水曜日、学校の怪談の日。
学怪が終わった直後に書いた話で、学怪の最終話をしってる前提で書いてますので、知らない方には分かりにくい展開だと思うのでご承知ください。
よく知りたいと思う方は例の如くリンクの方へ。
それではコメント返し
既存のカード名の使い方が絶妙。設定の作り方も違和感が無いし、ストーリーの邪魔をしてない。(ような気がする。)ちゃんと主人公が活躍してるのもイイ。
わーい、誉められた♪
『デーモン』のアドバンテージは大きいか……
まぁ、実際にやろうとすると恐らく、というか確実にデーモン・ビーバーが生き残ってくれませんが・・・
今まで、アウスは主人公っぽくないな、と思ってたけど、小説という媒体だと知的でズル賢いキャラクターがすごく活きてくると、あらためて実感する。
ですよねー。小生もこんなにアウスがはまるとは思っていませんでした。
いや、書くのが楽しくて・・・はっ、ひょっとしてこれは恋・・・?
あらゆることを想定し、即座に対応するアウスのポテンシャルは想像以上に高い。でも、ジャイアント・オークとしもべ契約するのはイヤなようです。
あ、これは属性が違ううえにATKに差があり過ぎるからです。アウスがジャイアント・オークを正式にしもべにしようとしたら、何らかの手段で彼の属性を変えた上、さらに何らかの手段で彼の高い攻撃力を無力化する必要があります。そんな事は面倒くさいので一番手っ取り早い手段を選んだわけです。まぁ、オークさんが趣味じゃないのもありますが(笑)
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その7・マヨイガ
淡い光に満ちたその道は、どこまでも真っ直ぐに伸びていた。
その中を、わたしと敬一郎はしっかりと手を握り合いながら進んだ。
どこまでも、どこまでも。
そうやって、何時間進んだだろう。
その終りは、不意にやってきた。
スポン!!
本当にそんな擬音が似合う様に、わたし達は道を抜けた。
「きゃ・・・!?」
「うわ・・・!?」
キジムナーの火の優しい光に慣れた目を、急に差し込んだ強い光に射されてわたし達は思わず目を閉じた。
その光を手で遮りながら、涙の滲んだ目で見上げると、そこにはさんさんと輝く太陽が浮かんでいた。
「お日様だ・・・!!」
「あったかーい!!」
懐かしくすら感じるその温もりに、わたしと敬一郎は歓声を上げた。
光に目が慣れた頃合に、わたしは改めてその場所を見渡してみた
そこは周囲の木々が途切れ、森の中にぽっかりと空いた広場のようになっていた。
そして、その広場の真ん中に、“それ”はあった。
「お姉ちゃん・・・。」
敬一郎が、わたしの袖を引く。
わたしは頷いて、言った。
「家だ・・・!!」
そう、その広場の真ん中には一軒の民家が立っていた。
『其が森の奥に、一棟の古家があります。現世への道を望むなら、己が足で森を歩き、其を見つけなされよ。さすれば全てはおのずと、あるべき型へと戻りましょう・・・。』
澎侯の言葉が思い出される。
この家が、彼が言っていた「古家」なのだろうか。
「敬一郎・・・。」
「うん・・・!!」
わたし達は意を決して、足を踏み出した。
「うわ・・・!!」
「立派な家・・・!!」
件の家の近くまで来たわたし達は、その家の大きさに先ず驚いた。
家の造りこそ古風だけど、それを差し引いてもその家はりっぱだった。
例えて言えば、時代劇なんかに出てくる庄屋さんとかそういう昔のお金持ちの家。そんな感じだった。
家の前には、これまた広い庭が広がっている。
綺麗に刈り込まれた庭木の間を、鶏が走り回っている。広い畑には大根や蕪、里芋といった作物が育ち、大きな池には色とりどりの錦鯉が泳いでいる。奥の方には畜舎もあるのだろうか。牛や馬の鳴き声が聞こえていた。
そんなものを見ながら、わたし達は家の玄関に立った。
戸に手をかけると、なんの抵抗もなくカララ、と開く。
「あ、あのー、ごめんくださーい。」
玄関から声をかけてみるけど、返事はない。
ただ長い廊下に、わたしの声が木霊して消えていった。
「誰もいないのかな?」
敬一郎が言う。
「うーん。家の奥にいて聞こえないのかも・・・。」
ここでこうしていても仕方ない。わたし達はとりあえず上がってみる事にした。
「お邪魔しまーす・・・。」
やっぱり、返事はない。
廊下に上がると、ギシリと軋む音がやけに大きく響いた。
一番手前にあった部屋の襖を開けてみる。
「あれ?」
そこは客間のようだった。立派な掛け軸の飾られた床の間。畳敷きの部屋の真ん中に添えられた卓袱台の上には、お茶菓子の入った器と二つの湯飲みが置いてあった。
湯飲みからはまだ、湯気が立っている。
「やっぱり、誰かいるのかな?」
次の部屋を開けてみる。
そこには碁盤が置いてあり、盤の上はいかにも熱戦中といった態で白黒の碁石が並んでいた。
でも、肝心の打ち手の姿はない。
次の部屋。
整然と並んだお膳の列。その上には美味しそうな食事の用意。湯気を立てる真っ白なご飯とお味噌汁。黄色い沢庵に、綺麗に焼き目の付いた焼き魚。
でも、それを食べる人はいない。
わたし達はだんだん、不安になってきた。
それを振り払う様に、わたしは次々と部屋の襖を開けて行った。
いい具合にお湯の沸いたお風呂があった。
日に干されてフカフカになった布団が敷かれていた。
半開きになった本が置かれた書斎があった。
だけど、そこに在るべき人の姿がない。
そこに感じるべきの生活感がない。
人の生活の“形”だけを写し取った場。
ここは、そういう場所なのだ。
「こんな所で、何をどうしろって言うの・・・?」
わたし達が途方に暮れかけたその時―
スタ―――ンッ
静寂の中に鋭い音が響いた。
驚いて振り返ると、わたし達の後ろの襖が開いていた。
「え・・・?」
「な、何・・・?」
わたし達が恐る恐るその部屋を覗き込むと、その次の襖がまたスタ―――ンッと一人でに開いた。するとまた次の襖が、それが開くとまた次が。
その様はまるで・・・
「・・・来いって言ってるの・・・?」
わたしと敬一郎はしばし見つめあい、頷き合う。
そしてわたし達は襖が導く奥の間へと、足を踏み出した。
続く