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2019年07月06日

バビシュ内閣の行方(七月四日)



 ゼマン大統領が、文化大臣スタニェク氏の辞任を認めず、バビシュ首相の解任の要求も拒否していることで発生した内閣の危機を解決するための三者会談、ゼマン大統領、バビシュ首相、社会民主党のハマーチェク党首の会談は、本来火曜日に行われることになっていた。それが、EU議会選挙後の加盟国首脳による交渉、誰をどのポストに据えるかというのが長引き、バビシュ首相がブリュッセルから戻ってこられなかったために木曜日に延期された。

 社会民主党はスタニェク文化大臣の解任と、シュマルダ氏の大臣任命を強く求め、それが達成されなかったら、連立を解消して下野するといっているのだが、この日の三者会談は何の進展ももたらさなかった。ゼマン大統領は、バビシュ氏とハマーチェク氏の説得にも主張を変えることなく、最低でもスタニェク氏が告発した美術館長の汚職に関する捜査の結果が出るまでは、解任に応じる気はないようである。
 また、社会民主党が後任に推しているシュマルダ氏について、文化関係の専門家ではないからうまくいくとは思えないと語っている。しかし、専門家ではないという点にかけては、大統領が擁護するスタニェク氏も負けていないはずである。この発言は、かつて首相時代に文化大臣に据えて成功を収めた演劇界出身のドスタール氏を念頭においてのものかもしれないが、ドスタール氏は例外で以後の演劇、映画などの文化業界から出てきた文化大臣は人選ミスとしか言いようのない人が多かった。

 それはともかく、この三者会談の失敗で、社会民主党の下野は決定かと思ったら、未練たらしく来週12日にもう一度会談が行われることになった。15日前後には、社会民主党がどうするのか最終決定するということのようである。この日程には、七月に入って夏休みに気を取られている政治家も多いので、バカンスに出かける前にけりをつけたいという思惑があるようだ。
 党首のハマーチェク氏もゼマン大統領のやり口に、次第に政権離脱の方向に傾きつつあるようだが、ANOとの連立に反対していた元内務大臣のホバネツ氏が、「だから言わんこっちゃない」的な発言をしている。この人、社会民主党内ではゼマン支持派に属していたはずなのだけどどういう心境の変化なのだろうか。とまれ、地方組織を中心に、党内では政権離脱を求める声が強まっていて、ハマーチェク氏も無視できなくなっているようである。
 仮に、12日の会談でも話がまとまらず社会民主党が連立を解消した場合には、下院の解散総選挙か、バビシュ氏が再度組閣をして下院に信任を求めるということになると理解していたのだが、ゼマン大統領の考えでは、社会民主党の大臣が辞任しても、大臣の首を挿げ替えるだけだから内閣改造に過ぎず、改めて信任を求める必要はないということになるらしい。すでに、その場合に誰をどの大臣に任命するかすでに決めているという話もある。

 いやはや、もうめちゃくちゃである。ゼマン大統領自身も首相時代に、当時のハベル大統領が大臣の任命だったか、辞任だったかに関して疑念を呈して手続きに時間をかけたときに、大統領の権限を逸脱していると強く批判した過去があるらしいのだけどね。ただ、ハベル大統領とクラウス大統領は国会議員の選挙によって選出されたのに対して、ゼマン大統領は国民の直接選挙によって選出されているから、その分権限が大きくなるのは当然だと主張しているから、前例については歯牙にもかけていないかもしれない。
 問題は、このゼマン大統領の、直接選挙で選ばれた大統領の権限は大きくてしかるべきだという主張に賛同する専門家が存在せず、大統領が好き勝手やるための言い訳のようにしか響かないという点である。まあ直接民主主義党なんてトチ狂った党名を使っているオカムラ党あたりは賛同しそうだけどさ。

 このゼマン大統領が引き起こした大騒ぎで、バビシュ首相の指導力のなさってのも露呈したのだけど、それでも世論調査によれば、ANOを支持する有権者の数が一番多いようである。バビシュ首相をゼマン大統領の被害者と見る人もいるのかもしれない。いずれにせよ、茶番はまだまだ続くのである。
2019年7月5日23時。










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