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2018年03月07日
イフラバの変(三月四日)
チェコのサッカーリーグは、ヨーロッパの多くの国と同様、所謂秋春制で行われているが、秋と春の間の中断期間が二ヶ月以上あり、選手の出入りも激しいために、秋と春とではほとんど別のチームになっていることも少なくない。それでも、秋に好調だったチームが、春になって突然調子を落とすことは多くても、秋に前々駄目だったチームが、突然勝ち始めるということは滅多にない。
その滅多にない例になりつつあるのが、秋のシーズンを16試合で勝ち点僅か10の最下位で終えたイフラバである。中断期間にフォワードのラブシッツ、キーパーのハヌシュという中心になるべき二人の選手を放出していたこともあって、降格候補の筆頭だと目されていた。しかも、春のシーズンの初戦がスラビア、次がプルゼニュという上位チームを相手にする日程になっており、浮上の目はなさそうだった。
それが、二月下旬のリーグ再開初戦で、スラビアに1-0で勝ってしまったのである。このときはビソチナと呼ばれる高原地帯のイフラバでの試合で、試合が延期になるほどではなかったけれども寒さの影響でグラウンドのコンディションがよくなく、特に後半は雪が降り出してスラビアの長所であるパスをつないでのコンビネーションがほとんど機能しなくなっていたから、運がよかったという面もあるようにも見受けられた。これで、春になっても調子の上がらないバニークを抜いて15位に浮上した。
そして、再開二戦目のプルゼニュでの試合でも、同様に前半に上げた得点を守りきって勝利する。こちらは特に気候の影響ということもなく、ヨーロッパリーグで勝ち抜けを決めたチーム相手に堂々の勝利だった。上のチームとの勝ち点の差が大きかったため、勝ち点は16でスロバーツコに並んだものの順位は15位のままだった。
この二試合は、チェコリーグ最強チームが相手ということで、失うものなどないイフラバが開き直った結果であまり参考にはならず、次の三試合目の順位では真ん中ぐらいに位置するテプリツェとの試合こそが、イフラバが残留できるかどうかを判断する基準になるという見かたもあった。上位とはいい試合ができても中堅下位に負け続けて降格した二年前のオロモウツの例もあるし。
テプリツェとの試合は、どちらが順位で上にいるチームかわからないような状態でイフラバが完勝した。三連勝で勝ち点が9、秋の終わりが10だったから、たった三試合で16試合分とほぼ同じ勝ち点を獲得したことになる。順位も12位まで浮上した(日曜日の試合でブルノが引き分けたため、現時点では13位)。この調子が続けば、残留するのは間違いなさそうである。
秋とはまったく違うチームを作り上げることに成功したのは、今シーズン開幕当初はムラダー・ボレスラフで監督をしていて、総監督のウフリン若ともめて解任されたシュベイディーク。去年の春もボレスラフの建て直しに成功したんだったかな。それからフロントが毎年残留争いを繰り返すのに嫌気が差していたのか、これまでの場当たり的なチームの改造をやめ、長期的な強化策をとる方向に舵を切ったのもよかったのだろう。新監督は降格しても解任されないという約束とともに就任し、今のところチームの改築に成功しつつある。
問題は選手が引き抜かれて入れ替わることになりそうな来シーズンどうなるかである。チェコの若手監督は優秀な人でも、自分が一度作りあげたチームが悪循環に陥ったときに立て直しきれないまま解任されることが多いので、春に入って調子が上がらないオロモウツも心配なのだけど、お手並み拝見というところである。
イフラバの覚醒で、いよいよバニーク・オストラバの降格が確実になりつつある。個人的な思い入れはないけれどもチェコ第三の都市のチームが一部リーグにないというのは寂しいものがある。二つ目の降格チームがぶるのになる可能性もなくはないんだけどさ。
2018年3月7日14時。