2016年03月16日
最近よく見かける「熟成肉」とは?
レストランのメニューに「熟成肉」という言葉を最近よくみかけませんか?
有名なファミリーレストランチェーンや牛丼チェーン店でも使用する牛肉を熟成肉にシフトしていると聞きます。
「熟成」と「腐敗」は何が違うのでしょうか?
アメリカでは昔から有名なステーキハウスでドライエイジドビーフ(乾燥熟成肉)を使っていることや、店内に自前の乾燥熟成庫を持っていることを売りにする店が多く、熟成肉はアメリカから日本へやってきたと思われる方も多いかもしれません。
が、日本で元々肉店では大きな牛をおろして数日のうちに販売する・・・ということはなく、牛を1頭おろしたら大体数週間~2ヶ月くらいは保存庫で熟成しながら保管し販売していたそうですし、「枝枯らし」といって風をあてずに熟成していく方法は昔からあったのだそうです。
精肉を保存する熟成庫は温度1~4度。湿度60~80パーセントに保たれています。
良い熟成のためには、肉の中の水分が邪魔なので、扇風機で風を当て乾燥気味にさせながら、良い熟成を促す熟成菌のいる専門の熟成庫で熟成していかなければなりません。
熟成肉は何故美味しい?
赤身の肉には水分「自由水」が含まれます。風をあて、この自由水を飛ばしながら熟成させると蛋白質やミネラルが凝縮。また熟成菌が生みだす酵素が蛋白質を分解し、旨味の元となる「アミノ酸」へ変え、肉質を柔らかくしていきます。
この乾燥させながらの熟成を「ドライエイジング」方といい、肉にナッツやバターのような風味がでるのが特徴。焼くと口中に香ばしい旨味が広がります。「ウエットエイジング」や「枝枯らし」は風を当てずに熟成しますので、ドライエイジングとは違う熟成菌が付着。より個性的な香り・・・味噌のような風味がでるそう。
熟成に向く肉は?
鶏肉は鮮度が大切なので熟成には向かないそう。
自由水が元々少ない肉質では熟成するとぱさぱさになるそうで、豚肉などは乾燥と保水のバランスが難しいと聞きます。
逆に牛肉でも霜降りの高級な和牛は脂が多く、熟成の過程を経なくても柔らかくいただけますし、豊富な脂分は熟成の邪魔になります。チーズでも脂分の多い乳では脂が酸化し、熟成の阻害になる場合があるのですが、それと同じことが肉にも言えるのではないかと思います。
熟成肉は経産牛や、脂身の少ないがんがん運動させた赤身の牛肉が向いています。硬い肉質のものを美味しくいただくための工夫というのも熟成の理由のひとつ。他にはジビエや羊(独特の香りが優しくなる)で熟成が行われています。では、一般家庭の冷蔵庫でも熟成できるのでしょうか?これは危険です。
現在「熟成肉」の定義はとても曖昧で、冷蔵庫で数日放っておいても「熟成」と言えてしまいます。
ファミリーレストランやファストフードでも「熟成」をうたっていますが、元々冷凍して配送されていた肉の冷凍をチルド程度の温度で配送してきて、冷蔵庫で長めに保存してから、焼いて食べるというのは本当の意味での熟成とは違いますし、低い温度で活動できる人体に有害な菌が付着する危険性があります。
熟成はあくまでも、適切で有用な微生物を付着させる環境が必要となります。
例えばチーズでもブルーチーズの工房にはブルーチーズの菌が住み着き他のチーズは製造できませんし、納豆の工房には納豆菌が住み着いて、脈々とその食品や美味しさ、特徴を生み出す菌の環境、菌層ができあがっています。それは安全で人体に有害な菌よりも、有用な菌のほうが勢力が強い環境でなければいけません。
ある熟成肉メーカーは30年かけて、美味しい熟成肉のための熟成庫を作り出したとか。美味しい熟成のためにはシビアな環境つくりが絶対に必要なのです。
家庭の冷蔵庫はいろいろな食材が出たり入ったりして何が住み着いているかわからない状態。
ご家庭では熟成は考えず、買ってきたお肉は賞味期限内にいただくことが正しいお肉の楽しみ方ではないかと言えます。
「肉は腐りかけが美味しい」
通の間でよく言われてきたことですが、熟成肉の表面は赤黒く変色し、カビが生えてはいますが、どろどろと溶けて腐っているわけではありません。この表面の部分はさすがに食べると危険なので、大きく掃除して取り除きます。
良い熟成肉は脂身も肉も濃厚なナッツの風味やシャンパーニュの古酒に感じられるような熟成香、イースト香が感じられます。
機会があれば、赤ワインよりもかなり熟成した格の高いブルゴーニュの白ワインやシャンパーニュの古酒をあわせてみてください。美味しさが何倍にも広がるはずです。
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