2019年01月02日
脳にはカーナビ機能がある 暗闇でもトイレにたどり着ける理由
私たちの脳内にはカーナビに似た道案内システムが備わっているようだ。これは、沖縄科学技術大学院大学の研究グループがマウスによる実験で明らかにしたもので、ある計算メカニズムが関係しているという。
人間は、暗闇のようなごく一部の情報しかない場合でも、「動的ベイズ推定」という計算メカニズムを脳内で計算することによって自分の位置を把握し、次の方向を示すことが可能になるようだ。この発見は、人間のように自ら考えることのできるロボット、いわゆる人口知能の開発などにも影響を与えることだろう。
□数学が苦手な人はいない!
目の前のマグカップに手を伸ばす。飛んできたボールをキャッチする。私たちが何気なく行っているこのような動作も、実は脳内では複雑な計算が行われた末の結果だ。数学が苦手という人もいるだろうが、なんのその。たとえ、計算式を見るだけで頭痛がすると言うような人でも、無意識のうちに脳内ではいとも簡単に、しかも瞬時にして、微分・積分計算などの複雑な計算が行われているのである。
脳内でどのような計算が行われているのか、その全容は未だ不明であるが、計算理論は徐々に明らかになりつつある。そして、脳の計算理論が明らかになれば、それを応用して人間のように考えるコンピューターであるAI(Artificial Intelligence=人口知能)を作ることも可能と考えられている。
□暗闇でもトイレにたどり着けるのはなぜか?
沖縄科学技術大学院大学の研究グループは、そんな脳内の複雑な計算メカニズムの一端を明らかにした。例えば、夜中にトイレに行きたくなり目が覚めたとき、暗闇でも何となく、いつもの経験から手探りでトイレにたどり着くことができるだろう。限られた情報をもとにして、今自分がどのような状況にあるのか、どこにいるのか、そして次にどちらに進めば目的の場所にたどり着けるのか――。そのような状況に置かれたときに、私たちの脳内ではどのような計算が行われているかを、研究グループはマウスを使った実験で明らかにした。
マウスは、音を頼りに餌の場所まで到達するようにトレーニングされたが、一時的に音がない状況でも餌の場所を推定し、目的地に到達することができる。研究では、そのような状況にあるマウスの脳内神経細胞の活動を読み取ることで、「動的ベイズ推定」という計算をマウスの脳が行っていることを明らかにしたのだ。もちろん、マウスは自分の脳がそんな複雑な計算をしているとは知る由もないのだが。
今回の研究結果は、今後の人口知能の開発にも重要な知見を与えるのみならず、人はなぜ、そしてどのように「思考」するのか、心(脳)に病気を抱える人の脳で行われる計算メカニズムは、健康な人とどのように違うのかといった疑問の解決にも貢献するものと考えられる。
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