄り添った。
実際、ジャイアント・オークのガードは非常に役に立った。その後の数時間の道程、どんなモンスターもアウス達の前に立ちはだかる事はなかった。
そして―
『おお、こりゃまた、大きな樹でんなぁ。』
「ああ、これがこの古の森の中心部、「世界樹」さ。」
そう言いながら、アウスは世界樹の幹に持たれる様にして座り込む。
「はぁ、くたびれた。」
その有様に、デーモン・ビーバーも流石に心配になってくる。
「ホンマに大丈夫なんでっか?まだ肝心のドラゴンのドの字も見つかってないんでっせ。」
しかし、アウスは微笑むと黙って目の前の茂みを指差す。
『あん?何でっか?』
見てみると、そこの下草が薙ぎ倒されて一筋の道の様になっている。
『・・・何や、これ?』
注意深く見てみると、その道の所々に光るものがある。拾ってみるとそれは・・・
『鱗や・・・!!』
「ほら。」
アウスが、荷物の中から引っ張り出した本を投げてくる。
急いで「地を這うドラゴン」のページを開く。そこに載っていた鱗の標本の写真と手の中の鱗を見比べてみると―
『――っ!!』
目を丸くして自分を見るデーモン・ビーバーに、アウスはニッとVサインをした。
「別に闇雲に歩いて来た訳じゃないよ。」
水筒の水を飲みながら、アウスは話す。
「古の森(ここ)に住んでる地属性モンスター達はね、多かれ少なかれ、この地に流れる「ガイア・パワー」を糧にしてる。そして、その「ガイア・パワー」が一番集約されているのがここ。」
そう言って、世界樹の根元をトントンと指でつつく。
「「地を這うドラゴン」も地属性である以上、絶対ここに来てると踏んでたんだけど、ビンゴだったね。」
『はぁー、流石ですわ。』
心底感心したという態で、デーモン・ビーバーが頷く。
「感心する様な事じゃないよ。大体、このくらいの事は前にここに来てた研究者の皆さんも気付いてたと思うよ?」
『へ?それじゃあ・・・』
「道を見つけただけじゃあ、そうそう姿は拝ませてくれないって事さ。」
言いながら、アウスはよっと立ち上がる。その足取りはさっきまでと違ってしっかりとしており、顔にも大分血の気が戻ってきていた。
「ん、流石は世界屈指のパワースポット。消費分は、取り戻せたかな。」
そう言って右腕をグルグルと回す。
(・・・計算の内ですかい・・・。)
いい加減、感心するのを通り越して呆れてしまう。
『せやけど、それならどうしますのや?また奴さんがここに来るまで、張るんでっか?』
そんな相方の質問に、アウスは笑って答える。
「君は実に馬鹿だなぁ。そんな事してたら、幾ら時間があっても足りないだろう?」
そして、また荷物の中をガサゴソと弄る。
取り出されたものを見て、デーモン・ビーバーは首を傾げた。
「は?昼飯で・・・っか・・・?」
そこまで言って、デーモン・ビーバーは凍りついた。
・・・アウスが、微笑んでいた。
その微笑に、デーモン・ビーバーの顔からはみるみる血の気が引いていく。
「どうしたんだい?顔色が悪いよ?疲れた?だったら君もここで「ガイア・パワー」を浴びたらどうだい?」
そう。アウスは微笑んでいたのだ。
「君にはまだ、やって欲しい事があるから・・・。」
あの、小悪魔の微笑みで・・・。
続く
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