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2019年04月06日

clo〈私的チェコ語辞典〉(四月四日)



 昨日に続いて「C」で始まる中性名詞である。読み方は当然「ツロ」なのだけど、「ツ」を子音だけで発音するのが難しくは、ない。日本人には聞き分けられないのだが、チェコ人によると日本人が母音つきの「ツ」だと思って発音している音は、子音の「C」だけに聞こえることが多いらしい。だから、日本人にとって発音が問題になるのは「clo」よりも「cukr」で、「ckr」と発音しているように聞こえるらしい。

 ところで、この言葉、意味は関税である。本来関税というものは外国との取りひき、つまり貿易に際して課されるもので、仕事で輸出・輸入にかかわっているという場合を除けば、直接われわれの生活にはかかわってこないはずである。それは派生語の「celnice(税関)」「celní úřad(税関)」「celní řízení(通関)」なんかも同じはずなのだけど、チェコに住んでいて日本に知り合いがいて、その知り合いが荷物を送ってくれるような親切な人だった場合には、否が応でもかかわりを持たざるを得ないのである。
 具体的な話に入る前に、言葉の話をしておくと、「clo」からできた形容詞が「celní」になるのは、例の出没母音の「e」という奴である。この関税という言葉が複数形で使えるのかどうかは確信が持てないのだが、想定しうる複数二格、つまり語尾の母音が落ちて必要ならば母音「e」が出現する格は、「cel」である。これに形容詞化するための接尾辞「ní」がついたのが「celní」だと考えればいい。「divadlo(劇場)」の形容詞が複数二格を経て「divadelní」になるのと同じである。もちろん、「clní」なんて言いにくいから「e」を入れたと解釈しても間違いじゃないんだけど、その辺はチェコ人基準で日本人にはわかりにくいしね。

 閑話休題。

 以前、日本から荷物を送ってもらうと、税関で止められて云々という記事を書いたことがあるが、「celnice」で止められて「celní řízení」の手続きを郵便局に代行してもらうので、受け取りの際に税金とは別に手数料を取られることになる。こんなのも一回だけならチェコ語の勉強になると思えば許せる。ここに挙げた関税関係の言葉も覚えたし、郵便局に代行してもらうためには「plná moc(委任状)」が必要だからこの言葉も覚えた。しかし毎回となるといい加減にしてほしい。
 そもそも、チェコが日本からの荷物を税関で止めて、通関手続きをして関税を払わせるのなら、日本でもチェコからの荷物に対して同様の制度を導入するべきである。チェコ政府が、特にこの制度を導入したときの政府が姑息なのは、「celnice」で「celní řízení」が必要なのに、ここで課される税金を「clo」だと言わない点である。

 では、何なのかと言うと、チェコ政府によれば、「DPH」という日本語にはしばしば付加価値税と訳される、付加価値のないものにも課される消費税のようなものである。日本でも売上税という名前で導入しようとして失敗し、目先を変えるために消費税と名前を変えて再挑戦という大蔵省と自民党の姑息極まりない策略の末に導入された間接税だが、チェコでも似たような敬意があったのかもしれない。
 それはともかく、消費税であるのなら購入の際に税金を支払うわけだから、知り合いが日本で購入した際に税金分を支払った上で、チェコに送ってくれた本なんかに課税するのは二重課税というものであって、消費者の立場から言わせてもらえば許されることではない。チェコ人の知り合いによれば自分がチェコから日本に持っていって、荷物が多くなりすぎたからとチェコに送り返したものにさえ、課税されることがあると言うからあきれるしかない。

 たしか、この法律が施行されて制度が適用されたときには、外国に拠点のあるネットショップで買い物をした場合、買い手がチェコ在住の場合ネットショップのある国の消費税も、チェコの消費税も払わなずにすむのは、チェコでお店を経営している人に対して不公平だから、チェコの消費税をかけることにしたとか何とか説明されていたはずだ。つまり、外国からチェコに配送されてくる商品にだけ課税することになっていたのである。それをEU圏外から送られてくる荷物すべてに対象を広げたのは、引っかかる商品が少なすぎて当初の目論見ほど税収が増えなかったからだろう。それに困るのはほとんど外国人だから支持率には関係ないという目論見もあったに違いない。
 さらに許せないのは、アリバイ的に贈り物や個人のものであれば、無税にする手続きも存在させている点である。ただしその手続きにかかる手間と時間を考えたら税金と手数料を払ったほうがましと言う状態で、多くの人は最初から税金を払うことにしてしまうのである。この手続きに挑戦した知り合いが二人いるのだが、二人とも半年かかったと愚痴っていた。

 手数料のことを考えると赤字にあえぐチェコ郵便の救済措置でもあるのかもしれない。焼け石に水だろうけどさ。いや、われわれ外国人が言われなき手数料を払うことでチェコの郵便局のサービスが向上するというのならあえて払ってもいいのだけど、最初から税金を払うことにしても、「celní řízení」には、EMSで送ってもらったことを後悔したくなるぐらいの時間がかかるから、やってられないのである。
 あれ、何でこんな話になったんだろう。どこをどう読んでも辞書じゃない。
2019年4月5日17時30分。











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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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