2019年01月29日
日本人と欧米人で脳が違う? 母国語で変わる脳内ネットワーク
英語をどうすれば効果的に身に付けられるのか。英語教室や英語会話があふれるようにあり選択に悩んでいる人も多いだろう。そんな外国語学習の選択に悩む方の参考になりそうな、脳の研究が発表された。
外国語の習得には脳の仕組みに基づく方が効果的だと思われるが、母国語が日本語の脳と母国語が英語の脳には違いがある。使う母国語によって脳内ネットワークが変わり、“日本語の脳”や“英語の脳”のように脳の活動に違いが出ることが、研究により分かってきた。
□母国語が日本語と英語では、脳内ネットワークが違う
認知心理学が専門で熊本大学文学部教授の積山薫博士と、神経科学が専門で札幌医科大学医学部の篠崎淳助教、国際電気通信基礎技術研究所らのグループは、人の話を聴くときの脳内ネットワークの活性の仕方が、日本語母語者と英語母語者で異なることを明らかにした。
向かい合って人の話を聞くとき、耳からの聴覚の情報だけを受けるのではない。どのように聞こえるかは「口の動き」という視覚的な情報にも影響を受けて、視聴覚統合(視覚と聴覚それぞれの情報を脳内でまとめること)が起こることが知られている。
□日本語が母国語の人は「口の動き」の視覚情報の影響を受けにくい
日本語を母国語とする人の場合、英語を母国語とする人ほど「口の動き」の視覚情報による影響を受けないことが、これまでの研究でも分かっていた。
そこで母国語による違いが脳のどんな活動の違いと関係あるのかを調べるために、機能的MRIで日本語母語者と英語母語者それぞれ20 数名の脳活動を計測した。そして脳活動パターンを解析した結果、違いが明らかになった。
□耳からの音声と口の動きの視覚情報の受け取り方が違う
英語を母語とする人は、視覚的な情報を処理する「MT野」という部位と聴覚野との結びつきが、日本語を母語とする人よりも強かった。
つまり英語が母語である人は、耳から聞こえる音の脳内処理と、見えている口の動きの脳内処理が密に連携しているのに対して、日本語を母語にする人ではこの連携が弱いという結果だった。
これまでも日本語母語者と英語母語者では音声や口の動きなどの視覚情報の受け取り方に、違いがあることが知られていたが、脳内ネットワークの活性化パターンのデータにより裏づけがされたといえる(※2)。
□海外で定評のある外国語学習法は効果がない?
今までも欧米人が外国語を学習する場合には、音声だけではなく話している人の口元が見えるビデオを学習に取り入れると効果的だといわれていた。欧米人は「口の動き」の視覚情報に影響を受けやすい脳の働きがあるため、口の動きを見ることで外国語習得が効果的に進むのだ。
ところがなぜか日本人の場合は、同じビデオ学習法では効果がないという報告がされていた。
今回の研究によりその理由が判明し、欧米人の脳とは脳内ネットワークが違うために、欧米で効果的な学習法が日本人では効果が出ないのだということが明らかになった。
欧米では外国語学習に関する研究は古くから行われている。近年は脳の研究も進んでおり、脳科学に基づいた効果的な学習法などもいろいろ紹介されているが、日本人と欧米人では脳の情報処理方法に違いがあるため、日本人に合った学習法を選択する必要があるだろう。
□日本人の脳に合う学習方法を探すべき
じゃあどうすれば良いのか? その質問に関する答えは残念ながらまだ見つかっていないようだ。
英語学習では子どもの学習開始時期も悩みのひとつだが、文部科学省が英語教育の低年齢化を進め、小学校3年生から英語教育を開始する方針を固めた。しかし、日本語学習との兼ね合いや教員確保などで、賛成や反対さまざまな意見があるようだ。
ただ、これからさらに脳の研究が進めば、子どもに最適な外国語学習開始時期や、日本人の脳に合う学習方法などが、脳科学的にも明らかになっていくかもしれない。
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