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2021年12月14日

人間椅子(江戸川乱歩)



人間椅子とは江戸川乱歩による短編小説。
その内容は読後感を何ともいえないモノにさせる作品である。


【内容】



佳子は、毎朝、夫の登庁を見送って了うと、それはいつも十字を過ぎるのだが、やっと自分のからだになって、洋館の方の、夫と共用の書斎へ、とじ籠るのが例になっていた。

(中略)


美しい閨秀作家としての彼女は、此の頃では、外務省書記官であり夫君の影を薄く思わせる程も、有名になっていた。彼女の所へは、毎日の様に未知の崇拝者達からの手紙が、幾通となくやってきた。

(中略)


簡単なものから先にして、二通の封書と、一枚のはがきをみて了うと、あとにはかさ高い原稿らしい一通が残った。別段通知の手紙は貰っていないけれど、そうして、突然原稿を送って来る例は、これまでにしても、よくあることだった。それは、多くの場合、長々しく退屈極まる代物であったけれど、彼女は兎も角も、表題だけ見て置こうと、封を切って、中の紙束を取出して見た。
それは、思った通り、原稿用紙を綴じたものであった。が、どうしたことか、表題も署名もなく、突然「奥様」という、呼びかけの言葉で始まっているのだった。

(中略)


奥様、
奥様の方では、少しも御存じのない男から、突然、此様な不躾な御手紙を、差上げます罪を、幾重にもお許し下さいませ。
こんなことを申上げますと、奥様は、さぞかしびっくりなさる事で御座いましょうが、私は今、あなたの前に、私の犯して来ました、世にも不思議な罪悪を、告白しようとしているのでございます。



との冒頭から始まる。
その名づけのない原稿の内容は、二重の意味で背筋の凍る内容が書かれていたのであった。


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