水曜日、隔週連載学校の怪談SSの日です。
学怪の最終話をしってる前提で書いてますので、知らない方には分かりにくい展開だと思うのでご承知ください。
よく知りたいと思う方は例の如くリンクの方へ。
それではコメントレス
ここで、まさかのリチュア登場!?ライナは友達の遠縁であるエリアルと戦うことになってしまうのか!?リチュアの目的とは何なのか!ライナはこのピンチを切り抜けられるのか!ひらがなだけの言葉遣いは何だったのか!いかにもヤラレ役な敵を相手にどんなストーリーを展開させるのか!ギャグ、シリアス、それともシリアル!?次回、『城之内死す!?』犯人はお前だ!!!
全部ひっくるめて、待て、次号!!あ、言葉づかいはですね、マジモードになると普通になるんです(あれでマジなんです。いやほんとに。)。
えーと…まあ、そんなことはいいとして、ちょっと整理してみよう。 エリアとエリアルは同じ一族。/その一族は霊使いでもリチュアでも無いし、氷結界でもない。
はい。シャドウやマーカー達なんかは氷結界出身ですけど、エリアルはスカウトで入った中途採用です。いかんせん小数勢力なので常に人材不足に悩ませられています。公募も行っています。
興味がある方は履歴書持って行ってみましょう。資格・年齢は問いません。ただ、面接で不適格とみなされるとそのまま生贄に回されたりしますが。
そういえば、アイス・ブリザード・マスターとかブリザード・プリンセスってまだ出てないよね。
いつか使ってみたくはありますね。特にブリザード・プリンセスは可愛いし。
全く、エリアのお嬢気質には困ったものだ。自分をお姫様か何かと勘違いしてるんじゃない? ……まだ出てない水モンスターなんていくらでもいるけど。
そりゃまぁ、何てったって”ワールドイズマイン”ですしwww
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その12・想い出
「・・・・・・。」
気付けば、わたしは天邪鬼を抱いたまま一人床に座り込んでいた。
わたしの前にあるのは一抱え程の砂の山。ついさっきまで、澎侯だった砂の山だ。
腕の中の天邪鬼は、まだ昏々と眠っている。けど、さっきまでと違うのは、紙の様に軽かったその身体が、今はズシリとした重みを持っているという事。それは、確かな生命力を感じさせる重さ。命の重さだ。
その重みを感じながら、わたしはただ呆然と座り込んでいた。
そんなわたしを、敬一郎や椿さん、キジムナー達が見つめていた。
誰も何も言わない。ただ黙って、わたしと天邪鬼を見つめていた。
「・・・分かんない・・・。」
わたしはボソリと呟く。
「分かんないよ・・・。」
やっぱり誰も、何も言わない。
「分かんない・・・。何で、何でここまでするの!?わたしや天邪鬼(こいつ)が樹霊(あんた達)に・・・澎侯に何をしてあげたっていうの!?分かんない!!分かんないよ!!」
喚き散らすわたしに、ススっと近づいてくる者がいた。
見上げると、椿さんがわたしの前に立っていた。
「損得の話では、ないのですよ・・・。」
そう言って屈みこむと、椿さんは澎侯だった砂を一すくい、手にとった。
「お手を・・・。」
言われてわたしは、右手を出した。
そのわたしの手に、椿さんは手にした砂をそっと、静かに注いだ。
サラサラサラ・・・
涼やかな音とともに、わたしの手の中に砂が積まれていく。
それとともに、わたしの頭の中に何かの映像が浮かび始めた。
・・・気付くと、わたしの目の前には何処かの山中の光景が広がっていた。
何処だろう?それは知らないけれど、何処か懐かしさを覚える光景。
わたしの眼下には、森の中にポッカリと空いた広場の様な草原(くさはら)が広がっていた。
春なのだろうか?広場には色とりどりの花が咲き、穏やかな日差しが降り注いでいた。
キーンコーンカーンコーン
何処からとも無く聞こえる、聞き覚えのある音。
ああ、学校のチャイムだ。
見下ろせば、山の麓に学校らしき建物が見える。その建物に、わたしは覚えがあった。
(・・・あれって、旧校舎!?)
驚くわたしの耳に、ガヤガヤと賑やかな声が聞こえてきた。
視線を戻すと、下の広場に上ってくる、数人の子供達の姿が見えた。
学校の生徒達だろうか。草原(くさはら)にカバンを放り出すと思い思いに遊び始める。
野球の真似事を始める男の子達。女の子達は草花を摘み、それを編んで頭飾りや指輪を作っている。
穏やかで、優しい光景。
何かとても暖かいものが、わたしの胸を満たしていく。
この気持ちは、何だろう。パパやママ、敬一郎達家族に持つ想い。桃子ちゃんやレオ君達、友達に持つ想い。そしてわたしが“彼”に持っている、秘密の想い。
そのどれとも違う、だけどとてもとても、暖かい想い。
それを抱きながら眼下の子供達を見下ろすわたしの足元に、一人の女の子が近寄ってきた。
その娘はわたしの“幹”に手を添えると、こちらを見上げてニコリと微笑んだ。
「こんにちは。今日も、いい天気ね。」
その顔を見た瞬間、わたしの胸が跳ね上がる。
その娘の顔を、わたしは知っていた。誰よりも知っていた。だって、だってその娘は・・・。
「ママ!!」
思わず叫んだ瞬間、わたしの周りの光景がザァッと遠ざかった。
・・・気付くと、わたしの前には澎侯が座っていた。
白くて長い髪の間から、わたし達に、そして“あの子達”に向けていたそのままの、穏やかな微笑みを浮かべて。
そう。わたしにはもう分かっていた。今までわたしが見ていた光景は、澎侯自身が見ていた光景。あの時、わたしの胸を満たした暖かい気持ちは、澎侯が“あの子達”に抱いていた想い。
「澎侯・・・あなたは・・・」
澎侯が、ゆっくりと頷く。
と、その姿が淡い光に包まれる。その光の中で、澎侯がその姿を変えていく。白い髪は天を覆う沢山の枝に、黒い身体は太い幹に、その手足はガッシリと地を掴む根に。
気付けば、わたしの前には大きな大きな、楠木がそびえ立っていた。
「裏山の・・・大楠木!!」
そう。それは長い時をかけて学校の子供達を見守り、そして十数年もの間その内に天邪鬼を抱き続けた、裏山の守り神。
「そうか・・・。そうだったんだね・・・。」
全てを悟り、呟くわたしの前で、楠木が再び淡い光に包まれる。
ああ、そうか。もう、その時なのだ。わたしは楠木に近づくと、全ての想いを込めてその幹を抱き締めた。
(どうか良き時を・・・我が、子らよ・・・)
そんな声が、聞こえた様な気がした。
やがて大楠木の姿は光に溶け、天に向かって登って行った。
その行く先を、わたしはいつまでも見送っていた。いつまでもいつまでも、見つめていた。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
気付くと、わたしは元通り薄暗い部屋の中で、天邪鬼を抱いて座っていた。
わたしの目の前には、椿さんがいる。
「・・・お分かりに、なられましたか?」
そんな彼女の問いに、「うん」と頷くと、わたしは手の中の砂を胸の中へとかき抱いた。
続く