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車窓楽しめないリニア計画に失望



「えっ、車窓から富士山が見えないの!」「駅に、待合室も切符売り場もないなんて」−。

 JR東海が平成39年の開業(東京−名古屋間。名古屋−大阪間は57年)をめざすリニア中央新幹線で、地上走行区間の軌道を「土管」のようにコンクリート製の防音フードですっぽり覆う計画に、沿線の自治体から不満の声が噴出している。4カ所の中間駅もできる限りシンプル化してコストカットする方針。鉄道ファンや沿線住民は、世界に誇るべきリニアの“雄姿”を楽しみにしているのだが…。

 「下水道管という感じ」。横内正明・山梨県知事は、防音フード計画を酷評する。リニア新幹線は、東京−名古屋間約286キロのほとんどがトンネルで、地上部分は全体の13%の約38キロしかない。このわずかな地上走行区間は山梨、長野、岐阜の3県を通ることから、各県は「リニアを眺められる県」として国内外にアピールする好機と意気込んだ。さらに、富士山の世界遺産登録を受け、「リニアの車窓から富士山が見られるかも」とグッド・タイミングの“朗報”を喜んでいた。

 ところが、JR東海が5〜6月に開催した地元説明会で、それがぬか喜びに変わってしまった。リニア新幹線は、最高時速約500キロで走るため、風切り音が大きく、騒音対策が不可欠だ。JR東海は、「新幹線の騒音の環境基準(住宅地で70デシベル以下)を満たそうとすれば、コンクリート製フードで覆うのが最も合理的」と説明する。

 甲府市の宮島雅展市長も説明会で、「甲府盆地にかまぼこ型の土管をつくられては困る」と痛烈に批判し、改善を求めた。「透明な樹脂製かガラス製のフードにしてはどうか」との意見も浮上している。これに対し、JR東海は「騒音防止効果に加え、土砂崩れ時の安全性やメンテナンスの問題もあり、難しい」と難色を示す。

 計画中の4つの中間駅のうち3駅は、山梨、長野、岐阜3県に一つずつ設置される見通しで、地元の期待は大きい。ところが、中間駅は「効率性・機能性を徹底追求したコンパクトな駅」がコンセプト。JR側が最低限必要な施設を整備し、商業施設などは地元が費用を負担して整備する。これまでの形にはとらわれない“新駅”をめざす。その結果、駅の出入り口は1カ所で、エレベーターやエスカレーターでホームに直結する。トイレはあるが、待合室はない。専任の営業要員も置かないため、切符売り場もない。

 これに対し、「駅に待合所はあるべきだ」(横内山梨県知事)など、沿線自治体の首長からは設置を求める声も相次ぐが、JR側に譲る気配はない。JR東海の山田佳臣(よしおみ)社長は「これで十分だ。地元が必要だと思うものは、地元が用意すればいいことだ」と突っぱねる。

 リニアが従来の新幹線と大きく違うのは、国が巨額の資金を投入する国家プロジェクトの公共事業ではなく、JR東海が建設費を全額負担するという点だ。東京−名古屋間の建設費はざっと5兆4千億円。また、当初は沿線自治体に全額負担を求めていた中間駅の建設費用(1カ所約350億円)についても全額自己負担する方針に切り替えた。このため、「建設費を少しでも安くしたい」というのがJR側の本音だ。切符の予約販売システムを導入することで、中間駅の切符売り場も廃し、コスト削減を徹底した。

 リニア新幹線の建設費用をJR側が全額負担する手前、中部の沿線各自治体も強硬に反対意見を唱えにくいという事情があるようだ。鉄道ファン向けに入場券をインターネットなどで事前販売するのかなど、決まっていないことも多い。鉄道アナリストの川島令三氏は「悪天候や鳥などの衝突事故を考えると、コンクリートのフードで覆うのが合理的。写真撮影は難しいだろう」と指摘する







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