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2020年06月12日

藪の中


『藪の中』とは芥川龍之介によって執筆された小説である。内容は現代風に言うなら、2007年に放映された、マイナーアイドルの一周忌の内容を取り扱った映画、「キサラギ」のような作風をしている。今回紹介するのは『藪の中』であるが、映画の「キサラギ」の方も十分に面白いので視聴をオススメする。
藪の中は、複数の人間が男女の間で起こった殺人事件をそれぞれの観点から話すという内容になっている。しかしAの発言を信じたら、Dの発言に矛盾が生じ、Cの話を疑えばAの話に信憑性がなくなるなど、非常に複雑な構造をしており、大変面白い。
嘘吐き村の住民のように誰かが嘘をついている可能性が無論あり、全員の話を信用できないようであるが、個人的に本人が嘘だと思っていない(思い込み)などの主観的な意見であるため、熟考することにより真相が判明するものだと推測されるが、真相は文字通り「藪の中」である。
中には全員が嘘をついており事件そのものがなかった、複数の事件が入り混じっているなどの考察もある。

【内容】


A(きこり)の主張
毎朝の日課で山中に入り、人気のないところで死体を発見した人物。死体は縹色の水干と烏帽子を被って、仰向けに倒れた状態で胸元を突き刺され死亡していた。
杉の木の根元には荒縄と櫛があり、太刀などの凶器はなかった。落ち葉が相当乱れていたことから、殺される前の男性は相当な抵抗をしていただろうと主張している。
ちなみに現場は馬一匹通ることができないほど狭く、もしも馬が通れるならば藪一つ隔てた向こう側の道しかない。


B(旅法師)の主張
昨日の昼時、山付近で殺される前の男性(烏帽子に水干姿)と出会っていた人。烏帽子と水干姿の男(多襄丸)は徒歩で、女の方は馬に乗っており、関山の方面に向かっていた。女の顔は服装で窺えなかったが、萩色の布の色だけが確認できた。男は太刀を佩刀し、黒塗りの弓を携えていた。
Aの主張を信じるなら、山の根元に縛り付けられ殺されたのは多襄丸になるが、犯人を捕らえたCの主張に著しい矛盾が生じる。


C(多襄丸を捕らえた人)の主張
昨晩の19〜20時頃に、粟田口の石橋で落馬した多襄丸を捕らえた。この人物は多襄丸を一度捕縛することに失敗した過去があり、その時の格好も紺色の水干に、太刀と弓を所持していた。
黒塗りの弓矢が幾本もあったことから、男を殺したのは多襄丸に違いないと主張。過去、洛中洛外において女子供の殺人を繰り返しており、女好きだと供述している。
殺された男から攫った女は多襄丸と一緒に乗っていたと、Bの主張を裏付けているが、Bが多襄丸と出会ったのは昼時であり、Cが夜間(19〜20時)に犯人を捕まえた時刻に大きな解離性がある。たとえ落馬してケガをしたとしても程度にもよるが、5時間以上の時間があるなら徒歩で逃亡することが十分可能であり、石橋で捕縛に成功したことに疑問が生じる。
ちなみに馬は石橋付近の草むらで草を食んでおり、女性の姿はなかったと言う。


D(姥)の主張
多襄丸に婿が殺されたと主張する供述。婿は武家の家系でありながらも、優しく恨みを抱かれるような性格ではなく、娘は男勝りであるものの婿以外には興味がなかった。顔は瓜実顔で浅黒く、左の目に泣き黒子がある。
嫁婿は昨日一緒に若狭へ行くことになったのだが、何の因果が多襄丸に攫われた娘の行方を捜してほしいと願っている。


E(多襄丸)の主張
姥の娘と婿に昼過ぎに出会ったと主張。
女の垂れ絹が捲れあがり、一瞬ではあるものの菩薩のような顔をしていた。その瞬間、多襄丸は女に惚れたのか婿を殺してでも手に入れようと決心する。
持ち前の太刀で殺そうとするも、別に女を手に入れるためならば攫えば良いだけで殺す「必要はない」と思い返しながら、山の藪の中に宝があると甘言を以て誘い込むことに成功した。
婿が夢中になって宝を探している最中、女は馬から降りることなく静観していた。
宝探しに夢中になるあまり女の元から離れていく婿を杉の根に縛り、騒がれないように口の中に落ち葉を入れられた。縄は多襄丸の私物。
婿を捕縛した多襄丸は女を「急病」だからと呼びよせるが、婿の異常な様子に気が付いた女は小刀を持ち、多襄丸に襲い掛かった。これほど気性の激しい女は知らないと言う中、太刀を抜くことなく女の小刀を落として、女を我が物にすることに成功した。
しかし女はいきなり泣き出し、多襄丸が死ぬか婿が死ぬか選べと泣き叫び、生き残った方と一緒になると言う。この言葉がキッカケで、多襄丸に女の婿に対して殺意が甦る。
しかし、卑怯なことは出来ないと多襄丸は思い、婿を縛っていた縄を解き決闘を行うことになるも、多襄丸は婿の胸を太刀で一刺しする形で勝利した。
しかし女の姿は山中にはなく、助けを呼びに行ったと思った多襄丸は太刀と弓矢を奪い、山道に出ると馬が草を食んでいた。
多襄丸は都に入る前には太刀を手放しており、手ぶらの状態。

男の殺人犯の主張を信じるならば、Dの話(気性の荒い娘と武家の婿)に矛盾点はないが、娘の容姿は色黒で泣き黒子があり、菩薩のような表情とは少々矛盾が生じる。多襄丸が惚れた色目でそう見えただけかもしれないが……。

また、馬は山道の中におり多襄丸が乗馬して都へ行ったとしても、

「山の中には馬は入れないほど狭い」とA
「太刀を持った男と女は一緒に馬に乗っていた」とB
「19〜20時頃に石橋で捕まえ付近で馬を目撃した」C
「小刀で殺した/自害した」F・D

などに決定的な矛盾が生じる。
その他にも弓があったなど細々とした相違点がある。


F(懺悔する女)の主張
紺色の水干を着た男は自分を手籠めにして、夫を嘲笑っていたと主張。
夫の傍に駆け寄ろうとしたものの、蔑んだ目で見ており、意思を読み取った女はその場で気絶してしまった。意識を取り戻した時には水干の男はおらず、夫が木の根元に縛られているだけ。
自害しようにも水干の男に夫の太刀が奪われ弓矢もなく、足元にあった小刀で夫を殺し、後追い自殺をすると述べるも、口一杯にある落ち葉で声を聞き取ることは出来なかったが、冷徹な態度と目線で「殺せ」と言っていると解釈し、縹色の水干の胸に小刀で刺し殺して、気を失ってしまう。
次に意識を取り戻した時刻は、夕暮れ時の日差しが落ちており、女は夫を縛っていた縄を解く。夫に宣言した通り、色々な方法で自害しようにも実行できることはなかった。

Fの主張を信用するなら、Aの言葉が半分ほど正しかったことになる。B・Cの主張に時間帯なども合わさって多少信憑性が出てくる。
Dの主張は一途さが垣間見える描写があるものの、男勝りな女性ではなくなっているので灰色。


D(夫の死霊)の主張
木の根元に身体が縛られたまま、妻を盗人の手により慰み者にされていたと主張。
口が効けない状態ながらも、目配せで「男の言葉を間に受けるな」と懸命に訴えていた。女はその内に盗人の話に耳を傾けるようになり、「自分の妻にならないか」と話を持ち掛ける。
女はうっとりとした顔でもたげ、その様子が夫から見ればこれほど美しいものはないと思いながらも、盗人に返事を出したのか分からない。しかも妻は「どこにでも連れていってくれ」という始末である。
盗人と妻に置き去りにされる中、女は夫を指さし、「殺してほしい」と盗人に願うも、物騒な頼みにさすがの盗人も顔色を失った。しかし何度も夫を殺せと言う女を蹴り倒して、縛られた男の方へと向かい、「女を殺すかどうか」を訪ねるのであった。この時、夫は盗人を許すほどの余裕が生まれた。
しかし女は殺される危機を察知したのか、藪の奥へ逃げだした。
盗人は太刀と弓を手に取り、男を縛っていた縄を斬り、藪の外に出る。
自由の身になった男は妻の小刀を手にして、胸を一刺しして自害した。

Dの主張を信用するなら、A・B・Cの話に多少の信憑性が出てくる。
しかし肝心の、加害者であるE(多襄丸)と、F(妻)の主張に著しい矛盾が生じることになる。しかも、D側の主張によれば、夫以外に興味のない女性であり、こちらも不可解。

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