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2016年11月16日

チェコ強し(十一月十三日)



 今日はサッカーの話でも、ハンドボールの話でもなく、テニスである。昨日、今日とフランスのストラスブールで行われたフェドカップの決勝でチェコは、フランスチームを3−2で破って、三年連続の優勝を決めた。ここ六年間で五度目の優勝で、チェコスロバキア時代を合わせると通算十回目に優勝で、これはアメリカに次いで二番目に多い回数らしい。
 チェコスロバキア時代に最後に優勝したのが1988年のことで、それ以後決勝に進出したこともなかったのが、二十年以上ぶりに2011年にチェコ単独では初めて優勝した。この年は、チェコの選手としては久しぶりにぺトラ・クビトバーがウィンブルドンで優勝した年でもあるので、この年からチェコのテニスが上昇気流に乗ったと言ってもいいのかもしれない。翌2012年には、フェドカップを連覇し、デビスカップでも三十年ぶりぐらいに優勝しているし。

 チェコのフェドカップチームの中心は、ぺトラ・クビトバーとルツィエ・シャファージョバーの二人の左利きの選手だった。それに、かつてはクビェタ・ペシュケオバーというベテランのダブルス専門の選手が活躍するなど、チームの監督? コーチ? チェコ語でいうキャプテンのパーラの役割も大きそうだ。
 昨年からは、病気と怪我で調子の上がらないシャファージョバーに代わって、プリーシュコバーが中心選手として活躍しているし、主力選手が怪我や不調でも。代役となる選手が予想以上の活躍を見せて貴重な勝利を挙げることもあって、ここ数年は選手選考も含めて、すべてとは言わないにしても、ものすごくうまくいっている。この辺がパーラの仕事なのだろう。今回も、シングルスの調子の上がらないシャファージョバーが呼ばれず、中国から帰ってきたばかりのクビトバーも二日目を棄権したけど、問題なく勝ったし。

 初戦でプリーシュコバーが、フランスのムラデノビッチ(?)との大接戦を、第三セット16−14で勝利したときに、これはあっさり3−0で勝てるかなと思ったのだ。次は多少ランキングを落としているとはいえ、ここ数年主力としてチームを引っぱってきた直前の中国での大会に優勝して調子もよさそうなクビトバーだったから。しかし、クビトバーは中国での無理がたたったのか、足に負傷を抱えていたらしく、どうも疲労骨折寸前までいっていたようで、あっさりと二セットでガルシア(?)に負けてしまう。
 それでもプリーシュコバーが勝つから大丈夫だと思っていたら、日曜日の最初の試合で負けてしまう。惜しいところまではいったんだけどね。これで、今年は準優勝なのかなとあきらめかけていたら、クビトバーの代役で出たダブルス要員だったストリーツォバーが、こちらも代役で出てきたフランスの選手にあっさりと勝ってしまった。最初はお互いにミスが多く、どうなることかと予想もつかなかったのだけど、次第に修正されて一セット目は楽に取った。二セット目は相手も立ち直っていたので、もつれたけれどもタイブレイクをきっちりとって、チェコの二勝目。
 この試合で、フランスが二番手のムラデノビッチを温存した理由はよくわからないが、チェコとしては、前日に一試合済ませているムラデノビッチに出てこられたほうが嫌だっただろう。プリーシュコバーと大接戦の上負けたのを嫌ったのだろうか。

 フェドカップのチェコチームの強さは、実はダブルスにある。シングルスで2−2になった後、勝負を決めるダブルスで負けるのを見た記憶がない。だからこの時点でチェコが勝つと確信したと言うと、嘘になってしまう。ランキング通りの結果にならないことの多い女子テニス、しかもフェドカップでは普段は組んでいない二人でダブルスに出ることもあり、どうなるかなんて予想のしようもない。
 問題だったのは誰が出るのかということだ。負傷で欠場のクビトバーが出ないのは当然としても、ダブルス要員として登録されているフラデツカーと試合が終わったばかりのストリーツォバーになるのか、それともプリーシュコバーを出すのか。パーラの結論は、昨年の決勝のダブルスと同じで、この週末三試合目となるプリーシュコバーとストリーツォバーの二人だった。
 試合は、じっくり見たわけではないけど、チェコが要所を押さえて二セットとも7−5で取って、あっさり優勝を決めてしまった。ストリーツォバーは、終わり方が去年のロシアとの試合とそっくりだったと言っていたけれども、覚えてないや。

 チェコ人って、いやチェコのテニス選手ってこのチームで争うフェドカップがものすごく合っているみたいである。プリーシュコバーも以前はあまり出たいとは思わなかったけど、次も出て次も勝ちたいと叫んでいたし。共産主義の時代から、政治的には逆らえない大国ソ連に対してスポーツ、特にチームスポーツで勝利することが最大の娯楽の一つだった国だから、フェドカップでもアメリカやロシア、今回のフランスのような大国相手に戦って勝つのは溜飲が下がることなのだろう。

 さて、キャプテンのパーラが2009年に就任して以来、チェコは三回しか負けておらず、フェドカップの国別ランキングでは三万八千ポイント以上を獲得して、これはダントツもダントツの一位である。二位のフランスに二万三千ポイントほどの差をつけていると言うから、そのダントツ振りがわかるというものだ。
 その間、招集した選手は十一人ということだから、中心選手だけではなくそれを支える選手たちも充実していると言うことだろう。これはしばらくチェコの黄金時代が続くかな。シャファージョバーもこのまま消えていくということはないだろうし。

 チェコはデビスカップも2012年、2013年と連覇しているのだが、あれはひとえにシュテパーネクとベルディフの頑張りによるものだった。二人でシングルスとダブルスを合わせて五試合戦い抜いて勝つというのが基本パターンで、ほかの選手が勝敗に絡む試合に出ることは滅多になかった。だから、シュテパーネクが年齢の影響もあって怪我がちになり、ベルディフも長年の無理がたたってお疲れモードで辞退することが増えると、とたんに勝てなくなった。
 かつてイジー・ノバークがいる間にシュテパーネクが台頭し、シュテパーネクが頑張っている間にベルディフが出てきたというように、一本の線ではありながらトップレベルの選手が現れていたのだけど、最近はロソルもベセリーも伸び悩みで、チェコがデビスカップを次に制覇するのは、かなり先のことになりそうだ。
11月15日11時。


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