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タグ / 短縮版拓馬

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拓馬篇−10章◇ ★ [2018/08/03 23:00]
 ヤマダが目を開けた。どこかの建物の天井が視界に映る。それがなんの建物なのかわからず、ぼーっとした。  一秒一秒を経るごとに、寝起きのヤマダは直近の記憶がよみがえっていく。この場は異質な空間だ。ヤマダは古馴染みと新参の仲間と一緒に、大蜘蛛の怪物をどうにかしようとした。そんな危険な冒険を共にした相棒が、声をかけてこない。 「タッちゃん、どこ?」  返事はなかった。床に寝ていたヤマダはむくりと上体を起こす。教室内に人の姿はない。拓馬はどこかへ行ったのだろうか。まずは椅子に座..
拓馬篇−10章2 ★ [2018/08/02 23:30]
 防音部屋のような静寂さの中、拓馬は自分のすべきことを思い悩む。 (シズカさんを待つにしても、ぼーっとしているわけにいかないよな)  この場でやれること。それは体育館の扉に設置してあった最終問題の答え探しだ。 (七文字の単語を答えるんだっけか……?)  七つの解答用の小道具はそろっている。しかし解答は未着手だ。おそらくヤマダもまだ答えの候補を見つけていない。 (ちょっくら考えてみるか)  問題の訳文のメモや、問題を訳す際に参考にした異界の文字一覧表などはすべてヤマ..
拓馬篇−10章1 ★ [2018/08/01 23:00]
 拓馬とヤマダは無口な仲間を連れて、蜘蛛がねぐらとする校舎にもどった。二階へ続く階段は依然として極太の白い糸で装飾されている。これが大蜘蛛の縄張りだ。その範囲は二つの校舎をつなぐ連絡通路にはおよんでいない。  拓馬たちが階段をのぼりきる直前、ヤマダが仲間に引き入れた武者の霊が前方へ行く。彼は下向きに矢を弓につがえていた。臨戦態勢のようだ。 (見えてなくても、わかるのか)  武者はすでに異形の気配を捕捉している。その証に、武者は二階廊下へ出るとすぐさま矢を放った。奇怪な音..
拓馬篇−9章6 ★ [2018/07/26 20:00]
 拓馬はヤマダと二人きりになる。現在は自分たちを守る者のいない状況だ。 「行っちまったな……」  脇腹が寒くなるような、心もとなさを拓馬は感じる。 「お前はあいつと一緒にいるべきだと思うか?」 「いたらたのもしいけど、しょうがないよ」  ヤマダはケロっとした顔でいる。 「一度、大きい蜘蛛を見てみよう。たおさなくてもキツネ捜しができるかもしれない」 「そうだな。でも危なそうだったらすぐ逃げよう」  その判断は保身とシズカへの配慮をふくむ。 「シズカさん、俺..
拓馬篇−9章5 ★ [2018/07/25 22:40]
「さあて、行きましょう」  赤毛が拓馬とヤマダを抱え、二度目の飛行を行なう。またたくまに中庭に続くガラス戸の前に到着した。拓馬たちは慣れたもので、今度は赤毛にしがみつかなかった。  拓馬は透明な開き戸を押す。反対校舎へ続く経路から横にそれた先が中庭だ。 「この噴水に問題が設置されています」  赤毛がそう言うので、拓馬たちは噴水へ近づく。噴水は今なお稼働し、水を下から上へと循環させる。流動する水は淡い光を放つ。 「噴水に照明はついてたっけ?」  ヤマダが非日常的な仕..
拓馬篇−9章4 ★ [2018/07/23 21:10]
「一つ、術者が彼女限定で開けられるよう細工した。判別方法は彼女の掌紋なり生体反応なりあるでしょう。二つ、箱になんらかの術がかかっていて、その術を解除する能力を彼女が備えている。これは稀にいます。たとえばシズカさんはその力を持っています」 「シズカさんが……?」  シズカとヤマダの二人だけができること。拓馬は少女が告げた狐救出の条件を思い出した。赤毛が三つめの話に進むのを、拓馬は手を上げて止める。 「さっき、あの女の子が言ってたんだ。シズカさんが俺たちを守るために送ったキ..
拓馬篇−9章3 ★ [2018/07/22 17:00]
「箱を集めてきましたよ。解答は任せます」  赤毛は両手に持った箱をヤマダ付近の机に置く。あらたに現れた箱は二つだ。 「二個か……さっきあんたが持ってきたのは三個で、一個はとなりの教室にあったから……全部で六個だな」 「あとひとつは持ちはこべない場所にありました。ここにある箱を処理した後、ナゾナゾを解きに行きましょう」 「了解。んじゃ、やってくか」 「よーし、どれから……て、あれ? タッちゃんがもう解いたのもあるの?」  ヤマダは紙が乗る箱に注目した。その紙は拓馬が..
拓馬篇−9章2 ★ [2018/07/21 23:59]
「なあ、俺たちっていつになったらここを出させてもらえるんだ?」  拓馬は自分たちを監禁した者の縁者に問う。銀髪の少女はヤマダに寄り添ったままだ。 「わかんない」 「あの大男はお前にも教えてないのか?」 「うん……」  少女がうなずいた。知らないのなら仕方ない、と拓馬は別の質問に切り替える。 「あいつはどこにいるんだ?」 「いちばん広いへや」  拓馬は学校でもっとも広い一室がどこかを考えた。図書室、職員室、食堂、校長室、道場など、一通り思い浮かべてみたがどれもピ..
拓馬篇−9章1 ★ [2018/07/20 23:00]
 コンコン、と教室の戸が叩かれた。戸の窓ごしに赤毛の頭部が見える。赤毛が入室してくると、その片腕には箱が二つ抱かれ、さらにその箱の上に箱をひとつ乗せていた。 「一時、置きます。これ以上は運びにくい」  赤毛は拓馬たちのそばにある机に箱を置く。 「嬢ちゃんのほうは昼寝中ですか?」 「まだ起きてない。箱の問題は俺が解くよ」 「そうですねえ、この問題文の翻訳と答え探しをアナタに任せましょうか」  赤毛は箱をひとつ拓馬に見せる。設問は「What is the longes..
拓馬篇−8章6 ★ [2018/07/19 23:59]
 拓馬は椅子を持ち寄った。自分と、銀髪の少女が座るためだ。拓馬がひとつめの椅子をねむるヤマダの隣りへ仮置きすると、色黒の少女がそこに座った。拓馬は内心、椅子を置く場所をしくじったと思う。もと化け物をヤマダのそばにいさせる気はなかったのだ。 (でもだいじょうぶ、だよな?)  少女はヤマダの手をにぎる。その動機は不可解だが、ヤマダを好意的に見ているらしい。拓馬は少女の座席をそのままにしておいた。  銀髪の少女と向かい合うように拓馬が座る。 「お前、シド先生と似てるな。先生..
拓馬篇−8章5 ★ [2018/07/18 23:50]
 ヤマダはひとつめの箱があった教室を出た直後、廊下の突き当たりへ向かう。 「こういうのは端っこから攻めていこう」  隣の教室に行くのを赤毛が引きとめる。 「そちらは例の怪物がいました。注意してください」 「そうなの? 様子だけ見ておくよ」  ヤマダの言動には拓馬も不安を感じた。職員室前ではヤマダが化け物を視認できていたが、ほかの個体も見える確証はない。 「俺がさきに見る。お前じゃ見えないかもしれない」  拓馬は未確認の教室を戸の窓からのぞく。赤毛の言う通り、黒い..
拓馬篇−8章4 ★ [2018/07/17 00:45]
 ヤマダは教卓に置かれた木箱を持ち上げた。四方から箱の形状を確認する。上へ下へと観察したところ、上面の問題文が普通に読める位置から見える側面──正面側に、取っ手のついた引き出しがある。 「じゃ、引き出しを開けてみるよ」  ヤマダは引き出しを開けた。中にはアルファベットが書かれた正方形の木切れがある。大きさは二センチ四方ほどの板だ。この木製のピースを使って解答するらしい。 「ピースのダブりはない……みたい」  解答の道具を発見したのち、拓馬たちが改めて英文を見る。「Wh..

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