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2019年11月16日

チェコ代表勝利(十一月十四日)



 来年行われるサッカーのヨーロッパ選手権の予選も残り二試合。十月に予想を覆してイングランドに勝ったおかげで、勝ち点を積み上げることに成功したチェコ代表は、今日のコソボとの試合に勝てれば、グループ2位以上が確定して、本大会出場が決まる。負けても、チェコがブルガリアに勝って、コソボがイングランドに負ければ、出場できるから、負けても絶望というわけではないが、予選最後の予選最後のホームでの試合、やはり勝つべきであろう。

 この試合は、政治的な理由で極めて危険性の高い試合として認定されたため、チケットの販売や会場への入場に大きな制限がかかった。チェコでチケットを買えるのは身分証明書を提示したチェコ人のファンだけで、スタジアムへの入場に際してもチケットだけでなく身分証明書の提示が求められ、手荷物検査で余計なものを持ち込んでいないかどうかのチェックが行われていた。
 これをチェコのリーグでの試合にも導入すれば、チェコのスタジアムもはるかに安全で居心地のいい場所になるはずなのだが、一部のファンの強硬な反対で実現していない。その一部のファンが、発煙筒を持ち込んだり、グラウンドに物を投げ入れたりという愚行を繰り返して、チームに罰金を負わせているのだから救いがない。この切り捨てるべきファン層を、昔からのずぶずぶな関係に付け込まれて放置しているのがチェコサッカー界の最大の問題の一つである。

 ちなみに、政治的に危険な試合に指定された理由は、ゼマン大統領がコソボの認知の見直しをするべきだと主張したことと、九月のコソボでの試合の際に、チェコ人がコソボの独立の正当性の問題に絡んで現地で逮捕されたことが挙げられる。チェコ人がコソボの反感をあおるような横断幕を出したり、コソボ側がゼマン大統領に抗議するようなものを掲げたりして、政治問題と化すことが危惧されたのだろう。

 閑話休題。
 試合を前にして、チェコが勝ちそうな徴候、負けそうな徴候、どちらも存在した。勝ちそうなというよりは、勝たなければいけない理由は、昨日、11月13日が、ブリュックネルの80歳の誕生日だったことだ。一日ずれたのは残念ではあるけど、今年の夏からオロモウツではシグマ100周年に関連付けてブリュックネルのお祝いも開催しているのである。長年率いたチェコ代表がホームで勝利して本戦出場を決めることができれば最高のプレゼントになる。監督のシルハビーは、ブリュックネルもとでコーチを務めたことがあって、いわば弟子筋にあたるのだからなおさらである。

 負けそうな、不吉な兆候は、シクがけがで欠場すること、コソボでの試合で何ともなめたプレーで逆転負けを喫したことなんかも挙げられるが、一番まずいと思ったのは、月曜日に公開された、新しいアウェー用のユニフォームである。
 チェコ代表は伝統的に、ホームで使用する第一ユニフォームには、国旗の三色のうちの二色、赤と青を使ってきた。上が赤で、下が青、これは今後も変わらない。変わるのは上下とも国旗の残る一色、白を使ってきたアウェー用の第二ユニフォームで、何とびっくり蛍光黄緑とでも言いたくなるような色になってしまったのだ。こういうのは提供する会社が考えて提案するみたいだから、チェコの場合はプーマの仕業ということになる。受け入れた協会の連中も困ったもんだけどさ。

 監督や選手の口からは、当然否定的なコメントは出てこなかったけど、シルハビーが「このユニフォームで勝利を重ねていけば、みんな気に入ってくれるだろう」なんて言っていたのが、本心をうかがわせるような気がする。選手たちも口々に驚いたと言っていたけど、他に言いようがなかったんだろうなあ。アイスホッケー代表のユニフォームも、去年大きく変わって物議を醸していたけど、あちらは色に関しては、青、赤、白の三色を使うという伝統を守っていたんだよなあ。
 この変な色のユニフォームを着るのは、日曜のブルガリアでの試合ということで、コソボとの試合では心配する理由にはならないのかもしれないけど、相手が相手だし嫌な予感がする。今のチェコ代表って格下の相手との試合が下手だし、いいときと悪いときの差が激しすぎるし。そう考えると、きっちり勝ちづづけている日本代表がうらやましくなる。それなのにあちこちからあれこれ批判されているのを見ると、日本人も贅沢になったなあと隔世の感を感じてしまう。

 試合のほうは、前半のチェコはコソボでの試合を思わせる低調ぶりで、ボールは保持していたけど、点が取れそうな匂いはせず、これは悪いほうの代表かなと思っていたら、案の定後半開始早々に手抜きプレーから失点した。ただこの日のチェコは、そこで目を覚まして、以後はイングランド戦を思いださせるプレーで、コソボを完全に圧倒した。
 最初のゴールは、ソウチェクがシュートした後、キーパーにぶつかったのをファウルととられて取り消されたが、70分過ぎにクラールが、ペナルティエリアのちょっと外で、マソプストがもたもたしていてシュートできなかったボールを、見事にゴールの隅に蹴りこんだ。キーパーからはディフェンスの選手に隠れてボールが見えなかったようで、ほとんど反応できていなかった。

 その後、ヤンクトのシュート、オンドラーシェクのシュートがゴールのバーに嫌われて、これは引き分けに終わるパターンかとあきらめかけていたら、80分ごろだったかな、コーナーキックからソウチェクとオンドラーシェクがディフェンスの選手と競り合ってこぼれたボールがクラールのところに。クラールのヘディングでのシュートで同点だと思ったら、キーパーの目の前でチェルーストカが触っていたようで、チェルーストカの得点ということになっていた。
 逆転した後も、引きこもって守るようなことはせず、攻めながら時間を稼いで、そのまま2−1で勝利。ブリュックネルに誕生日のプレゼントを届けることに成功した。コソボは予想以上に厄介な相手だった。独立したばかりで代表が活躍することが、国の威信を高め国民を鼓舞するってことを意識して全く手を抜かないのだろう。正直、10月のイングランドの選手たちよりもはるかに好感が持てた。

 次は日曜日のブルガリアでの試合である。ユニフォームが……。とはいえ、無観客試合で行われることが決まっているので、蛍光黄緑の代表の雄姿を目の当たりにできるファンはいないはずである。もちろんテレビで放送されれば見るけど、見たいような見たくないような。ころっと負けそうな気がすると予想しておく。
2019年11月15日16時30分。











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