2018年10月30日
チェコ鉄道の思い出(十月廿六日)
ヤフーの雑誌のところで記事のタイトルを眺めていたら、「ドイツ鉄道がトラブル時に客をまるで「ゴミ扱い」にした理由」という記事が目に付いた。ドイツの郵便がひどいことになっているという話は、ドイツ在住経験のある方から聞いたことがあったが、鉄道の話は聞いていないので、興味を惹かれて読んでみた。
ドイツ在住らしい著者の記事はこれまでも何回か読んだことがあるのだが、日本では実態を知らないままに礼賛されることの多いドイツの惨状を伝える記事を書かれているようである。日本のドイツ神話を破壊するには、この手の記事が書かれ読まれることは必要であろう。明治時代のようにドイツなどのヨーロッパのやっていることに盲従したら、ろくなことにならないのは目に見えている。
ただ、書かれている内容は事実なのだろうけど、こちらに来てドイツに幻滅してドイツ嫌いに転向した人間が読んでも、そこからそこまで言うかといいたくなるようなことが書かれていることがある。隣国に住んでさえ、たまりにたまるドイツに対する鬱憤である。ドイツ在住の人が爆発させてしまうのは仕方がないのかなあ。以前ドイツの日系企業に赴任している人と話しをしたどきにもドイツの悪口で盛り上がったし、その人は、知り合いの日本人にドイツの悪いところをあれこれ言っても、まともに受け取ってもらえなくてなんてことも愚痴ってたからなあ。仕方がない仕方がない。
さて、枕はこれくらいにして話を記事に戻すと、題名からもわかるようにドイツ鉄道の客に対する扱いの悪さを紹介しているのだが、読みながらかつてのチェコ鉄道のことを思い出してしまった。ただし、チェコ鉄道は、この記事で紹介されているドイツ鉄道ほどひどくはなかった。共産党支配化の時代のことは知らないけれども、1993年のビロード革命以降のチェコ鉄道は、今よりははるかにサービスが悪く、職員の態度も人それぞれで不親切な人も多かったけど、この記事のドイツ鉄道よりはましだった。
現在は鉄道網の近代化がかなり進んだため、電車が遅れることは以前に比べればはるかに少なくなった。それでも、路線補修工事や鉄道事故、天候の関係などで遅れることはままある。そんなときの対応も以前はなかなか情報が入ってこなかったものだが、現在では工事中の路線に関しては最初から遅れる可能性があることがネット上のチェコ鉄道の時刻表なんかにも明記されている。駅の掲示板には途中での遅れの時間をもとに予想される出発時間の遅れが最初から表示されるようになったし、ネット上で個々の電車の運行状況を確認できたりもする。時には遅れ時間が小さくなることもあるから、チェコ鉄道の改善ぶりには隔世の感を抱いてしまう。
昔は、駅のホームで出発時間になってから、遅れが表示されて、それもいきなり30分とか60分とかで、もっと早く遅れることを通知しろよと腹を立てることも多かったのだが、当時はまだ各駅を結んで到着、出発時間の情報を集約するようなシステムが出来ていなかったのだろう。オストラバでペンドリーノを待っていていきなり120分の遅れと表示されたときには、目の前が暗くなった。ペンドリーノだからというので待って、来た電車を見てみれば、昔ながらの古い車両でオロモウツに着いたときにはさらに遅れ時間は大きくなっていた。検札に来た車掌の話では、オストラバ行きのペンドリーノで鉄道事故が起こったせいで、遅れただけでなくペンドリーノが使用できなくなったということだった。駅で手続きをすれば払い戻しに応じるということだったが、面倒なので手続きはしなかった。
記事では、鉄道が運休した場合の代替バスの運行についても批判されているが、チェコはこの手の代替バスが日常茶飯事だったせいか、対応にも慣れていて問題だと感じたことはほとんどない。チェコ語ができない人には問題になる場面もあるだろうけど、少なくともチェコ語では十分以上の情報が出されているし、代替バスの運行をバス会社に委託しているとしても、あくまでチェコ鉄道の電車の一部として運行しているので、電車の到着が遅れた場合も、電車が到着して乗客が全員乗り換えるまでは待っていてくれる。
以前、まだチェコ語がろくにできなかったころには、代替バスに乗り換えなければならないことに気づかずに電車の中に座っていたら、駅員さんがやってきて他の外国人何人かと電車から引っ張り出されてバスのところまでつれて行かれたこともある。電車はその駅でとまって折り返しもとの駅に引き返すことになっていたようだから、電車から降りずにのんきに座っている外国人を見かねて助けに来てくれたのだろう。遅れた我々が乗りこむまで、バスも待っていてくれた。もちろん、駅員のみんながみんな親切だったわけではないけどさ。
チェコ鉄道のサービスがよくなったのは、以前も書いたけど路線管理会社と運行会社に分離して、チェコ鉄道と同じ路線を私鉄の電車も走るようになってからだ。最初に参入したレギオジェットが、もともと長距離バスの運行で業績を伸ばした会社で、航空運賃のような変動性の運賃や、サービスをよくしてリピーターを増やすことで利用客を増やすという戦略を導入していた。それを鉄道にまで持ち込んで、チェコ鉄道から乗客を奪うだけでなく、鉄道の利用客自体を増やしたようにも見える。とまれ、この私鉄の参入がチェコ鉄道のサービス向上を促したことは間違いない。
また、複数の鉄道会社が参入できないようなローカル線の場合にも、チェコ鉄道の独占がなくなり、運行を担当する企業を入札で決めるところが増えてきており、入札で勝つためにもチェコ鉄道は新しい車両の導入を進め、その結果として乗客の満足度は高まっているようである。ローカル線の運行自体は大半は赤字なのだが、地方自治体からの補助金で補填されている。これもチェコ鉄道がサービスの向上に努めなければならない理由になっている。乗客の不満が高まれば、補助金を出している地方から指導が入ることになるわけだし。
正直な話、チェコで一般的に利用客へのサービスが向上しているのには、EUの指示があったものだと考えていた。携帯電話の国外への通話料金を下げさせるとか余計なお世話じゃないのかといいたくなるようなことにまで口を出していたし。ただ、この記事に見るドイツの惨状からはそんなことはなかったという結論を導くべきなのかもしれない。いや、どんなにひどいことになっていても、EUの僭主たるドイツにはEUからの指導は入らないと考えたほうがいいのか。やつらが細かいことでいちゃもんをつけるのは基本的に旧共産圏の国だからなあ。ドイツあたりの企業が悪辣なことをやろうが放置されることが多いしさ。
2018年10月27日23時55分。
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