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2016年05月30日

チェコマイナースポーツ(五月廿七日)



 現在オロモウツ地方の北部、温泉町のイェセニークの近辺でオリエンテーリングのヨーロッパ選手権が行われている。オリエンテーリングというと地図とコンパスを持って山の中を歩いてコントロールポイントを回るレクレーションの一種だと思っていただけに、初めてチェコテレビのスポーツチャンネルで、地図を片手にコンパスは持たずに走り回る姿を見たときには、ちょっと驚いてしまった。
 ルートが一つではないクロスカントリーのレースと考えればいいのかもと思ったが、クロカンのレースにしては過酷な登りがあったり道なき道を走ることもあるし、時には山の中ではなく平地の林の中や、街中を舞台にして開催されることもある。スタート=ゴール地点以外は、一般の人の侵入が制限されないから、しばしば歩いている人の脇を走って追い抜いたり、人の座っているベンチの前を走りすぎたりする。
 昨年のオリエンテーリングのチェコ選手権は、うちのの実家のある町で行われ、市街地と周囲の森の中を組み合わせたコースが設定されていた。うちの中から前の道路を走っていく選手を見ることも出来た。そのとき、男女のメインレースはチェコテレビで実況中継されたのだが、前日に時間をかけて設置した中継用のカメラのケーブルが夜の間に切断されるという事件があって、金銭的な損害もそうだけれど、代わりのケーブルを確保するのが大変だったと言っていた。もちろん、チェコ中から集まったオリエンテーリング関係者がそんなことをするわけはないので、地元の心ない人間のいたずらに決まっている。

 走るオリエンテーリングだけでなく、チャンネルをチェコテレビスポーツに合わせていると日本にいるときには、想像もしなかったスポーツが放送されることがある。その筆頭が「ノヘイバル」と呼ばれるスポーツで、簡単に言えばテニスコートでサッカーボールと足を使ってするテニスということになる。日本のサッカーテニスみたいなものと言えると言おうとして、中学時代に遊びでやっていたサッカーテニスはノヘイバルとは違ったような気がしてきた。
 シングルスとダブルスがあるのはテニスと同じなのだけど、三対三の試合もある。チェコとスロバキアだけでしかやっていないのかと思っていたら、ルーマニアやハンガリー、スイスなどでも行われているらしい。ヨーロッパ選手権だけではなく世界選手権も行われているから、多分ヨーロッパ外でも行われているのだろう。チェコのノヘイバル協会のホームページで確認したら、日本の近くでは韓国とオーストラリアが、国際ノヘイバル協会のメンバーになっているようである。英語での公式名称は「フットネット」みたいだけど、聞いたことないなあ。
 日本ではサッカー選手が練習の前にウォーミングアップがてらの遊びでやっているところしか想像できないが、チェコでは国内リーグも存在して、シングルスから三対三までを組み合わせた団体戦で試合が行われている。一番よくテレビに出てきて印象に残っているのは、ブルノの近くにあるモドジツェという町のチームである。

 最近は見かけることも少なくなったが、サッカーボールを使ったスポーツとしては、チェコ語で「コロバー」、日本では多分サイクルサッカーと呼ばれるものがある。2000年代の初頭だったかに、サイクルサッカーのアジア選手権にチェコチームがオープン参加したとかいうニュースを読んだ記憶があるので、日本でも行われているのだとは思う。二対二で行うスポーツで、ポスピーシル兄弟というのが、歴代最強のチームらしい。
 チェコ語で「クラソイーズダ」というスポーツは、フィギュアスケートやシンクロナイズドスイミングの自転車版らしい。見たことがないのでよくわからないけど、ここの写真をみると、何となく想像はつきそうな気がする。一人一台の自転車で何人かで演技するものもあれば、二人組みで一台の自転車を使うものもあるようである。採点する前に、転倒などの減点で勝負が決まってしまうこともありそうだ。
 この二つをあわせて室内自転車競技という部門を持っているスポーツクラブもあるようだけど、体育館で自転車を使おうという発想は、冬が厳しく室内競技の需要が高かったチェコならではなのかもしれない。いや、チェコ発祥の競技かどうかは知らないんだけど。

 個人的には、「ナーロドニー・ハーゼナー」と呼ばれる、チェコ風のハンドボールが気になるのだが、スポーツチャンネルでも放送されることはない。「ナーロドニー」という「民族の」という意味の形容詞がついているところからみると、チェコとスロバキア限定のスポーツなのだろう。ヨーロッパ大会、世界大会があれば放送されるのだろうけど……。たまにニュースで見るぐらいでは、普通のハンドボールとどこが違うのか理解できない。
 以前、俳優のイバン・トロヤンが、何かの賞の表彰式のときに、新しいスポーツとして、細長い木の板を頭の上に載せて、その板をぶつけ合って対戦相手の板を落とすというものを紹介していたけれども、これは表彰式用の冗談だったようだ。

5月28日18時36分。




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