2017年05月02日
日本はジェネリック医薬品導入が遅い? 今更聞けない製薬業界の仕組み
アメリカではジェネリック医薬品のシェアが90%を超えているが、日本はいまだに30%程度だという。
政府は2018年3月までにシェアを60%以上にするという目標を掲げており、安価なジェネリック医薬品の使用が、膨らむ医療費の軽減に期待されている。
□同じ品質・有効成分・効果効能の薬 あなたはどちらを選ぶ?
同じ品質、同じ有効成分、同じ効果・効能の薬が2種類あるとする。一方は価格が高く、一方は安い。あなたはどちらを選ぶだろう?
もちろん、この情報だけなら何か特別な理由がない限り、後者を選ぶだろう。
しかし、前者と後者では製造している会社が違う。前者にはその薬を製造している長い歴史と実績があり、後者はその薬を製造し始めてまだ日が浅い。前者は先発医薬品と呼ばれ、後者はジェネリック医薬品と呼ばれる。
この場合どうだろう。あなたはどちらを選ぶだろうか? もちろん、それが何の薬かにもよるだろう。ちょっとした胃腸薬なのか、それとも命に関わるような薬なのか。
□日本人はジェネリック医薬品の使用に慎重な傾向?
日本人はジェネリック医薬品の使用に慎重な傾向がある。
「もうちょっと様子を見てから……」そう思っている人も多いだろう。アメリカやヨーローッパにおけるジェネリック医薬品の普及率は高いが、日本ではいまだ30%程度でしかない。
□医薬品特許 莫大な医薬品開発コストとジェネリックの関係
医薬品の開発には10〜20年の年月と何百億という費用がかかる。また、薬の候補物質から実際に薬になるのには3万個に1個の割合だ。
これだけの労力を費やして新薬を開発した企業への見返りが特許である。
特許はその薬を開発した会社に独占的に製造を認めるもので、他社が同じものを作ってはならない。通常の特許権は20年だが、薬は開発に時間がかかるので例外的に25年までの権利が認められている。
□医薬品特許が切れれば成分公開。 安価にジェネリック医薬品を作れる
つまり、20〜25年間、新薬を開発した会社はその利益を独占できるのだ。
しかし、特許が切れた後は他社も同じ薬を作ることができる。成分も全て公開されているので、開発期間も費用も先発医薬品とは比べものにならないほど抑えられ、薬の値段も安価にできる。こうしてできた薬がジェネリック医薬品だ。
□成分を公開したくない! 絶対にまねされないためには特許を取らない?
特許法の目的は産業の発展だ。実は特許を取ろうと思ったら、その内容は全て公開しなくてはならない。そして、20年間の独占の代償は、他者にまねを許可することだ。そうやって社会に新たな技術が導入され、産業が発展する。
もし、他者に絶対に教えたくない技術があったらどうしたらいいか。ノウハウとして秘蔵するという方法がある。コカコーラの製造工程が特許になっていないのは有名な話で、情報が公開されるのを防ぐためである。
製造工程はノウハウとして厳重に秘蔵されているのだ。製造工程は細分化され、社長などごく一部の幹部しか知らないとされている。
□先発医薬品とジェネリック医薬品の違い
先発医薬品とジェネリック医薬品。同じ品質、同じ有効成分、同じ効果・効能を持っているが、全てが同じというわけではない。一卵性の双子が全く同じ遺伝子を持っているにもかかわらず、どこか違うのと似ている。
全く同じ成分の薬でも企業によって作り方が違うだろうし、錠剤ならその形も違うだろう。そういった違いが薬の「実際の効き方」にどの程度関わるのか、詳細は誰にも分からない。
しかし、基本的には先発医薬品とジュネリック医薬品の「実際の効き方」に違いはないと考えられている。ジェネリック医薬品も国の厳しい審査をクリアし、薬事法に基づいた厚生労働大臣の承認を受けているのである。
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