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2012年03月28日

絆を紡ぐ想い・澎侯の霊樹とマヨイガの森(8)(アニメ学校の怪談・二次創作作品)







 水曜日、学校の怪談の日。
 学怪が終わった直後に書いた話で、学怪の最終話をしってる前提で書いてますので、知らない方には分かりにくい展開だと思うのでご承知ください。
 よく知りたいと思う方は例の如くリンクの方へ。


 それではコメント返し

  このドラゴン、どれくらい生きてるか知らんがかなり経験値が高いと思われる。異種族の、しかもめったに出会わないはずの人間のオス・メスを一瞬で判断したのだから。もしかすると、この作者は自分とは異なる種族(たとえば各種爬虫類)の性別の見分けに長けている人なのかもしれない。

 そ、そこを突っ込むか・・・。迂闊だった・・・。
 ちなみに爬虫類の雌雄識別の他に、A〇B48よりもガラパゴスのイグアナの群れの方が個体識別しやすいと言ったら弟に「人間として終わってる」と言われました・・・。


 《モウヤンのカレー》
 デッキに入れているだけで一目おかれるという伝説のカード。入手困難な貴重なモノだぞ!実在するお店がネタ元であることが遊戯王カードWikiに書かれていることは一部ファンの間では有名。

 
 小生もWikiで知って驚愕した。



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                         その8・再会

 スタ―――ンッ
 スタ―――ンッ
 スタ―――ンッ
 わたし達の進む先で、次々と襖は開いていく。
 まるでわたし達を導く様に、急かす様に。
 次々と襖が開いていく。
 どこまでも。
 どこまでも。
 続く襖が開いていく。

 一体、どれほど進んだだろう。
 外から見た時、確かに大きな建物だとは思ったけど、ここまでの奥行きがあっただろうか。
 ひょっとしたら、この建物の中自体がもう一つの別の世界なのかもしれない。
 もう、最初に入った玄関の位置すら思い出せない。
 このまま、永遠にこの家の中を彷徨う事になるんじゃないだろうか。
 わたしがそんな不安を抱き始めたその時―
 スタ―――ンッ
 一際大きな音を立てて、襖が開き、大きな広間が現れた。
 その部屋にはもう、襖はなかった。
 それどころか、窓の様な明り取りすらない。
 暗く、静まり返った部屋。
 「何?この部屋・・・」
 わたし達は恐る恐る、足を踏み出す。
 足が畳を踏み締める、ミシリという音が暗闇に響いたその瞬間―
 サァ・・・
 闇が、薄まった。
 まるで月の光がさす様に、真っ暗だった部屋の中は周囲の様子が分かるくらいの明るさに変わっていた。
 でもその時、わたし達の心はもうそこにはなかった。

 ―それを見た瞬間、心臓が跳ね上がった。
 隣の敬一郎も同じなのだろう。
 目を大きく見開き、固まっている。
 しばしの間。
 そして次の瞬間、わたし達はそこに向かって走り出していた。

 ―それは、薄闇に浮かび上がる部屋の中心。何もないその部屋で唯一つ、ポツンと敷かれた座布団の上。
 その上に、“そいつ”はいた。
 座布団の上で丸まる、黒く小さな姿。
 それは、今わたし達の日常にある姿。
 だけど、今のわたし達がなくした姿。
 “そいつ”の元に駆け寄りながら、わたしは叫んだ。
 「天邪鬼!!」
 そいつの所までたどり着いたわたし達は、その身体を揺さぶりながら呼びかける。
 「天邪鬼!!天邪鬼ってば!!返事しなさいよ!!」
 「カーヤ、目覚ましてよ!!」
 だけど、その叫びかけに、そいつは身動ぎ一つしない。
 もう一度呼びかけようとしたその時、
 『無駄だねぇ・・・。』
 不意に響いた声が、わたし達の心臓を握りつぶした。

 「だ、誰!?」
 わたしは思わず、声のした方向に向かって叫んだ。
 そこは、さっきわたし達が入ってきた部屋の襖。いつの間にか閉まっていたそこには、当然の様に誰もいない。
 だけど、さっきまではなかった何かの気配が、確かにそこにある。
 「だ、誰なのよ!?出て来なさいよ!!」
 わたしはもう一度、そこに向かって叫んだ。
 途端、襖の表面がグニャリと歪む。
 そして―
 パチリ
 襖の真ん中に、“目”が開いた。
 「・・・へ・・・?」
 パチリ パチリ パチリ パチリ
 唖然とするわたし達の前で、“目”はどんどん増えていく。
 パチリ パチリ パチリ パチリ パチ パチ パチ パチパチパチパチパチ・・・
 「な・・・な・・・!?」
 声を失うわたし達。
 気が付けば、襖は無数の“目”で埋め尽くされていた。
 『・・・何を驚いてるんだい?』
 『出て来いと言ったのは、そっちだろう?』
 目がパチパチと瞬きをする度に、そこから声が発せられる。
 「な・・・何よ!?あんた達!!」
 『あんた達?』
 『あんた達ってのは、あたしらの事かねぇ。』
 『他に、誰もいないからねぇ。』
 沢山の目達はてんでにそう言うと、ケタケタと笑った。
 『あたしらは、このマヨイガに宿を借りてる「目々連」さ。』
 『あんたらの事は聞いてるよ。』
 『こんな所まで、妖(あやかし)を追いかけてくるなんて、物好きな事さね。』
 『全くだねぇ。』
 『人間なのにねぇ。』
 『人間のくせにねぇ。』
 そしてまたケタケタ。その小馬鹿にしたような笑い声を聞いているうちに、だんだん腹が立ってきた。
 「何よ!!何がそんなに可笑しいわけ!?」
 わたしが怒鳴ると、沢山の目が一斉に丸くなる。
 『おお、怖い。』
 『そんなに怒鳴らないでおくれよ。』
 途端に、声音が媚びる様に変わる。案外、気が弱いのかもしれない。
 『別に、馬鹿にしに出てきた訳じゃないよ。』
 『あんたたちに、教えてやろうと思ってね。』
 「教える?何を?」
 わたしの問いに、お互いに視線を合わせる様に、目達がグリグリと動く。何て言うか、器用だなぁ、とか考えていると、蠢く目の内の一つがわたしを見据え、切り出すように言ってきた。
 『折角ここまで来たってのに、悪いけどね・・・』
 そこで言葉を切って、瞬きを一つ。そして―
 『天邪鬼(そいつ)は、起きやしないよ。』
 その言葉に、わたしは目の前が真っ暗になった気がした。


                         その9・絶望

 「・・・どういう事?」
 『どうもこうも、言ったとおりさ。』
 わたしの問いに、目達は淡々と答える。
 『ちょっと、天邪鬼(そいつ)を持ってみなよ。』
 「・・・。」
 言われるまま、天邪鬼の身体を抱き上げる。
 ・・・軽かった。
 驚くくらいに。
 『今の天邪鬼(そいつ)は、“空っぽ”なんだよ。』
 「空っぽ・・・?」
 目が、頷くように瞬きをする。
 『“妖気”がね、ないんだよ。』
 「妖気が・・・ない?」
 また、瞬き。
 『そう。』
 『妖気ってのは、妖(あたしら)にとっちゃガソリンみたいなもんでさ。』
 『そいつがなくっちゃあ、動く事なんて出来ゃしない。』
 『まんま、抜け殻みたいなもんさ。』
 淡々と流れる目達の言葉に、身体の力が抜けていく。
 「なんで・・・そんな事に・・・?」
 かろうじて絞り出したわたしの問いに、目達が一斉に細まる。まるで、溜息でもつくようだ。
 『隠れ里(ここ)に来た時にはもう、大分くたびれてる様子だったよ。』
 『聞いた所じゃ、現世(むこう)で逢魔のヤツとやりあったそうじゃないか。無理もない事さね。』
 また、パシパシと瞬き。その様子は呆れている様でも、憂いているようでもあった。
 『それでもねぇ、まだ少しは残してたんだ。だったら、大事にしてりゃいいものを、何を願ったか知らないが、なけなしの“力”を使っちまったんだよ。約束が何とか言ってねぇ・・・。』
 それを聞いた敬一郎が、「え」、と声を上げた。
 「それって、僕との約束の事・・・?」
 震える声で呟く。わたしには、その小さな肩を抱きながら、目達に向かって叫んだ。
 「でも、さっき、わたし達の事助けてくれたのよ!?声だけだったけど、確かに天邪鬼(こいつ)だったわ!!なのに、なのに何で・・・」
 『それだよ。』
 「―!?」
 それまでと違う、冷淡な響きを持った声がわたしの叫びを遮った。
 『文字通り、最後の力ってヤツを振り絞ったのさ。その声は、ちゃんと最後までまともに聞こえたのかい?』
 確かに、あの時天邪鬼(こいつ)の声は途中で立ち消えてしまった。
 『本当のダメ押しさ。それでもう、すっからかんだよ。』
 「そんな・・そんな・・・」
 へたへたと崩れ落ちるわたし達。それでもわたしは、藁にでもすがる思いで目達に問いかける。
 「・・・戻らないの・・いつか元に・・元に戻る事はないの!?」
 『戻る?』
 訝しげに細まる目達に向かって、わたしは続ける。
 「わたし達は、わたし達人間は、疲れてもしばらく休めば元に戻るわ!!それなら、お化け(あなた)達も・・・天邪鬼(こいつ)も!!」
 わたしの問いに、目達はしばらく思案にふける様に視線を上に向けていたけれど、やがて呟く様にボソリといった。
 『そうだねぇ・・・。そんな事もあるかもしれないねぇ・・・?』
 その言葉が、わたし達の希望に火を灯す。わたしは息せき切って尋ねた。
 「いつ・・・!?どれくらい・・どれくらい待てばいいの!?」
 だけど―
 『―100年―』
 冷ややかな目達の言葉は、そんなわたし達の希望を、いともあっさりと突き崩した。
 「100・・・年・・・?そんな、に?」
 『これでも大分安く見積もったんだがねぇ・・・。』
 呆然とするわたし達に、目達はあくまで淡々と語りかける。
 『何せ、ホントの零からの出発だからねぇ・・・。短くて100年。下手すりゃ、このままずっと・・・』
 「そんな・・・。」
 がっくりと肩を落とすわたし達に、目達は哀れむような視線を向ける。
 『まぁ、世の中そんなもんさね・・・。』
 『あんた達もきっぱり諦めて、早い所現世(向こう)に帰る事だね。』
 そう言うと、沢山の目達がその眼差しを閉じ始める。
 閉じられた目から、そのまま襖に溶け込む様に消えていく。
 そして―
 『所詮、人間(あんたら)と妖(あたしら)が同じ時を生きるなんて、無理な事なんだからねぇ・・・。』
 最後にそう言い残し、目のお化け―目々連は薄闇の中へと消えていった。
 静寂が戻った部屋の中で、わたし達はただ立ち尽くすしかなかった。


                                                         続く
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