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2018年10月10日

チェコ語の選挙――復習編(十月六日)



 今週末、正確には金曜の午後二時から、土曜の午後二時にかけて、チェコ全土で選挙が行なわれた。今回は統一市町村議会選挙と、三分の一の選挙区で行われた上院議員の選挙である。統一地方選挙でないのは、何々地方(チェコ語でクライ)議会の選挙は今回行われないからである。市町村も含めたこの手の地方議会の選挙は、それぞれの地方公共団体の必要に応じて行うものだと思っていたのだが、日本よりもはるかに中央集権的なチェコでは、地方議会の選挙も国営で、市町村議会の選挙はすべて同一の日程で行われ、議員の任期は4年になっている。任期中様々な事情で再選挙が行なわれることもあるが、その場合は新たに4年の任期が認められるのではなく、次の選挙までの残りの任期を務めることになる。
 そして、今回初めて詳しく知った市町村議会選挙のやり方だけれども、複雑怪奇なものだった。誰がこんなややこしい制度を考え出したのだろうと言いたくなるようなもので、チェコの選挙制度というのは、有権者にとっても、観察者にとっても全く優しくないのである。他の選挙と比べたほうが、ややこしさがわかりやすくなるだろうから、ここまで取り上げた選挙について復習してから、本題に入ることにする。一部過去の記事と重複しそうだけど、まとめということで。

 今年の一月にも行われた、大統領選挙は、有権者による直接投票で、第一回目の投票での上位二名だけが第二回投票に進むという二回戦制。一回目の二回目の投票の間は、二週間取られている。ただし、一回目の投票で過半数、総投票数の50パーセント以上票を獲得した候補者がいた場合には、その時点で当選が確定し、二回目の投票は行われないことになっている。
 立候補は政党には依存せず、条件さえ満たせば、政党員でなくても、政党に推薦されなくても、誰でも立候補できる。条件は、有権者の署名を一定数以上集めるか、国会議員の推薦を一定数以上集めるかというもの。投票の際は、有権者は投票用紙に印刷されている候補者の名前のうち、投票したい人の名前の前に印を付けるんだったかな。もちろん一人一票なので、印をつけられるのは一人一つだけである。

 この大統領選挙に関しては、2013年に行われたのが最初の直接選挙による大統領選挙だったことは書いておかねばならない。それまでは国会に於いて下院と上院の議員によって選挙が行われていたのである。だからゼマン大統領はチェコで最初の直接選挙で選出された大統領ということになる。以前の二人、ハベル大統領とクラウス大統領について考えると、ハベル大統領が直接選挙でも当選していただろうことは疑問の余地もないけど、クラウス大統領の場合には、一期目の2003年の選挙は、ゼマン大統領とか、元上院議長のピトハルト氏とか出ていたから、直接選挙だったら、結構危なかったんじゃないかという気もする。2008年のほうは魅力的な候補者がいなかったから、直接選挙でもクラウス大統領だっただろうけどさ。

 それで、この大統領選挙に一番制度が似ているのが、今回市町村長選挙の傍らで、チェコ国内の三分の一で行われた上院議員の選挙である。こちらも二回戦制で、一回目の上位二名が二回目に進出し、一回目で過半数を獲得した候補者が出た場合には、二回目は行われない。一回目と二回目の間は一週間しかない。
 候補者は、政党の推薦を受けることも可能だし、政党が党員を擁立することも可能で、そういう議員が多いのは確かだが、個人が無所属で立候補することも可能である。その場合に、地元の地域の政党というか政治グループと組んで、そこの推薦ということにすることも多いようだけど。有権者の投票のやり方も大統領選挙と同じで、候補者のリストの中から一人選んで印をつけるというのもののはずである。

 言ってみれば、この二つが、チェコの選挙方式のうち一つのグループをなしていて、政党ではなく個々の政治家に投票するタイプの選挙である。だから、政党内で活動したという前歴よりも知名度が重要になる。その意味で今年の一月の大統領選挙で、現役の総理大臣で抜群の知名度を誇るゼマン氏に挑んだ無名の候補者達の健闘は賞賛されていい。前回はシュバルツェンベルク氏という知名度ではゼマン大統領に匹敵する人物が挑戦したのに、勝てなかったわけだから。

 その今年の一月の大統領選挙で全国的に知名度を上げた候補者の一部が、今回の上院議員選挙にも出馬していた。大統領選挙で決選投票に進んだドラホシュ氏は、一回目で50超の票を集めて当選を決め、無名ながら健闘したヒルシュル氏とフィシェル氏は、どちらも40パーセントを超える得票で、二回目の決選投票に一位で進出している。大統領選挙前の選挙運動、テレビの討論番組などで上げた知名度を十分に生かした結果だと言える。いずれもプラハの選挙区からの出馬で、プラハでは反ゼマン感情が高いことを考えると、第二回投票ではドラホシュ氏の元に集まって協力した三人が当選、もしくは一位で勝ち抜けたというのもあまり不思議ではない。
 これが、次の大統領選挙に向けた布石なのだとしたら、人気を獲得しやすく失いやすいプラハの選挙区からではなく、モラビアの田舎の選挙区から出た方がよかったのではないかと思う。プラハでの知名度と人気は大統領選挙で稼いだのだから、次はモラビアの田舎で稼ぐ番のはずなのだけど、無意識にプラハ中心主義に毒されているのだろう。プラハを押さえれば勝てるというね。もちろん、大統領選挙には出ないで上院議員の任期を全うしてその後も継続するという可能性もあるのだけど。

 もう一つの、この二回戦制選挙の特徴としては、一回目で落選した候補たち、その候補を立てた政党が団結してある政党に反対する連合みたいなものを組むことがあるというのが挙げられる。二年前の上院の選挙では、チェコ全体で反ANO連合が組まれた結果、一回目の投票に勝利し最多の候補者を二回目に送り込んだANOの獲得した議席は驚くほど少なかったのである。以前の市民民主党が強かった時代は、反市民民主党の連合が組まれたこともあるらしい。今回の選挙で、一番多くの候補が二回目に進出したのは市民民主党だが、今回も反市民民主党ではなく、反ANOの勢力が協力することが予想されている。
 その結果、上院代位等となる可能性があるのは。キリスト教民主同盟と、市民民主党ということになる。上院の議長は議員数が一番多い政党から出ることになっているから、キリスト教民主同盟が上院第一党になった場合には、党員ではないけれどもドラホシュ氏を議長の座にすえるのではないかと言われている。さてさてどうなることやらである。詳しくは二回目の投票の後で。
 次回は下院と地方議会選挙の話である。
2018年10月8日23時55分。










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