2016年03月13日
鯛は「ステルス機能」を持っているってどういうこと?
多くの動物にみられる「保護色」。色や柄を周囲に合わせて身を隠すのが定番なのに、魚には「ハデな色」が多いのはナゼでしょうか?
鯛(たい)のように「真っ赤」な魚は天敵に襲われやすいように思えますが、目立つのは陸上での話。海中には赤い光がほとんど届かないため灰色や黒に見え、ハデな「赤」こそが身を守るための「ステルス機能」になるのです。光を放って自分の影を消す「カウンター・イルミネーション」で身を守る魚など、深海はフシギな生物の宝庫なのです。
■全身真っ赤はステルス仕様?
海の絵を描くと、ほとんどのひとが「青」に塗るでしょう。ところが海水をすくってみると、多少のにごりはあってもほぼ透明で、コップに入れた海水を見て「青い」と感じるひとはいないでしょう。これは「色」によって光の進み方が違うのが原因で、青い光は深くまで届くのに対し、赤い光は吸収されやすいため「青」が目立つのです。浅瀬は青く見えないのも、赤が充分に吸収されないからです。
鯛のような「赤い魚」は、海中ではどのように見えるのでしょうか? 真紅のハデな姿から天敵に襲われやすいイメージですが、これは海上ならではの話で、赤い光がほとんど届かない海中では黒または灰色にしか見えません。ものの色は光の反射によって決まるので、「赤い光」がない場所では鯛でもエビでも赤く見えることはありません。
水深30mほどになると赤い光はほとんど届かなくなり、真っ赤な魚も薄暗い色にしか見えなくなり、水深200mに届く太陽光は海の表面のおよそ10万分の1に減るため、視界もほとんど効かなくなります。われわれの目にはハデな色も、深い海では身を隠すための「ステルス機能」になっているのです。
■自分の影を消すカウンター・イルミネーション
「光」を放って身を守る魚も存在します。からだじゅうに発光器を備えたミツマタヤリウオがその代表例です。
アンコウが光を使ってエサをおびき寄せるのは有名な話で、薄暗い深海ではからだに「発光器」を備えた魚が少なくありません。求愛に使う魚もいるほど深海の「光」は貴重な存在ですが、完全な闇ではないので、泳いでいると太陽光をさまたげるかたちになり、自分よりも深い場所の敵に位置を知らせてしまうことになります。そこでミツマタヤリウオは腹に多くの発光器を備え、自分の「影」を消し、敵に知られずに泳ぐことができるのです。
これは「カウンター・イルミネーション」と呼ばれ、水深1,000mまでの魚に多く、あたかも太陽光が届いているように見せかけて身を守っているのです。ある意味で透明になったようなものですから、現在開発中の光学迷彩(こうがくめいさい)の手本といえるでしょう。
ワニトカゲギス科の一種には、強い光を放って身を守る深海魚もいます。相手が気絶することもあるというので、防御というよりも武器と呼ぶべきですね。人間にはハデに見える色やぼんやりと明るい程度の光も、深海の生物にとっては強い味方になっているのです。
・海が青く見えるのは、赤い光を吸収しやすいから
・鯛のような真っ赤な魚も、水深30mあたりから灰色や黒に見える
・自分の「影」を消すために発光器を備えた深海魚も多い
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