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2021年11月12日

こゝろ(夏目漱石) 2


鎌倉からある程度懇意になった「私」と「先生」であり、家に来ても良いのかとの約束で先生としては来ても来なくてもどっちでも良かったのか、「いらっしゃいの」二つ返事で承諾を得ている。


「私」が来訪するうちに気がつくのだが、先生は月に一度、家を空け雑司ヶ谷の墓地に妻さえも共にすることなく、訪れている。
「私」が墓所参りの「先生」の元に訪れた際は「どうして……」と狼狽するような態度を見せて、妻が明かしたのかどうかを非常に気にかけていた。「私」が単純にここにいることを知ってここに来たと教えた時、非常な安堵感を見せているのは、決して気の所為などではないだろう。


先生の狼狽はすぐさま終わり、別の日一緒になりたがる「私」と様々な場所を散策する中で、「私」は若い恋人を目撃することになるのだが、その仲睦まじい様子に苦笑を覚えることになる。

「先生」としては何か言いたいことがあったのか、苦々しい苦言を呈している。


「君は今あの男と女を見て、冷評しましたね。あの冷評のうちには君が恋を求めながら相手を得られないという不快の声が混じっていましょう」
(中略)

「恋の満足を味わっている人はもっと暖かい声を出すものです。しかし……しかし君、恋は罪悪ですよ。解っていますか」



と一見、矛盾するような言葉を放っている。
そして、


「恋は罪悪ですか」と私がその時突然聞いた。
「罪悪です。たしかに」と答えた時の先生の語気は前と同じように強かった。
「なぜですか」
「なぜだか今に解ります。今にじゃない、もう解っているはずです。あなたの心はとっくの昔からすでに恋で動いているじゃありませんか」
 私は一応自分の胸の中を調べてみた。けれどもそこは案外に空虚であった。思い当たるようなものは何にもなかった。
「私の胸の中にこれという目的物は一つもありません。私は先生に何も隠してはいないつもりです」
「目的物がないから動くのです。あれば落ち付けるだろうと思って動きたくなるのです」
「今それほど動いちゃいません」
「あなたは物足りない結果私の所に動いて来たじゃありませんか」
「そうかもしれません。しかしそれは恋とは違います」

「恋に上る階段なのです。異性と向き合う順序として、まず同性の私の所へ動いて来たのです」
「私には二つのものが全く性質を異にしているように思われます」
「いや同じです。私は男としてどうしてもあなたに満足を与えられない人間なのです。それから、ある特別な事情があって、なおさらあなたに満足を与えられないでいるのです。私は実際お気の毒に思っています。あなたが私からよそへ動いて行っていくのは仕方が無い。私はむしろそれを希望しているのです」



といった、ワケの分からない二人の押し問答がはじまる。


漱石のこゝろを最後まで読んでこの文章を読み返すと冒頭からにおわせBLかと思っていた内容が、全く別物に見える。
解釈するところ先生がまだ若い「私」に伝えたかったことは、幼少期の初恋の次に始まる本格的な恋のことである。

更にかみ砕いて言うならば、「先生に対して幼稚園児が好意と恋愛感情の区別がつかない状態から脱却」するための階段として先生が選ばれたと述べているだけであるが、まだ何も解っていない私からすれば、もったいぶるような態度をとられただけでしかない。
というか先生がかなり勿体ぶる。
明治時代のその当時、男女における交際というものは現代からみればかなり奥手で、すれ違った相手の袖の中に人知れず恋文を入れて認める…などといった思いを伝える方法があり、今ほど迂遠したものであった。
上記の袖の中の恋文は場合によっては失礼な方法であるものの、見合い結婚が主で、自由恋愛(それこそ路傍で通り過ぎた男女と恋仲になるなど)難しいものである。

それゆえ、結婚してから恋といったものになりがちで、「私」の身分は大学生でありながらも、今の小学生でさえも知っていそうな恋を知らなかった可能性が高い。


なお、話の締まりとして「恋は罪悪だが神聖なもの」であると述べられ、寂しさを「私」は覚えることになる。


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