2016年12月16日
「日焼けサロンは危険だ!」 米国で「利用規制」強まる
日焼け大国、米国で日焼けサロン規制が進んでいる。すでに42州で利用規制はあるが、それらはあくまで州ごとの、いわば条例のようなものだった。
しかし、2015年12月、米国内の食品や薬品、医療機器に関する法律の施行、消費者保護の権限を持つ米国食品医薬品局(FDA)が、「日焼けサロンの利用には危険性がある」と明言し、年齢制限を含む全国的な規制案を米政府に提案したのだ。
米学会「日焼けは自滅行為」 FDAが提案している規制の内容は、「18歳未満の利用禁止」、「成人も利用前にリスクを明記した同意書に署名をする」となっており、かなり厳しく制限しようとしているのが見て取れる。
米国以外でも、豪州やブラジルは日焼けマシンの商用利用が禁止、イギリス、フランス、スペイン、ドイツなど欧州各国では未成年の利用が禁止されるなど、規制が進んでいる。日焼けサロンでやけどを負うなどの事故報告があるのも事実だが、規制までしようとする最大の理由は、紫外線の浴びすぎによって発症する「皮膚がん」の多さだ。
皮膚がんは米国で最も一般的ながんとも言われ、症例数は乳房、前立腺、肺、消化器官のがんの合計よりも多い。米国立がん研究所によると、毎年約200万人が皮膚がんと診断され、米国人の5人に1人は生涯で必ず皮膚がんになっているという。豪州出身だが、俳優のヒュー・ジャックマン(47)も、2016年2月9日に自身のインスタグラムで、皮膚がんの再発のため、4度目の手術を受けたことを公表した。しかし、紫外線を浴びる機会は日焼けサロンに限らず、屋外での太陽光も同じはずだ。ヒュー・ジャックマンも「子どものころに日焼け止めを使っていなかった典型だ」とコメントしている。
紫外線対策を徹底するだけでもいいように思えるが、「日焼けサロンで焼く」ことが皮膚がんリスクを上昇させるとしたエビデンス(研究に基づく科学的な証拠)が存在している。2013年にカリフォルニア大学の研究チームは、欧米の6か国、約8万人のデータを分析し、日焼けマシンを使って肌を焼いている人は、焼かなかった人に比べ、最も一般的な皮膚がん「基底細胞がん」発症リスクが29%、2番目に一般的な「扁平上皮がん」リスクは67%高い、と発表している。
致命的で危険とされる「メラノーマ(悪性黒色腫、ほくろのがんとも)」のリスクも59%増加するとされ、米国皮膚科学会はこの研究を受け、「日焼けマシンの利用は自滅行為」とすらコメントした。
利用するかしないかは自己責任、と言いたいところだが、2014年にマサチューセッツ総合病院とハーバード大学医学部が発表した研究では、紫外線を定期的に浴び続けていると、脳内で神経伝達物質のひとつで、脳内麻薬ともいわれる「エンドルフィン」の分泌がうながされ、薬物中毒と同じ中毒症状に陥るリスクがあることが示唆されている。皮膚がんリスクの危険性を認識しながらも、日焼け中毒になってしまい、繰り返し利用してしまう...とすれば、日焼けサロンが規制対象となるのも、やむを得ないのかもしれない。
日本でも他人ごとではない? では、日本ではどうなのだろうか。日焼けサロン自体は法的に規制があるわけではなく、一部の業界団体が自主規制などは設けている。利用者数の全国的な統計はなく、国民生活センターによると、日焼けサロンでのやけどなど、健康被害が年間約100件程度寄せられているという。
皮膚がんに関しては、日本人をはじめ、有色人種は白色人種に比べて紫外線の影響が少ないことがわかっている。国立がん研究センターの統計でも、皮膚がんの患者数は上位10位に入っていない。罹患率も、年間人口10万人あたり3〜5人と微増しているものの、欧米各国に比べれば少ないほうだ。
とはいえ、だから日焼けはいくらしても問題ないとはならない。近畿大学医学部奈良病院で皮膚科を担当する山田秀和教授は、「日本人でも、紫外線を浴びる量と皮膚がんの発生は関係しているという研究発表があります」と話す。仮にがんにならなくても、日焼けのしすぎは、シワやシミ、くすみの原因になるだけでなく、免疫機能の低下や疲労にもつながると考えられているという。
そのほかにも、目にも注意が必要だ。日本人に多い「皮質白内障」という白内障は、紫外線が危険因子とされている。日本皮膚科学会では、こうした紫外線リスクを踏まえ、「見かけだけのために日焼けサロンを利用することは推奨できない」としている
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