先日、妻が PTA の仕事でベルマークの集計作業をしていました。
集まったベルマークはザッと見て、用紙約1000枚、10万点分ほどありました。
私は、その数にギョッとしました。
妻が、夜遅くまでどのような仕事をしていたかと言うと、用紙に貼られたマークの点数と集計に違いがないかチェックをして、間違っている物を修正、全ての合計をまとめるというものでした。
たかだか、同じベルマークを100枚程貼るだけだから、間違いなんてほとんどないだろうと思うじゃないですか。
それが、結構間違いがあるそうなんです。間違った点数を貼っているもの。合計が違っているもの。数が違っているもの。意外とミスをする人が多いのだそうです。
1000枚ほどのチェックと集計に結構な時間がかかっていました。
そこで私が、ふと思ったのが、テープでベルマークを貼り付けている点です。物価高騰で文房具の値段も2割ほど上がってしまいました。テープって意外と高いんです。一巻き70円くらいはするものもあります。百円ショップで購入すればそれなりに安いのですが、止めてあるテープを確認したところ、しっかりとしていて百円ショップのものではありませんでした。
単純計算で1000枚分のベルマークは10万円相当の備品と交換できるようでした。
この時、職業柄、原価計算が頭をよぎりました。
1シートにかかる費用
用紙代 1.5円
テープ代 7円
印刷代 (輪転機) 2円
人件費 1枚分約20分 330円
1000枚にかかる費用は、340,500円。
他にも筆記具や移動費など細かなものはありますが、それは省いても10万円分の備品と交換するために、その3倍以上もの出費を費やしていることになります。10万円分とありますが、それは定価での話。今の時代、定価で物を購入する事はないでしょう。相場では定価の6〜7割程度が一般市販価格です。それを考慮すると5倍の経費とも考えられます。
集めた用紙のその後の事を考えると、ゴミになります。そのゴミを処分する費用やベルマークを運んだり、提出したベルマークの確認をする人の事を考えると、環境や人的資源の無駄遣いとしか言えません。
普通の企業でも人手不足で困っている昨今、PTA役員も同じです。なりたいという人はほとんどいません。順番だから仕方なくやるという方ばかりです。忙しい合間をぬってやってもらっている役員に、時給換算で300円以下のベルマークの集計を何時間もやらせるのは、はっきり言って酷です。
もし、数時間の「ベルマークの集計」の仕事をしなくても良いと言われるのであれば寄付金を払っても良いくらいです。PTA はもっとやらなければならない他の仕事がたくさんあるんです。
ベルマークは、お金を稼ぐことができない子供が社会勉強でしていたものだと思います。
昭和の時代には、良いシステムだったのかもしれませんが、令和の時代にはそぐわず時代に逆行したシステムだと考えてしまいます。
そんな話を妻としていると、来年からは通っている学校ではベルマーク集めが廃止されるのだそうです。子供も今年、卒業するので、どちらにせよ解放されていたのですが…。
もしベルマークを残すとすれば、スマホで「ピッ」と読み込みするだけでポイントが貯まり、自動集計されるくらいのシステムを作るべきです。
ベルマークに関するジレンマが、私の今までの仕事と重なる事柄があるので紹介させて頂きます。
それは「エコ事業」です。ある大きな企業のプリンター故障で出張対応をすることがありました。メンテナンス契約を結んでいない、50万円ほどするトナー型プリンターでした。
原因は、紙詰まりでした。詰まった紙を取り出すとローラーに紙の粉が大量に付着していました。担当者と話しをしたところ、そのプリンターには再生紙と裏紙を多く使っているようでした。再生紙は通常の紙よりも質が悪く引っかかりやすく、紙クズも多く出ます。また、一度印刷した裏紙の使用も紙詰まりを起こす大きな原因です。
さらに担当者と話をすると、頻繁に紙詰まりを起こしており、今回は詰まった紙が見つけられずに依頼をしたそうです。プリンター自体は古いものではなく、数年前に購入したそうです。購入する前のプリンターも紙詰まりが頻繁に出たために交換したそうです。
トナー型プリンターはおおよそ10年。大事に使えば20年でも使えるものです。それが3〜4年程度で買い替えです。担当の方も、「本当は再生紙は使いたくないんだけど、会社の決まりで使わざるを得ない」と、言っていました。
名ばかりエコ事業として行っていて、現場の人間は苦労しているんです。しかも、修理屋を呼んだり、買い替えサイクルが短くなっていては、環境に悪いばかりか経費も増えています。
再生紙を製造するためには、通常の紙を製造するよりもコストがかかるそうです。なのに生産する理由は、国から補助金が出るからです。お金をかけて、機械の寿命を下げ、廃棄物を出すサイクルを早めていては「エコ事業」なんて言えません。企業の役員は「エコ事業」に取り組んでいるという冠が欲しいのでしょう。
そういった「間違ったエコ」は現場の人間を苦しめます。思いつきで考えた政策にはたくさんの思い違いが含まれています。
生活をしていると、こういった矛盾した事があふれかえっているのに気づきます。
どんな事でも良く調べて周りに流されないよう、判断したいですね。