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2012年02月29日

絆を紡ぐ想い・澎侯の霊樹とマヨイガの森(4)(アニメ学校の怪談・二次創作作品)

 





水曜日、学校の怪談の日。
 学怪が終わった直後に書いた話で、学怪の最終話をしってる前提で書いてますので、知らない方には分かりにくい展開だと思うのでご承知ください。
 よく知りたいと思う方は例の如くリンクの方へ。

 それではコメント返し

 
 暴君とまでうたわれた三ツ首龍も今や平和のモニュメントか。これは作者の、早く禁止になればいいのに、という思いが込められているに違いない。
 
 あ、いや。今はゲーム自体をやってないんでトリシューラ本人には恨みはないです。ただ、効果を見た時、こりゃ遅かれ早かれ禁止だな、とは思いましたけど(笑)
 個人的には裁きの龍の方が嫌いです。こいつにはDSのゲームでライトロードデッキでフルボッコされた経験があるので。っていうか、裁きの龍(こいつ)が制限解除って馬鹿なの?死ぬの?

 結局エリアがやった事って、ボタンを押した事だけだと思う。
 
 ・・・(読み返している)・・・あ、ホントだ。


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                        その4・古椿

 ― 獣がいる。その形は羊の様で人の顔。脇の下に目がついている。虎の歯と人の爪を持ち、その声は赤子の様。名を抱鴞(ホウキョウ)。これは人を食う。―
                                                      (山海経より)

 「敬一郎!!」
 わたしは咄嗟に敬一郎の腕を引いた。

 ビリィッ

 「オギャアアアアアッ!!」
 布が引き裂かれる音と、怪物の叫び声が交差する。
 怪物の爪は僅かに敬一郎の身体をかすめ、服の胸部分を引き裂くに止まっていた。
 そして、その場所は敬一郎が澎侯からもらった菖蒲の護符をしまっていた場所。それに触れた怪物の爪と指は赤く焼け爛れていた。
 けれど、その代償として敬一郎の護符は怪物の爪にかかり、バラバラに散ってしまっていた。
 このままでは、敬一郎はお化け達の目を誤魔化す事が出来ない。
 わたしは胸元から自分の護符を取り出すと、それを敬一郎の服の中に突っ込んだ。
 「お姉ちゃん!?」
 「敬一郎、アンタは逃げなさい!!いいわね!?」
 そう言うとわたしは、今来た道を逆方向に向かって走り始めた。後ろで敬一郎が何やら叫ぶ声が聞こえてきたけれど、構っている暇はなかった。なぜなら、あの怪物が怒りに歪んだ顔でわたしの事を追いかけ始めていたのだから。
 わたしの、一世一代の大鬼ごっこの始まりだ。
 幸い、木々が鬱蒼と茂った山道。通り道の悪さはお互い様。むしろ、身体の小さなわたしの方に分がある・・・と思ったわたしが甘かった。
 後ろを振り返ると、怪物は道々の木々など意にも介さず猛スピードで突き進んできていた。
 立ちはだかる木々は爪の一振りで幹を抉り倒され、小さな茂みはその体当たりだけでバラバラに吹き飛んでしまう。
 「じょ、冗談でしょ!?」
 その様に、わたしは心底ぞっとした。あんな馬鹿力に嬲られたら、わたしなんてものの数秒でただの肉の塊に変えられてしまうだろう。
 怪物は瞬く間に距離を縮めてくる。
 血生臭い息が首筋にかかる。
 必死に走る。けど、もう足が鉛の様に重い。心臓が早鐘の様に波打って酸素が頭に回らない。
 もう駄目だ。わたしが覚悟したその瞬間―
 その声が聞こえた。
 〔― 軸をずらせ!!―〕
 「え、ええ?」
 〔ぐずってんじゃねえ!!いいから、今の立ち位置から軸をずらせ!!右に5歩だ!!〕
 訳が分からず、それでも言われるままに、わたしは走る進路を右にずらした。
 途端、わたしを追う怪物の足が止まる。
 「え?」
 思わずわたしも立ち止まる。見てみると怪物はわたしを見失ったかの様に、キョロキョロとしている。わたしは自分の“真正面”にいるというのに。
 〔“真正面”だからだよ。〕
 事態を把握しかねているわたしに向かって、“声”が言う。
 〔そいつは“抱鴞(ホウキョウ)”だ。目が脇の下についてるのを見ただろう?だからそいつは自分の真横か斜め前しか見えねぇ。死角なんだよ、“真正面”は。〕
 「あ・・・頭わる・・・。」
 呆れるわたし。しかし、そんなわたしに向かって声が激を飛ばす。
 [何ぼさっとつっ立ってやがる!!今の内にいくらかでも逃げろ!!]
 「で、でも逃げるたって、何処に・・・」
 [そこから南にしばらく行ったところに、一本の古椿がある。何とかそこまでもたせろ!!]
 「古椿?何でそんなとこ・・・」
 [いいから行け!!奴が気付くぞ!!]
 言われて振り返ると、怪物・・・抱鴞がその目をこちらに向けようとする直前だった。
 「!!」
 わたしが弾かれた様に走り出すのと、抱鴞がわたしを視界に捉えるのとはほぼ同時だった。
 再び始まる、命がけの鬼ごっこ。
 だけど、今度は一人っきりだったさっきまでとは違う。
 [今度は軸を左に三歩ずらせ!!方向はそのまま真っ直ぐだ!!]
 呼びかける声に従い、抱鴞の死角に入りながらわたしは必死に走った。
 十分・・・三十分・・・。
 まだ古椿の姿は見えない。
 また息が切れてきた。足が重くなり、何度も攣りそうになる。
 それでも頑張れたのは、悪態をつきながらも励ましてくれる“あいつ”の声があったから。
 だけど・・・。
 [そこ・・からひ・・・へ四、歩・・・ほう・・こ・・・は・・・]
 いつの間にか、“あいつ”の声が途切れ途切れになってきた。今ではまるで、残り少ない力を振り絞る様な感じだ。
 それに対して、抱鴞の方は慣れてきたのか、わたしを見つける速度が上がってきた。再びわたし達の距離が縮み始める。
 「どうしたの!?声が・・・」
 [うる・・せ・・・おれ・・・よりてめ・・・もう・・・少・・し・・・]
 「天邪鬼!!」
 堪らずわたしはその名を呼んだ。
 [・・・・・・。]
 だけど、もう声が返ってくる事はなかった。
 もう一度呼びかけようとしたその瞬間―

 ドゥッ

 「―――っ!!」
 物凄い衝撃が背中を遅い、わたしの身体は木の葉の様に宙を舞った。

 ドガァッ

 そのまま、近くにあった木の幹に叩きつけられる。一瞬呼吸が止まり、口の中が血の味で満たされる。
 「はっ、はぁっ!!」
 詰まった息を血とともに吐き出し、わたしはその場に転がった。
 霞む視界に、わたしを突き飛ばした“そいつ”の姿が見える。
 「ギャッギャッギャッギャッ」
 ・・・笑っていた。
 目の無い顔を、残酷な笑みに歪ませて、“そいつ”はゆっくりと近づいてくる。
 笑う口元から覗く牙が、カチカチと楽しげに鳴っている。地面に咲いた花を、鋭い爪の生えた足が踏みにじる。
 一歩。また一歩。近づいてくる。ゆっくりと、だけど確実に。“死”が、近づいてくる。
 「い・・・やだ・・・!!」
 わたしは芋虫の様に這いずりながら、少しでも“そいつ”から離れようとする。
 「ギャッギャッギャッギャッ」
 そんなわたしを嘲る様に、“そいつ”は笑いながらゆっくりと近づいてくる。
 「たす・・けて・・・。パパ・・ママ・・・ハジ、メ・・・。」
 背中が木の幹に当る。もう、逃げ場はない。
 抱鴞が、その身をググッと屈め、飛び掛る姿勢をとる。
 もう駄目だ。
 わたしが思わず目をつぶったその時―

 ポタッ

 わたしと抱鴞の間に、何かが落ちた。
 見れば、それは一輪の椿の花。
 思わず見上げた目に飛び込んできたのは、溢れんばかりに咲き誇る椿の花。
 わたしが叩きつけられた木。それが天邪鬼が言っていた古椿の木だと悟るのに、時間はかからなかった。
 わたしは今の自分が置かれた事態も忘れ、その可憐な光景に見ほれてしまう。
 ―と、その時―

 「下がれ。」

 不意に響いた声に、わたしは思わず視線を戻した。
 そこは、たった今、一輪の椿の花が落ちた筈の場所。
 そこに、いつの間にか一人の少女が立っていた。
 地面に着かんばかりに伸ばされた、長く艶やかな黒髪。その身を包む、時代劇に出てくるお姫様の様な着物の柄は椿。向こうを向いた顔は見えないけれど、その立ち振る舞いはこの場に不釣合いな程の高貴さを感じさせていた。
 「無礼者。」
 凛とした声が、再び場に響く。
 彼女の前にいるのは、折角の獲物にお預けを食わされた抱鴞。
 怒りに唸り声を上げるそいつ。だけど件の少女は怯える素振りすら見せない。
 「ここを我らの“筋”と知っての狼藉か。下賎な抱鴞めが。疾く、去ぬがよい。」
 静かだけど、怒りの篭った声。
 そう、彼女は怒っていた。
 彼女が見ていたのは、抱鴞がわたしを追ってきた道。
 幹を抉られた木。へし折られた小木。踏みにじられた花や草。
 それらを哀れみ、悲しみ、そしてそれを為した抱鴞に対して、彼女はただ静かに怒っていた。
 抱鴞と少女。両者はしばし睨み合う。息の詰まる様な拮抗。そして―
 「今一度言う。去れ。さすれば、この度ばかりは見逃してやらぬ事もない。」
 最後通告。それに対する抱鴞の答えは、

 「オギャアアアアアッ!!」

 心の底から怖気の走る様な咆哮。そして跳躍。牙をむいて少女に跳びかかる。
 だけど―
 「浅ましや。化生。」
 その咆哮以上に、底冷えのする冷たい声。
 それとともに、少女の手がスルリと上がる。
 そして、その手を一閃。瞬間、パッと散る無数の花びら。

 「ギャアアアアアッ!!」

 それに包まれた抱鴞が、苦悶の声を上げる。
 わたしは目を疑った。
 舞い散る花びらの中で、抱鴞の姿が変わっていく。
 牙の生えた口は大きな洞に、剛毛の生えた身体は萎びた幹に、鋭い爪の生えた足は細枯れした枝に。
 気が付いた時には、抱鴞の姿は一本の立ち枯れた木へと変わっていた。
 「・・・哀れな事。」
 少女は一言そう言うと、くるりと身を翻した。長い髪がフワリと舞い、甘い椿の香りが漂う。
 こちらを向いたその顔を、わたしは初めて見た。
 綺麗な、ゾッとするほど綺麗な顔だった。
 少女が近づいてくる。
 白い手が、わたしに向かって伸びてくる。
 その手が額に触れる。
 そして、わたしの意識はそこで途切れた。
                                                         
                                                        続く
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