2019年05月19日
チェコ被告に(五月十七日)
チェコと、ハンガリーと、ポーランドの三カ国が被告となった裁判が、EUの司法裁判所で始まったらしい。最初に「チェコが」と聞いたときには、バビシュ首相の「コウノトリの巣」事件をはじめとして、EUの助成金をめぐる不正が頻発していることをとがめられての裁判かと思ったのだが、そんなことはなかった。ちなみにEUの助成金に関しては、この手の助成金にありがちなことに、コンサルタントなんかの助成金ビジネスが横行していて、何でこんなのに金出すんだというプロジェクトも多い。
それはともかく、一緒に被告にされたポーランド、ハンガリーの存在からもわかるように、ことは助成金なんかではなく、ヨーロッパに押し寄せた難民、もしくは不法移民の受け入れに関して、国ごとに受け入れ枠を設定するという政策に反対し、現在でも反対してつづけていることがとがめられたのである。
メルケル首相の失策でとめどなく押し寄せるようになった難民の数に耐えられなくなったドイツが中心となって、半ばごり押しのようにEU委員会で決定されたのが、この難民の国別受け入れ数を割り当てて、無条件で受け入れさせるという政策だった。ごり押しというのは、チェコを含む三カ国以外にも、この制度に反対していた国は旧共産圏を中心にいくつもあったのに、ドイツの圧力に負けて、スロバキアのように最終的にはしぶしぶ賛成に回ったからである。
それに対して、チェコでは、ほぼすべての国政政党がこの政策に関しては、当初から一貫して反対の立場をとっており、ドイツがあれこれ脅迫めいたことを言ってきたときにも、形だけでもいいからと泣き落としにかかったときにも、態度を変えることなく反対し、割り当てに基づく難民の受け入れは、拒否し続けている。それは、ポーランドもハンガリーも同じである。
その結果として、この三国以外での強制割り当て数に基づいた難民の受け入れが始まったかというとそんな様子はなく、どうなっているのだろうと思っていたら、この裁判のニュースで事情が判明した。チェコなどの三カ国が当初から主張していたように、各国に人口などに基づいて受け入れ枠を設定して、難民を割り当てていく制度が、実は絵に描いた餅で、実施不可能だということが判明し、中止になったという。この割り当て制度が機能せず、導入は失敗だったことは、EU内でも合意に達しているらしい。
この割り当て制度の終わりについて情報がほとんど出てこなかったところにもEU委員会に対する不信を感じるのだが、制度が機能しなかった理由は、チェコなどが反対したからでも、制度を拒否したからでもないようである。いや、少し考えれば、不可能だというのはわかると思うんだけどねえ。 そんな、現在では既に存在しない、失敗だったと認められた制度に関して、今更司法裁判所に提訴しても意味はないだろうというのがチェコなど三カ国の反論である。
EU委員会としては、裁判所に、チェコなど三カ国が、委員会の決定を守らなかったという判決を出させたいらしい。そしてその判決をてこに、チェコなど反抗的な加盟国に対する締め付けを強めようとしているのかもしれない。この辺のEUの対応が、旧共産圏の加盟国内で、反EU、もしくは親EUでも改革を主張する勢力が力を延ばしている原因になっている。特にEU委員会の位置づけに関しては、チェコでは簡単に言うと政府でもないのに政府面しているという批判が強く、委員会の決定よりも加盟格国の権限を強めようという主張がなされている。
今回のEU司法裁判所の件が、EU議会の選挙結果に影響を与えるのは当然だと思うが、現在のチェコには完全に今のままのEUの維持を主張している政党はなく、多かれ少なかれ改革が必要だという点では一致しているから、その影響の出方が読みにくい。EU離脱を主張している政党に投票するような人たちは、今回の件がなかろうとEU離脱を支持するだろうし。投票率が高くなれば、どうせANOが勝つのだろうけど、EU議会の選挙の投票率って、これで民主主義が成立するのかと言いたくなるぐらい低いからなあ。不要論がしばしば出てくる上院の選挙より低い投票率(前回が18パーセントほど)で民意を反映しているとかいえるのかねと、他人事ながら心配になってしまう。
2019年5月17日23時45分。
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