玉置浩二『JUNK LAND』十一曲目「金持ちさんちの貧乏人」です。
なにやら玉置さんのヨーデルが聴こえます。やあー、行くのか、久しぶりだなあ(ハッハッハ)というよくわからないやり取りが入ります。そしてワン、ツー(よし)、ワンツースリー(キュッ!)と玉置さんの掛け声で演奏が始まります。
(あーっあっ!緊張するなあ!)オーイエー!(いちにいさんし、にいにいさん)Yeah(さんにいさんしにいにいさん)いくぜー!
ピアノ、ギター、ベース、のほかに、さっきからキュッキュキュッキュと何かをこするような音が入っています。なんだかわかりません。DJという種類の人たちがディスクをこするときにこんな音がするのでしょうか?それとも、たんにウェスで楽器か何かをこすると音なのか……謎の多いオープニングで、おそらく玉置さんと、もしかしたら安藤さん須藤さんもご存知かもしれませんが、ごく限られた人しか声や摩擦音の正体、意図はわからないのでしょう。イントロ一連のセリフらしいものも歌詞カードに書かれていますが、意味はもちろんわかりません。
朝が清々しくてミニスカートでハイヒール?意味が分かんねえ!いや、意味なんてないのかもしれません。すがすが「しい」と先が「いい」、ここだけ韻を踏んでいればあとはどうでもいい、くらいの思い切りで作られた歌詞なんじゃないかとさえ思えます。
リズムが変わり、胸はって恋して〜と、玉置さんのスーパーナイスなファンク的カッティングが響きます。いや冗談でなくいいです。なんだこれ!わたくしカッティングとかブラッシングとか、あんまりやらないんですよ、なんかその場しのぎな感じがして好きでなくて。ただ、この曲のこの場面ではその場しのぎとは全く違います。恋してどうする?どうするかは後で考えるとして、ともかく今夜はビシッと決めなきゃ!というよくわからない切迫感を表現するのにこのカッティングは非常に似つかわしいものであるように思えます。
「やんなきゃー(きゃー)(きゃー!)」とコーラスで盛り上げブレイク、そして急展開でサビに入ります。また「キュキュッ」という摩擦音が響いてきます。ギターがいい具合にカッティングともコード崩し弾きともつかぬ……とギターの話をしようとして気がつきましたが、これ、弦を擦る音かもしれません。断言できるような話ではないんですが、ギターの、ナットよりペグ側、ようするに普段弾かないとこなんですが、そこを指でつまんで擦るとこんな音がしたような気がします。たまにカカカカッとピッキングしたような音も聴こえてきますんで、もしかしたらピックでキュウキュウとスクラッチやってたのかもしれません。もしそうだとしたら遊び心満点ぶっちぎって120点です。さてそんな枝葉のことはともかく(笑)、曲はドラムがドンタタドンタと気持ちの良いリズムでリードし、ギターとベースによるもう分離のよくない分厚い伴奏をひきつれて玉置さんがダブルボーカルで突っ走ります。「金持ちさんちの貧乏人〜」いやダメだ、意味が分かんねえ(笑)。「金持っていかんでくれよ」なんて言われています。なんでしょう?家族扱いされてない居候?それとも自分の小遣いは自分で稼ぐという自立心旺盛な高校生とかでしょうか。なにやら複雑な家庭環境を思わせますが、玉置さんが歌うとおり大抵の場合よくも悪くもありませんので、玉置さんもそのギャップを歌うだけです。え?それだけ?と一瞬思いますが、それはわたしたちのバイアスがそう思わせているだけなのでしょう。だって「ワインレッドの心」だって傷心の女性に男がちょっかいかけてるだけだし、「悲しみにさよなら」なんて「元気出しなよ」って言ってるだけじゃないですか。どうです、金持ちさんちに貧乏人がいるだけじゃねえか!なんて決して言えないでしょう。わたしたちはともすると恋愛に価値を重く置き過ぎなのであって、それ以外のことを軽く見る傾向があるのかもしれません。いや、面白いなあ〜みたまえ、貧乏人が金持ちの家にいるね、これはね、昆虫の世界でも起こることで……いやあ、こういう話に一ミリも興味がない状態からだと慣れるのが大変です(笑)。「金持ちさん」と「貧乏人」とベリースムーズに歌う玉置さんの圧倒的なボーカルに聴き入ってしまって気づきませんが、金持ちはさん付けなのに「貧乏人」はなんか蔑みの感覚が滲み出ています。たぶん「さん」と「にん」がどっちも「〇ん」なのでリズムとか語感とかがうまく合うという音楽上の感覚でこうなったものと思われます。ただ、この「さん」と「人」の扱いの違いさえもギャップとして楽しむという作戦なのかもしれません。むむ、そうだとしたら高度な芸術です。無意識的な差別すら描いてしまうという……「洛中洛外図」のようです。
そしてブレイクが入りまして「貧乏人!」と叫ぶダブルボーカル、ダメ押しか!(笑)そして曲は間奏に入ります。玉置さんのギターソロ、これすごいですよね。『CAFE JAPAN』あたりからさらに円熟味を増して、もはや本職ギタリストとしか思えないエモーショナルなソロです。
「行くぜ!」で曲は二番、「マンションホテル」って何だ?今まで気づかなかった!長期滞在型のホテルのことですかね、Jリーグの監督とか、そういういつクビになるかわからない仕事をしていて住民票を移す気のない人たちが住んでいるようなところだと思います。むむ、そういうところを根城にして今夜も浮名を……続くのが「ABC」とか「アルファベット」とか、もはや文脈がよくわからない言葉たちですから、あまり意味はないのかもしれません。もしかしたら恋愛系のABCかもわかりませんが、別にイロハだっていいじゃないですか、ねえ。
「見栄はってチェックイン?」ああ、実は帰るボロアパート(貧乏人だから)があるのに引っかけた恋人にセレブぶりたくてホテルに長期滞在している体を装う……?いや、家はあるんだ、金持ちさんちが。だから居候なのを隠したいとか、もしかしたら平素ひどい扱いをされているので恋人を連れ帰ったりすると無事では済まない家庭なのかもしれません。なんだかとても気の毒に思えてきました。むしろボロアパートなほうがマシかもしれません。金持ちさんちに住んでると大変なのでしょう。スーパーナイスなカッティングで思考を千々に引き裂かれながらこんなことを考えましたが、もはや物語を背景に想像することすら野暮なくらい、直感で楽しく作られた歌世界なのかもしれないなと思います。
曲は最後のサビ、ギターの単音ソロがバックでキュイーンキュイーンと効いています。これは弾きながら完全に楽しんでいます。こんなに残酷な歌詞なのに。今度は「金持ちさんちの」ではなく「金持ちさんたら」です。ねえ、金持ちさん、金持ちさんったら!と強く呼びかけているのです。「金持って逃げんでくれよ」と言われています。なんで金持ちさんが金持って逃げるの?金持ちの都合とか考えることはわかんねんなあ……もしかしたら手形を飛ばしたとか何かで、官報に掲載された瞬間に債権者が詰めかけるからその前に逃げるということかもしれません。そうならないようにちゃんと金持ちさんのままでいてくれよ、安心安全に金持ちを維持してくれよ平和のために……金持ちは金持ちでいろんな人に対する義務を負っていて大変なのかもしれません。一ピコグラムも同情できませんが(笑)。だっておれ貧乏人だもん。だけど金持ちがいなくなった後の混乱に巻き込まれるのは確かに嫌ですので、腹立ちますけどたのむから出入金の管理は怠らないでくれよと思わずにいられません。そして「金持ちさんたら貧乏人」という言葉でこの歌は終わります。むむ?金持ちさんなんだけど、実は資金繰りが大変で内情は火の車?これはヤバいかもしれません。富裕層といえどもともと根は貧乏人、いつ卑怯な財産隠しに手を染めるか分かったものじゃない……手形飛ばし・夜逃げにも時効というものがありまして、その間債権者に見つからず遊んでいられるだけの財産を隠しておけば楽勝で借金はチャラになるのですから、外国にでも身を隠しておけばいいのかもしれません、いや、やったことないですからわかりませんけど(笑)。年金とか子どもの就学とかいろいろありますから、役所にだけは届け出をしないといけないですし、逃げ切るのは正直ムリなんじゃないかなー、年金とか保険とか義務教育とかそういうものを全部捨てて完全無視する覚悟があれば話は別なのかもわかりませんが……いや、やめといたほうがいいと思います。
思えば、この頃の日本はまだITバブルなど来ておりませんでしたから、IT長者もIT土方もいなかったのです。土地バブルで盛り上がった人と、そこから一気に落ちた人、なんとか持ちこたえた人、みたいなのがいましたが……みんなもとは平民です。苗字が伊集院とか西園寺とか九条とかじゃありません。ちなみにそういうお公家さんたちもみんな律令時代後半からずっと不景気ですので(笑)、日本はずっと平民の商売人が上がったり下がったりしているわけで、根っからの金持ちというのはごく僅かなのです。格差格差といいますがそんなのはレース中の現在位置に不満といっているだけのことで、ある意味とても平等な社会ということができるでしょう。チャンスは誰にでもある!成功するのは数百年に一度かもしれませんが(笑)。ですから貧乏人も金持ちですし金持ちさんも貧乏人ですし、金持ちさんちに貧乏人が住んでいることだってあるでしょう。大した違いではないのです。
そして「貧乏人!」と叫んだダブルボーカルでブレイク、アコギのアルペジオにエレキのソロで曲は終わりまして、「ハイ!」と声が入ります。次の「MR.LONELY」にこのまま入るぜ!という意味なのでしょうか、まるでセッションしているような臨場感です。さっきまで「久しぶりだなあ」「緊張するなあ」といっていたのにノリノリなのでした。
価格:2,614円 |
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
いろいろお仕事なさってきたのですね。解体は私もやってたことありますよ。当時はアスベストとか知りませんでしたから、マスクしないで地下室の壁をツルハシで壊してから瓦礫を麻袋に入れて地上まで担ぐなんて当たり前でした。大丈夫かよって今なら思いますけども、健康健康うるさく言われるのは頭にくるタチですんで、当時のことは当時の管理でオーケーということにします(笑)。ストイコビッチが名古屋の監督してるときに東日本大震災があって、原発の放射能騒ぎも起こったわけなんですが、「放射能?そんなもの怖くない、コソボでは至近距離で劣化ウラン弾をくらいまくったんだ、いまさらそんなもの恐れてどうする」と日本に留まったのでした。わたくしまさにそんな気持ちです。
同じようにカネカネ言われるのも頭にきますね。いろいろな社会的課題を見聞きするにつれ、お前らカネしか信じてないだろとよく思います。いいんだよ貧乏人で。金持ちなら金持ちでもいいけど、そんな気にしなくてもいいじゃねえかカネあってもなくてもそれなりに愉快に暮らせるんだしと思います。
さて、金持ちさん家の貧乏人!ジャンクランドが発売こんな恋のはなし、のドラマを毎週楽しみに観てましたから、真田広之と玉置浩二、松嶋菜々子らがくりなすヒューマン劇だった記憶。
私も、短大時代から短期での仕事にはよく行ってました。覚えてるのだけで、プール監視員、茶月、セブンイレブン、大学病院内の清掃、解体工事現場作業員、楽器搬出搬入、アンパンマンショー、カメラマン助手、ホテル警備員、結婚相談所、和菓子配送など、もって長くて6年、一日二日で変わることもありました。本当にしょうがない男でした。今はたぶん違うのですが、こんな恋のはなしの内容にも重なりますが、やっぱり愛の記憶やその事にこだわっていた時期がものすごく長かったので、それを中心に考えて行動してました。段々と自分の中で考えがまとまってきたのと同時に、次のステップ次の段階へと進めてきたので、今年50になりますが人とは自分はだいぶ通ってきた道程はかなり変わってるんだろうな、とは感じます。そこが自分の強味と考えることで、これからの展望も開けるのだろうと思ってます。まあ、そんな暇な時間に楽器やうたの練習をしなくては(笑)
だいぶ安全地帯ブログとかけ離れてしまってごめんなさい。金持ちさんにはなれなくても貧乏な思いはさせたくなくて、日々汗水垂らして頑張ってます。ではでは!