2020年11月27日
阿呆はANOのみにあらず(十一月廿四日)
十月下旬に、就任して一月ほどだったプリムラ厚生大臣が、辞任に追い込まれたのは、営業が禁止されているはずのレストランで、ANOの副党首だったファルティーネク氏と会合を持ったことが原因だった。レストランなどの飲食店の閉鎖を決定した人間が、自らルールを破るとはどういうことだという批判が、野党だけではなく、与党内からも巻き起こったのだった。
もう一方の主役であるファルティーネク氏も、あちこちから批判を受けて、下院のANOの会派の長と、ANOの副党首の役職を辞任したんだったかな。辞めたのは前者だけだったかもしれないが、プリムラ氏とは違ってあっさり辞任していた。ただ、その後、逃げるように外国に休暇に出かけ、一般の国民に外出の制限を科したばかりだっただけに、バビシュ首相からも批判されていた。
これで終わっていれば、ANOの政治家、政治家以外でもANOの選んだ大臣は、国民の事を無視して好き勝手なことをしているという結論になって、反バビシュの野党勢力にとっては、万々歳だったのだろうけれども、ここは流石のチェコである。そんな簡単でつまらない結論で終わることはありえないのである。
まず、ANOに続いて、政治家というものが如何に自分を特別視し、国民に対する規制がおこなれていても自分はその対象にならないと考えているという事実を明らかにしたのは、TOP09の実質的なリーダーであるカロウセク氏だった。二週間ほど前のことになるが、プラハの持ち帰り用の窓口だけで営業していたレストランの中に入っていって、店主と談笑しながらビールを飲んでいたらしい。
カロウセク氏は長年の友人の経営するレストランに昼食を買いに来たついでに、店の中に入れてもらって話をしながらビールを飲んだだけだとか語っていたと記憶するが、この時期は仕事と買い物以外で外出することが禁じられており、週末などに会いにいっていいのも家族だけという制限がついていたはずだから、この言い訳は通用しない。結局開き直ったような謝罪のコメントをして幕引きとしていた。
実は、最初にカロウセク氏が政府の規制に違反するような行動を取ったというニュースを見たときには、意図的に、バビシュ政権を批判するために敢えてやったのかと期待したのだが、そんなことはなかった。この人も口ではえらそうなことを言うけれども、結局つまらない既成の政治家の一人に過ぎなかったのである。カロウセク氏とバビシュ首相は、ことあるごとに対立して犬猿の仲とは言われるが、いわゆる同属嫌悪という奴で、本質的には似ているのではないかと見ている。カロウセク氏のほうが政治家としては洗練されているけれども、それがいいことで有権者の支持につながるとは限らない。
続いて愚行をさらしたのは、カロウセク氏の場合と違って、自らSNSでさらしたのは、キリスト教民主同盟の党首でオロモウツで反バビシュの旗を振り続けているユレチカ氏である。明らかに自宅ではない、飲み屋かどこかで誇らしげにビールに口をつけようとする自分の写真をSNSに掲載したらしいのである。これも抗議のために意図的にやったというものではなく、問題にされていることがわかるとすぐに謝罪のコメントを出していた。
プリムラ氏や、カロウセク氏のようにマスコミにすっぱ抜かれたというのならまだわかるけれども、これでは、自分がバイト中にアホなことをやるさまをSNSで公開する日本のアホ学生と同じレベルではないか。キリスト教民主同盟、こんなのが党首で大丈夫か? この人オロモウツ地方の地方議会の選挙でも当選しているはずなんだけど、心の底からやめてほしいと思う。
ANOとバビシュ首相がどんなに駄目っぷりを示しても、批判する層は急進化するものの、一定の支持を得続けている理由のひとつが、この既存の政党の政治家たちの体たらくにあるのである。バビシュ首相から反バビシュのメディアだとして批判されることもあるチェコテレビですら、プリムラ厚生大臣には辞任を求めておいて、自分たちは自らを罰するのに謝罪しかしなかったなんて皮肉を言われていた。
だから、ANOの次は海賊党だと確信しているのだが、ANOの劣化が予想以上に早いのでどうなることやらである。来年の下院の総選挙で、市長連合ことSTAN党と選挙協力をすると言い出したのも、期待よりは不安のほうが大きい。
2020年11月25日11時。
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