2020年11月17日
犬システム(十一月十四日)
犬はチェコ語で「ペス(pes)」という。それが昨日ブラトニー厚生大臣が発表した、流行状況に基づいて各地方の危険度を数値化して、規制の強化と緩和を定めるためのシステムの名前である。正式名称は「Pětistupňový epidemický systém」だったかな、「Protiepidemický systém」かもしれない。危険度の指数を元に5つの段階に分けて、段階ごとにどのような規制を行うかを定めたものである。
感染状況が改善しつつある現在、今後はこの表を元に、数値が改善し、危険度の段階が下がることに規制が緩和されていくことになる。野党が政府の対応を批判していた一番の理由は、規制の導入も緩和も場当たり的で、基準となる数値がないことだった。夏場に導入された緑、オレンジ、赤に色分けする信号システムも、当初は歓迎されたが、色が変わる規準が全く公表されなかったのと、色ごとの状況の説明はあっても、どんな規制を行うかは決められておらず、規制の決定に関してバビシュ首相の介入を招く原因になっていた。
ボイテフ氏に代わって就任したプリムラ氏も同様に、規制のあり方に基準がないとか、今後の規制緩和のロードマップみたいなものがないと野党側から批判を受けて、あるけど公表はしないと強弁していたけれども、あの頃準備を始めていたものが、ようやく完成して出てきたといってもいいのかもしれない。
とまれ、犬システムでは、最近14日間の人口10万人あたりの新規感染者数、病院の空き病床数(割合かも)などいくつかの規準となる数値を元に指数化し、危険度を0から100で示し、20ごとに5段階に分けられる。その段階ごとに、マスクの着用や外出の制限など27の分野における規制が定められている。
そして、例えば最高の第5段階から、第4段階に規制のレベルを下げるのは、一日だけ危険度指数が第4段階になるだけでは駄目で、その状態が一週間続いて初めて、レベルを下げるのだという、これは、数値が下がってすぐに規制を緩和したら、またすぐに数値が悪化することが予想されるからだという。日々の数値に一喜一憂することなく長期的な傾向を確認した上で、規制を緩和するというのは賢明なことであろう。特に経済界からの圧力に弱いところのある今の内閣を考えると、危険度下がったらすぐに規制緩和と言い出しそうだし。
それで、昨日の時点のチェコ全体の危険指数は、70で第4段階だが、来週の金曜日の時点で、第4段階の数値が一週間続いていた場合に、再来週の月曜日から第一弾の規制緩和が行われるという計画のようだ。金曜日に規制の変更を決めて、月曜日から適用するというのも、週末を準備の時間として使えるから、悪くない。
後は、本当にこのシステムに基づいて規制の緩和と強化を実施できるかどうかだけである。本来であれば、第一波の抑えこみに成功した夏の間に準備しておくべきことだったのだろうが、あのころ、チェコの武漢風邪の流行がここまでひどいことになると予想していた人はいなかっただろうし、政府も野党も含めて、チェコ全体が、春の流行の際にヨーロッパでは最も成功した国になったという事実に酔っていて油断していたというのは否定できまい。
今回も、予想以上に感染者の数が減り始めたら、このシステムを無視して規制緩和を主張する人が出るんだろうなあ。あの大臣とかさ。バビシュ首相は夏の失敗で懲りていそうだから、自分ではなくほかの大臣に主張させそうである。ゼマン大統領も何を言い出すかわからないか。
さて、この犬は、政府を守る権力の犬になるのか、民衆を守る番犬になるのか。厚生省としては後者の意味でつけたのだろうけど。
2020年11月14日23時。
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