水曜日、学校の怪談の日。
学怪が終わった直後に書いた話で、学怪の最終話をしってる前提で書いてますので、知らない方には分かりにくい展開だと思うのでご承知ください。
よく知りたいと思う方は例の如くリンクの方へ。
それではコメント返し
とりあえず、好評価。そして…アウスのイメージは違和感ないぞ!?元々自分のアウスイメージは土斑猫さんの作品に影響を受け、最近できたものなのかもしれない。
・・・あれ?想定外だ。ってか、ひょっとして諸悪の根源って小生?
グレファーさんおつです。ダイ・グレファーにはもうまともな役は無いのか?(2次創作では基本、ロリコンor変態、でしたっけ?)
だってこの人、公式でも狙ってるとしか思えねーんだもんw
自分のアウスのイメージをまとめてみる。巨・乳 博識 慎重 成績だけなら優等生厨二病 根にもつタイプ 貸した金を倍にしてとりたてる ライナとつるんでダルクに女装を強いる などなど。あ、別に悪口じゃないですよ。
全力で同意する。特に一項目め。
新品価格 |
その5・キジムナー
・・・わたしは真っ暗闇の中にいた。
右も左も、上も下も分からない。そんな真っ暗闇の中だ。
『・・・馬鹿野郎が。』
暗闇の中で佇むわたしに、“そいつ”が吐き捨てる様に語りかけてくる。
『つまんねえ迷いなんぞに囚われて、“こんな”所にまで来やがって・・・。』
声の方を向く。だけど、闇に溶ける“そいつ”の姿は見る事が出来ない。
『いいか。ここは人間(てめぇら)が居れる場所じゃねぇ・・・。』
声をかけようとするけれど、口がパクパクと動くだけで声が出ない。
『“そいつら”の世話になって、とっとと帰りやがれ。』
声が遠くなっていく。わたしは思わずその声に向かって走り出す。
だけど、その声との距離は縮まらない。声はどんどん遠ざかって行く。
『分かったな・・・。馬鹿さつき・・・。』
待って!待って!!
わたしは声にならない声で、そいつの名前を呼んだ。
「天邪鬼!!」
「キキッ!!」
大声を出して起き上がったわたしに驚く様に、何かがわたしの周りから飛びずさって行った。
見ると、そいつらは敬一郎よりも小さい体格で、真っ赤な身体に朱い髪、木の枝の様に長い手を持っていた。
そんなやつらがたくさん集まって、わたしの事をじっと見ていた。
「な・・・何よ!?あんた達!!っ・・・痛っ」
思わず後ずさろうとしたわたしは、お腹に鈍い痛みを覚えて呻いた。
「マダ 動ク イケナイ」
そんなわたしの様子を遠巻きに見て、そいつらのうちの一匹が声をかけてきた。
「オ前 腹 怪我 シテタ」
一匹が話すと、その言葉を継ぐ様にして、他の連中も次々と次々と口を開く。
「薬 塗ッタ ケド マダ 直ッテナイ」
「ダカラ マダ 動ク イケナイ」
言われて触ってみると、確かにお腹の痛む箇所にネットリとした軟膏の様なものが塗ってあった。
手に付いたものを嗅いでみると、微かに青臭い臭いがした。
「ソレ 「ケンムン」ノ 膏薬」
「何デモ 治ル」
「トレタ 腕モ 付ク」
「破レタ 腹モ 付ク」
「ダカラ 今ハ 動ク イケナイ」
そいつらは、舌足らずの言葉で、わたしに必死に語りかけてくる。
その一生懸命さが、ゆっくりとわたしの警戒心を溶かしていった。
―いつしかわたしは彼らの言う通り、またその身を横たえていた。
「キキッ」
そんなわたしに、彼らはパサパサと木の葉をかけてゆく。
柔らかい布団をかけられた様な温もりが、身体を包む。
敷き詰められた木の葉の布団に包まれて、悶々としていると、不意に声をかけられた。
「―存外、聞き分けがよろしい様で、結構な事ですね。」
「―!!」
聞き覚えのある声に思わず身を起こそうとすると、穏やかな声音で制された。
「起きるには及びません。横になっていて、結構ですよ。」
いつの間にか、枕元にあの少女が座っていた。白い手がわたしの額に当てられる。
ヒヤッとする冷感。だけど氷の様な鋭い冷たさじゃない、優しい、柔らかい冷たさだ。
身体に篭っていた熱が、スゥッと消えていくようだった。
「あなた方の事は、澎侯の御方の方から聞いております。」
少女がわたしの額を優しく撫ぜる。
「難儀な事でしたね。人の身で隠れ里(ここ)に堕ちた上に抱鴞(あのような者)に絡まれるとは・・・。」
その声には、さっき抱鴞に対峙していた時の様な冷たさはなく、穏やかな優しさに満ちていた。
「今は心安らかにして・・・と言っても、この様な所ではそうもいかないでしょうが、とにかく休んでいてください。傷は、程なくケンムンの膏薬が治してくれましょう。」
彼女が立ち上がるのを見て、わたしは慌てて声を出した。
「待って!!待ってください!!ここにはまだ、わたしの他に・・・」
「存じておりますよ。そちらの方にも、もう手は回しております。どうぞ、ご安心を・・・。」
わたしの言葉を先取りしたかの様に、少女はそう言って微笑んだ。
少女が場を去った後、わたしの世話を焼いてくれたのは赤い顔の“彼ら”だった。
「キキッキィッ」
小鳥の様な声を出しながら、周りをヒョイヒョイと飛び回る彼らは、甘い木の実や椰子の器に入れた水を運んできてくれた(途中で生の魚の目玉を持って来られた時は困ったけど)。
「ねぇ、あなた達って何なの?何でわたしに親切にしてくれるの?」
水を受け取りながらそう訊くと、彼らは丸い目をクリクリさせて、こう答えてくれた。
「きじむなーハ きじむなー」
「きじむなー?」
「ソウ きじむなー」
「古イ がじゅまるノ きーぬしー」
キーヌシー・・・。以前レオ君に聞いた覚えがある。確か沖縄で“木の精霊”を意味する言葉だった筈だ。
「オ前ラノ 事 澎侯 カラ 言ワレテタ」
「良クシテ ヤル 様ニ 言ワレテタ」
「澎侯に?」
「ソウ 澎侯 コノ 森ノ きーぬしーノ 長」
「ダカラ きじむなー オ前ラノ 事 助ケル」
「コノ 森ノ きーぬしー 皆 オ前ラノ 事 助ケル」
彼らの喋り方は、たどたどしいけど一生懸命で、何の裏も思惑も感じさせなかった。
いつしかすっかり打ち解けたわたし達の話は、あの少女の事に及んでいた。
「あの娘も、あなた達と同じ、樹の精なの?」
「ソウ アレ 椿ノ オ嬢」
「椿のお嬢?」
「ソウ 古イ 椿ノ きーぬしー」
「コノ 森デ 澎侯ノ 次ニ 古イ キーヌシー」
「え?そんなに?女の子みたいに見えたけど・・・」
「ソレ 格好 ダケ」
「本当ハ スゴク 古イ」
「・・・っ、ふ、古いんだ。」
その言葉に、わたしは吹き出しそうになる。
「ソウ 古イ」
「デモ コレ きじむなー 言ッタノ 内緒」
「どうして?」
「オ嬢 怖イ」
「怒ルト 怖イ」
「森デ 一番 怖イ」
あ、駄目だ。
堪らず吹き出してしまった。
「ぷっ、ははは、そ、そっか、こ、怖いんだ!?あは、は!!」
「ソウ 怖イ」
「トッテモ 怖イ」
「あはは、そうか、じゃ、内緒だね。」
「ソウ 内緒」
「内緒 内緒」
あはは、キキキ、と笑うわたし達。
「―何が内緒なのですか。」
「―――!!」
「―――!!」
凍りつくわたし達。
キジムナー達が「キキキッ」っと言いながら逃げていく。
ああ、置いて行かないで。
この、裏切り者。
ギギギと首を軋ませながら振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべた少女が立っていた。
心なしか、少女の後ろに「ゴゴゴ・・・」という擬音が浮かんで見える。
ああ、パパ、敬一郎、先立つ不幸を許して。ママ、もうすぐわたしもそっちへ行きます。
続く