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2019年03月10日

お米の話(三月八日)



 昔よく質問されて答えに困っていたのが、日本のもので恋しいものはないかという質問だった。1990年代までであれば、日本語と応えたことだろうが、2000年以降チェコでもインターネットの普及が急速に進んだ結果、日本語で書かれた文章を読むことに関しては、恵まれた環境になっていた。日本語での会話に関しては、日本にいる頃から無理して誰かと話す必要性は感じていななかったし、日本語ができるチェコ人の知り合いもいたから、あえて恋しいと言うべきものでもなかった。
 あれこれ考えた末に、公式見解として、この手の質問への答えとしていたのが、お米である。こちらに来たばかりのころのチェコの米の中にはひどいものが多く、美味しいとかおいしくない以前の問題で、小石なんかが混ざっているものもあった。知り合いに最初にお米と言って食べさせてもらったのは、袋に入ったものをそのままお湯で数分ゆでると出来上がりという、半分インスタントのようなもので、ご馳走してもらっている手前口には出せなかったけれども、できれば二度と食べたくない代物だった。

 普通のレストランで米の付けあわせを注文して、美味しいと思えるようなものが出てきたためしはなく、お米と呼べるものを食べようと思ったら、中華風のお店でチャーハンぽいものを頼むしかなかった。同じ中華でも当たり外れが大きくていつでも満足できるとは限らなかったけど。それから、結構高めのお店に連れて行かれて、ここは米の料理も美味しいと言われたときに、もしかしてと期待して米を使ったリゾットを頼んだら、大外れなんてこともあった。チェコの人が考える美味しい米ってのは、基準がぜんぜん違うところにあるのだろう。
 結局、お米のない生活に堪えられなくなって恥を忍んで日本からお米を送ってもらっていた。お米の値段だけならともかく送料が高いのでそれほどひんぱんにお願いできたわけではないけど、スーパーで単独で食べると微妙だけど、焼き飯にして食べるとそこそこ満足できるレベルの米を発見していたから、それで何とかなっていたのだ。

 状況が変わったのは、10年以上前になるかな、外国からの小包はすべて税関で止めて、税金を課すという悪行が始まったせいである。本来は国外のネットショップで購入した商品に消費税分をかけるはずだったのに、贈り物だろうが自分のものであろうが、国外からチェコに届いた荷物はすべて課税されるようになった。無税にする手続きはもちろんのこと、税金を払って通関させる手続きも面倒極まりなく、課される税額もバカにならないので、日本からお米を送ってもらうのはやめてしまった。

 幸いなことにそのころにはオロモウツに、日本のではなく、日本のお米風のお米、正確にはイタリアやアメリカで生産された日本のお米を売るお店ができて、しかもうちの近くに移転してきたから、お米を食べる回数は確実に増えていった。もちろん、送ってもらっていた日本のお米ほどではなかったけど、チェコの米に比べればはるかにおいしく、お米だけ炊いて食べても満足できるレベルだった。
 そのお店は、お米だけでなくてインスタントラーメンや冷凍食品のギョウザなんかも置いてあって、重宝していたのだけど、オロモウツでは客に限りがあったのか、お店を畳んでネット上での販売だけに営業規模を縮小してしまった。お米がなくなりそうになったので、その店のネットショップを覗いたところ、品揃えが悪化していてお米なんて1kgのものしか置いていない。お店で買うならともかくネットショップでちまちま買って届けてもらうなんてことはやってられない。

 ということで、ネットショップならオロモウツにこだわることもあるまいと、ブルノの知人にどこか知らないかと聞いてみた。教えてくれたのがここ。本当の日本産のお米も買えるみたいだけど、ちょっと高い。それに例の自称日系人政治家のお店だと言う話を聞いて、ここで買う気をなくしてしまった。主義主張にかかわらず政治家を支援する気はないのである。政治家になっていなくてもこのお店は避けてしまっていたかもしれないけどさ。

 結局、うちのが見つけてくれたお店で買うことにした。「花」で「sushi」である辺りがちょっとステレオタイプであれだけど、お米も10kgものがあるしということで、実際に買ったのは去年の12月のこと。クレジットカードが使えなくて銀行振り込みだったり、送料無料にするために1500コルナ以上購入する必要があったり、厄介なところもなくはなかったが、実際にお金を振り込んでからは、郵便局ではない運送会社と契約していて翌日か、翌々日ぐらいには到着した。事前にこの辺の時間に届くという連絡も来ていたし、予想していたより遙に簡単にお米が手に入ってしまった。

 12月に買ったのに何で今頃こんなことを書いているかというと、お米が減ってきてそろそろ新しいのを買う必要が出てきてお米のチェックをしていたら、お米については書いていないことを思い出したからである。海外だと、日本人は寿司だと思っている人が多いけれども、正直寿司なんてどうでもいい。日本人はお米さえあれば生きていけるのである。
2019年3月9日22時45分。






















posted by olomoučan at 07:09| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ
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